ARTICLEワイン記事和訳

ワイン詐欺師の手口  12 May 2014

001.jpgワイン業界の人間なら誰しも、偽ワインが世の中から消えてほしいと心から願っているに違いない。この話題が出ると、オーベール・ド・ヴィレーヌ(Aubert de Villaine)のことを考えずにはいられない。彼は世界的に有名なドメーヌ・ド・ロマネ・コンティ(DRC)と、ブーズロンにある彼自身のワイナリーでワイン生産を監督することに多くの時間を費やしたいと考えているにも関わらず、その多くの時間を世界中で高額で提供された疑わしいDRCのワインについてのコメントに費やしたり、イタリアに拠点を置く偽造グループの長期間にわたる捜査に協力したりしなくてはならないのである。先週はブルゴーニュの地方紙が、ミラノ在住のロシア人でDRCの偽造に関わったとされる人物をムルソーのホテルで逮捕したと報告(フランス語)している。

先月にはロンドンのアンティーク・ワイン・カンパニー(AWC)がアトランタの収集家に偽の18、19世紀のボルドーを販売したとして告訴されている。それ以来、AWCのステファン・ウィリアムス(Stephen Williams)は対応に追われている

一方、悪名高きワイン偽造者であり、ニューヨークで拘留されながら判決を待っているルディ・クルニアワン(Rudy Kurniawan)は起訴された際、弁護士を通じて情状酌量を求めている。なぜなら偽ワインを作っているのは彼だけではなく、特別なことではないし、何より彼は非常に裕福な人たちだけからほんの少しかすめ取っただけなのだから、というのが理由だそうだ。

そしてさらに先週金曜日、数か月にわたる取材の末、デンマーク人ジャーナリスたちがついにデンマークのガストロマガジンに 13ページの報告書 を掲載した。これは彼らの同胞であるレネ・デーン(René Dehn)に関する報告で、彼は超高級ワイン社交界、ホワイトクラブのメンバーにオールド・ヴィンテージの瓶にワインを再充填したものを提供した疑惑があるとされている。よくあることだが、大金持ちのワイン愛好家がだまされたとあって、一般の読者からの反応は非常に大きかった。

私自身にもデーンが近づいてきたことがあって、同僚のジョン・スティンフィグ(John Stimpfig)とニール・マーティン(Neal Martin)と共に騙されそうになった経験がある。デーンは2009年9月、コペンハーゲンで開いた彼にとって初めての大がかりなイベントと思われる、正装のパーティに私を招待した。 希少なワインリストに惹かれたのと、デーンが、私が尊敬するファインマガジンのフィンランド人編集者であるペッカ・ヌッキ(Pekka Nuikki)と知り合いだとほのめかしたので(この件については下記参照)、そのイベントに参加し、当ページでもその様子を紹介した。その夜私たちについたソムリエはスカンジナビアで大変有名なクリスチャン・アーレ・モーテンセン(Christian Aarø Mortensen)で、私はすべての、少なくともほとんどのワインについて本物であると確信していた。そのときはそれでよかった。

ペッカと私はテイスティングの翌朝、デーンが当時のパートナーとワイン担当の女性(wine hostess)と共に住んでいるモダンなマンションでのブランチに招待された。私は当時、彼らがどう見てもワインに詳しいとは感じられなかったのを記憶しているが、あまり考えないようにしていた・・・次に彼らが私とペッカをベルリンでの似たようなイベントに招待するまでは。その時までに彼らはスイスに移り住んでいた(最近はデーンは別の人物と共に南アフリカに移ってワインクラブを設立し、今のところ成功しているようである)。

ベルンではより国際色豊かなゲストが招かれていたが、アッカーメラル社で数多くのルディの偽ワインを販売する羽目になった(ややくたびれてはいたが)ジョン・ケイポン(John Kapon)の同席ですら、私の自信を裏付けてはくれなかった。この時―虫の知らせだったのかもしれないが―私は自分のテイスティングノートを保存するのに失敗し、デーンのものに頼らざるを得なかった(もちろん、そう明記して公開している)。最もレアなワインはディナーの前にデーンの宿泊するホテルのスイートルームで提供されたが、非常に古いボトルは目を引いたものの、ワインは別室で注がれたものだった。私はこの時点で、このイベントでのすべてのワインが本物であるとは考えられなくなっており、非常に怪しいと感じていたが、デーンがスカンジナビアの非常に優れたワイン専門誌、ファイン誌の出資者の1人であると聞き、考え直した。

ところが、である。ベッカ・ヌッキはデーンは現在もこれまでも一度もファイン誌の出資者であったことがないと知らせてくれたのだ。ヌッキはさらに続けた。「レネ・デーンと彼のパートナーは2009年から2010年まではファイン誌クラブの会員だった。しかし不幸なことに、彼らはこの会員権を利用して彼らがファイン誌の関係者であるかのように見せていると聞いたんだ。だから私は彼らにそのようなことはやめるよう警告を送った。彼とは彼の主催する試飲会で2回会っただけで、それはジャンシスが招待されたものとまったく同じものだよ。私は最初の2009年のイベントのワインは全て本物だったと思っているが、2回目のベルンの会はほとんどのものが良い状態とは言えず、ジャンシスにもワインの信ぴょう性に深刻な疑いがあると告げてお互いにこの件についてはコメントしないよう話したんだ。あの2010年のベルンのイベントがレネ・デーンと私があった最後だよ。ああ、今の彼の名前はレネ・トムセン(Thomsen)だけどね。」

3度目であり最後に私がデーンに会ったのは香港のワイン志向の高いレストランで偶然、本当に偶然だった。それはまさにパンチョの最後の抵抗(訳注)とも呼べるイベントで、そのために高額のチケットを購入した人たちと高級ワインのブローカーとが入り混じる状態だった。デーンはこの時点で私のことをひどく間抜けだと考えていたに違いない。なぜならそのワインは全てあるべき姿でないのは一目瞭然だったからである。非常に不愉快だった。私は対決を避けてその場を去り、翌朝お礼のメールだけを送信し(ディナーのチケット代は彼がもってくれたので)、デーンのコメント、彼のイベントに関するものはこのサイトからすべて削除し、二度と関わらないことを決めた。
興味深いことに、翌日のパンチョ・カンポのイベントで見知らぬ男性が私を呼び止め、前夜デーンが提供したワインの信ぴょう性について尋ねてきた。彼が誰だったのかいまだに不明だが、ファイン誌に関係のある人物だったのではという印象がある。

(偶然にも、私は3月の香港での滞在中非常に優秀なソムリエと長い時間過ごしたが、彼は高価なボトルを開けたときはわざとラベルにサインをして瓶が再利用されるのを防ぐと述べていた。)
ボルドーの主要な人物たち同様ハーディ・ローデンストック(Hardy Rodenstock)に騙されそうになった人間として、彼らが偽のワインを提供するまでにどうやって信用を獲得するのか、その手口は容易に想像がつく。おそらくこれが一般的な手順なのだろうから、最近は私自身非常に慎重になっている。哀しいことだ。

原文

訳注:パンチョ・カンポはイベントオーガナイザーであり元MW。贈収賄疑惑のため2012年にMWを返上した。