ARTICLEワイン記事和訳

立ち上がれ、ヴァン・ド・フランス 6 Sep 2014

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この記事のショート・バーションはフィナンシャルタイムズにも掲載されている。ここで紹介するワインについては我々の10万件以上を誇るテイスティング・データベースを参照してほしい。特に最近の記事、「Languedoc assortment 2014」も役に立つだろう。

皆さんはワインのラベルに記された小さな文字を読んだことがあるだろうか?もしあれば、世界の3分の2のワインを生産するヨーロッパのワインのラベル表記で今まさに進行中の革命に戸惑っているのではないだろうか。

例えば、コスト・パフォーマンスが最も良いフランスワインはこれまでヴァン・ド・ペイと呼ばれてきた。親しみを感じられる、「地ワイン」という意味の言葉である。しかしEUはニューワールドのワインに対する競争力をつけるため、ワイン市場の骨組みの大改革が必要だと判断した(「Will Europe's labels change?」参照)。ブリュッセルで提案されたワインの法制改革の一つは、ヴァン・ド・ペイという表記を基本的には全てIndication Géographique Protegée あるいはIGPという表記に変更するというものである。なんとも魅力に欠ける味気ない言葉である。


昔はヨーロッパのワインは3つのカテゴリーに分類されていた。最も重要な一番上の引き出しには、フランスではアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(AOC)、イタリアではDOCまたはDOCGと呼ばれるものが収まっていた。少し小さい真ん中の引き出しにはフランスのヴァン・ド・ペイやスペインのヴィーノ・デ・ラ・ティエラなどのカテゴリーが収まる。そして残りのカテゴリーは一番下のテーブルワインという名の引き出しに収められ、様々な呼び名で知られている。すなわちヴァン・ド・ターブル(フランス)、ヴィーノ・ダ・タボラ(イタリア)、ヴィーノ・デ・メサ(スペイン)、ターフェルヴァイン(ドイツ)などである。

しかし、これらの引き出しのラベルが張り替えられたのだ。一番上の引き出しに入っているものは全てPDO、原産地呼称保護と呼ばれることになった。EUに所属する国がこの新しい名前を使うかは任意とされ、多くの国は彼らがもともと使っていた古い表記、たとえばアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(これは現在ではAOCの代わりにアペラシオン・ドリジーヌ・プロテジーあるいはAOPと呼ばれることもある)、DOC、あるいはDOCGなどを使うことを選択している。しかし、今後の原産地呼称はブリュッセルの承認が必要になるという新しい決定に各国は恐れをなし、特にイタリアは2011年の締め切りまでに狂ったようにDOCG、すなわち彼らの一番上の引き出しに入れる名称を大量に作り出した(Cは保護を意味し、Gは保護だけでなく、保証されていることを示す)。スペインとポルトガルの状況は地元に精通する人物によると「日和見的」だそうだ。

真ん中の引き出しは現在はPGI(地理的表示保護)、すなわち上述のフランスでのIGPとなった。イタリアではこのカテゴリーのワインを長くIGTと呼んでおり、今後もそうするようだ。一方スペインではこれまた気の向くまま、ヴィーノ・デラ・ティエラを使い続ける地域もあればIGPを名乗る地域もある。

一番下の引き出しは現在ヨーロッパのワイン生産量のごく一部しか占めていないが、私はこれが今後徐々に重要さを増してくるのではないかとにらんでいる。新しいEUの法律ではこの最も低いレベルに所属するワインはシンプルに「ワイン」に相当するその国の言葉を表記するとされている。つまりヴァン、ヴィーノ、ヴィーニョ、ヴァインなどである(おそらく多くのワイン好きは、上述のイニシャルの羅列に比べてありがたいほどシンプルであることに驚くだろう)。しかし、フランスではヴァン・ド・フランスのほうがただの「ヴァン」より適当だと判断している。昔、テーブルワインあるいはそれに相当する語句がラベルに書かれていた頃、これらのワインにヴィンテージやカベルネやピノ・グリージョなどの品種名を表記することは許されていなかった。しかし、今はこれらワインの販売性向上のため、ワイン生産者たちは一番下の引き出しのワインにもブドウの名前とヴィンテージを表記することを許されている。

このことは改革後のこのカテゴリーを消費者、そして生産者にとって格段に面白いものにする。私はこれまで数百にも上るヴァン・ド・フランスをテイスティングしてきた。中には工業的な巨大企業による、テイスティング・ノートを作る気にもならないような製品もあるが、それ以外は実に興味深い、生産者の熱意が反映されたワインである。その例としてル・ルトー・ブラン(Le Retout Blanc)2012を挙げよう。これはオー・メドックのシャトー・デュ・ルトー(Ch du Retout)のオーナーが作るワインで、蜜蝋の香りのするフランスで最も自己主張の強い白ブドウ品種であるマンサン、モンデュース・ブラン、そしてサヴァニャンのブレンドで、どの品種もボルドーでは認められていない。そのため、ワインはただのヴァン・ド・フランスとして(直接)販売しなくてはならないのである。

あるいは、ミネルボワ・ラ・リヴィニエールのドメーヌ・ルスタル・ブランの美味しい赤と白はどうだろう。赤はチェリーの香りのするサンソー主体のブレンドで、白はブルゴーニュのグラン・クリュを思わせる骨格だが、非常に収量の少ないグルナッシュ・グリ主体で作られている。このどちらのブレンドもAOC、あるいはIGPですら認められておらず、そのためヴァン・ド・フランスとして売られている。

また、いわゆる自然派と呼ばれるワイン生産者たち、とくにロワール・ヴァレーでは、生産者自ら、ヴァン・ド・フランスとして販売する選択をすることが増えている。これは、彼らが自分のワインがあまりにも型破りなためにAOCの権力が及ぶテイスティング審査を通過しないとわかっているからということもあるが、小規模な生産者は経済的な理由からヴァン・ド・フランスを選択することもある。

ラングドックとルーションの境界にあるドメーヌ・ジョーンズのケイティ・ジョーンズ(写真:前年、この気の毒なレスター出身の女性はカーヴ荒らしの被害にあった)は電卓をたたいた。彼女の作る、古樹から作る赤と白のワインの中にはAOCフィトゥ、AOCラングドック、AOCコルビエール、IGPペイ・ドックをそれぞれ名乗れるものがあり、もちろんそのすべてはヴァン・ド・フランスも名乗ることができる。それぞれの「引き出し」は異なる組織の管轄で、それぞれ莫大な負担金を要求される。そのため、一つにまとめてしまった方が効率的である。ヴァン・ド・フランスは最も規則が自由で、特に彼女の作る美味しい、100%グルナッシュ・グリ、カリニャン・グリ、カリニャン・ノワール(どれもAOCおよびIGPでは規定外の品種である)で作ったワインが認められるかもしれない。さらに「負担金は500hlまで100ユーロで済むの。例えばAOCフィトゥに申請すると同じ量で優に1300ユーロは超えてしまうわ。アペラシオンの地位を得ようとしたら第三者機関による監査を受け、正しいブドウ品種を正しく育てているかの調査のため更に250ユーロかかるの。それにヴァン・ド・フランスなら、IGPコート・カタランみたいに瓶詰め前と販売前の官能試験の結果を待つ必要がないわ。AOCフィトゥだと瓶詰後にブレンドごとの抜き取りサンプルを提出しなくてはならないの。シンプル・イズ・ベストよ!」彼女のワインはザ・ワイン・ソサイエティ(The Wine Society)、ネイキッド・ワインズ(Naked Wines)、マジェスティック(Majestic)、ウェブサイト(www.domainejones.com)で購入可能である。

ヴァン・ド・フランスの欠点は、消費者がそのワインが実際にどこで生産されたものかを知るためには予備知識を持っているか、ある程度調査をする必要があることである。生産者は住所をバック・ラベルに記載することはできるが、もしその住所に呼称保護された名称(昔で言うアペラシオン)が含まれていた場合、その文字はとても小さくしなくてはならない。

私はすでに洗練されたレストランのワインリストに掲載されているヴァン・ド・フランスが増えてきているのを目にしている。もちろん、とくにフランスでは、である。しかし、ワイン担当者がヴァン・ド・フランスを同じ地域で作られた他の(訳注:呼称付き)ワインと一緒にリストに載せることができたとしても、リスト上ではそれらは呼称付ワインと別の、名もない一角に載せなくてはならないのである。

お気に入りのヴァン・ド・フランス



Maris, Brama Grenache Gris 2011 £40 Armit

Le Retout Blanc 2012 £181/1ダース倉庫渡しFine & Rare

Les Perles de Jones Macabeu 2013  £99/6本 www.domainejones.com

Jones, Grenache Gris 2013 £14.95 The Wine Society (2014年からヴァン・ド・フランスに)

L'Oustal Blanc, Naïck Grenache Gris 2011  £14.29 Noel Young Wines



Les Terrasses de Gabrielle, Wonderland Cabernet Franc 2013
€7前後 Vins Etonnants in Limousin, France, and Vins Lacroix in Liège, Belgium

Abbotts & Delaunay, Alto Stratus Carignan 2010
£16.99 Averys of Bristol and Telegraph Wine Club (現在品切れ)

Mas Coutelou, 5SO Cinsault 2013 (the name is a pun on 'cinq-so') £12.95 Roberson

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