ARTICLEワイン記事和訳

ワインメーカーたちの転換 4 Oct 2014

044.JPGこの記事はフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

私のワインライフは短いものだが、その中で最近私は思慮深いワイン生産者たちが大きな転換期を迎え、その数が着実に増えていることに気づいた。興味深いことに、この現象はマーケティングとは全く関係なく、自分たちが過去に作ったワインに対する離反ともいえるものである。

アルベルト・アントニーニ(Alberto Antonini;写真)を例に挙げてみよう。彼は尊敬を集める55歳のコンサルタント・ワインメーカーでボルドーとカリフォルニアのデイヴィスで専門の資格を取得している。彼はこれまでにカリフォルニア、アルゼンチン、チリ、スペイン、南アフリカ、カナダ、ルーマニア、アルメニア、ウルグアイ、オーストラリア、地元であるイタリアでワインを作ってきた。彼が言うには「僕が20年前に言っていたことを思い出すと、まるで別の星のことみたいに感じる。」のだそうだ。ワイン作りに関する最新の技術の進歩を活用する教育を受けきた彼が、自身の考え、例えばブドウの適切な成熟レベルに関する考えを完全に訂正したのだ。「ブドウが過熟してしまうと、その土地の特徴を覆い隠してしまうんだ。これは過抽出と同じことだよ(ブドウを長時間醸しすぎると強いタンニンで果実味がかき消されてしまう)。 同様に人為的なものを使うと、「自然」な表現が妨げられてしまう。これまで使用が推奨されてきた培養酵母や酵素、添加物なんかがあるけど、僕は少しずつ、それらを使わない方向に転換しているんだ。」彼は特に共同所有者でもあるアルゼンチンのアルトス・ラス・オルミガス(Altos Las Hormigas)での事例について語り、土壌の専門家であるペドロ・パラ(Pedro Parra)に導かれた教えの信奉者でチャカナ(Chakana)のセバスチャン・ズッカルディ(Sebastian Zuccardi)とガブリエル・ブロイス(Gabriel Bloise)同席の下、自身のワインを提供しながらその考えを明らかにした。彼らは皆、アンデスの標高の高いウコ・ヴァレー(Uco Valley)の様々な区画から作られたワインがどれほど違う性質になり得るか、生き生きと真摯に取り組んでいる。

「僕はニューワールドにはテロワールなんてないって聞かされて育ったんだ」アントニーニは笑う。「でもテロワールはどこにでもあると知って驚いたよ。アルタミラ(Altamira)のたった5ヘクタール(12エーカー)の中でさえ、土壌によってワインの価値は5ドルから200ドルまで変わるんだ。我々はその土地の純粋な香りを引き出したいと強く願っているし、自分たちのワインにテロワールを反映させたいと思っている。」ズッカルディ、ブロワゼ、パッラは彼の横で興奮した犬の首振り人形のように頷いていた。彼らは今、アルゼンチンのワイン州、メンドーサで信頼できる詳細なアペラシオンシステムを作り出している、その名もアルゼンチン・ワイン・カンパニーのローラ・カテナ(Laura Catena)が牽引するプロジェクトで仕事に没頭している。

同様の訂正コメントは世界のあらゆるワインメーキングの現場から聞こえてくる。イーベン・サディ(Eben Sadie)は自分の道をたった一人で切り開き1999年にサディ・ファミリー・ワインズを設立して以来、南アフリカで次世代ワインメーカーのリーダーとみなされている人物である。私たちが今年の早い時期に顔を合わせたのは、彼がロンドン中をパーティ三昧していた時期だったが、彼は10年前に自分が作っていたワインの間違いを認めたくて仕方ない様子だった。「僕の作った2004年はリリース当時よりはるかによくなっているんだ。正直なところ、あれが若いうちになんで売れたのかわからないよ。若いうちは固すぎたし、ちょっと時間がたったら固く閉じてしまったから。今の南アフリカのワインはフレッシュさが際立って、すごくいいんだ。以前のワインは過熟だった。でもね、もし2004年にそう言われていたら僕は反論していたかもしれない。南アフリカでは今、こういう考えが主流なんだ。みんなフレッシュさと酸を追求している。2000年代初頭とは対照的にね。当時は100点満点でどれほど高得点を得られるかばかり気にしていたから。ほんと、若かったよ。」

そして、主張を変え始めたのは若い世代だけではない。先週私は最新のリリースであるモス・ウッド(Moss Wood)をテイスティングした。西オーストラリア州マーガレット・リヴァーで1970年代にキースとクレアのマグフォード(Keith and Clare Mugford)夫妻が設立に関わり、1984年からは彼らが経営しているワイナリーである。彼らもまた、その名高い白ワインの作り方の大改革を自ら行った。彼らはこれまでその地域の特徴的なブレンドであるセミヨンとソーヴィニヨン・ブランをオークを使って作っていた。キース・マグフォードによると、有名なボルドーの白、ドメーヌ・ド・シュバリエのスタイルを参考にしたのだそうだ。しかし、今ではワインにオークは感じられない。同様にシャルドネでも、以前は最高のブルゴーニュの手法を真似しようと考え澱をひたすら撹拌していた。しかし、彼らが著名な審査員たちにシャルドネの全ヴィンテージを試飲してもらい、どれがクラッシックなモス・ウッドかと尋ねた時、「全員が偉大な年のワインが突出していると答えたんだ。ワインの作り方とは全く関係なしにね。ワインメーキングの技術で弄り回せば弄り回すほど、畑の個性がどんどん消えてしまうんだよ。」キース・マグフォードは述べた。

また、この現象はニューワールドに限ったことでもない。ルーションのジェラール・ゴービー(Gérard Gauby)ほど先見の明のある人物ですら、1990年代後半まで遡り、ワインに見られる成熟感とバランスに対する自身の考えを訂正したのだ。私は最近魅力的な1組のスペインのバレンシア地域で作られたワインに出会ったが、それはセラー・デル・ロウレ(Celler del Roure)によるもので、同緯度にあるイビザより50キロメートルほと内陸にある。オーナーのパブロ・カラタユド(Pablo Calatayud)とまさにその名もずばりのワインメーカー、ハビエル・レヴェルト(Javier Revert;訳注Revertとは英語で「立ち戻る、回帰する」の意)はドラマチックなスタイルで作られた赤白のワインをアメリカへ輸出することで商業的に大成功した。しかし、最近彼らはオークでの熟成が都合のいい骨格をワインに与える一方、フレッシュさ、エレガントさ、そして土地の特徴を奪うことに不満を感じ始めていた。ここ5年で彼らはティニャハス(tinajas)への回帰を試験的に導入している。これは大きな陶器の壺で、この地域でかつてワイン作りに使われていたものである。結果は上々だった。オークの香りに押しつぶされず、個性がたっぷりでなおかつ親しみやすく表現力のあるワインができたのだ。

サディとアントニーニ、この2人の過去の罪は小さな新樽の使用率が高すぎたことと密接に関連していると言える。アントニーニによると、「小さな新樽の使い過ぎはワインの全ての特徴を覆い隠してしまう。」彼は多くのワインメーカーが樽の代わりに好んで使う、ワインの風味に影響を与えず洗浄が楽なステンレスタンクをやめ、コンクリートタンクに切り替え始めている。「この方がより「生きて」いるからね。自然の酵母は「死んだ」ステンレスよりコンクリートを好むんだ。もちろん小さな樽でも赤のボルドーのレシピではすごくうまくいくと思うけど、問題は世界中の誰もがその同じレシピを使い続けてきたことなんだ。」

サディは私にこう言った。「もし私が昔のワインに当時の半分しか新樽を使わなかったらどんなものができたのか、考えずにはいられないのです。」私はこのサイトで以前、世界中のワインメーカーがどれほど新樽の利用をしなくなり、大きなものに切り替えてきたのか書いている。また、20世紀に活躍した樽職人たちの仕事が陶器やコンクリートまで多様化することを願ってやまない。

お気に入り

Moss Wood Chardonnay 2012 Margaret River
インド洋がもたらしたブルゴーニュの白ワインへのエレガントな答え。
£24.95 Jeroboams

Altos Las Hormigas Malbecs 2012 Uco Valley
このヴィンテージのこの生産者のワインは全て素晴らしくアメリカでは20~30ドルで入手可能である。イギリスでは今年遅くには20ポンド程度で販売が開始されるだろう。

Celler del Roure, Parotet 2012 Valencia
土着のマンド(Mando;あるいはマンドンMandón)主体で陶器の壺で熟成されている。
£20 Tivoli Wines

Sadie Family Wines, Columella 2010 Swartland
先駆的な赤ワインで、古木を使い、新しいよりフレッシュな方向性を2008年から追求。
About £48 Uncorked, Swig, Hedonism, Handford Wines

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