ARTICLEワイン記事和訳

ブルゴーニュ2013 - おとぎの国のヴィンテージ? 10 Jan 2015

074.jpg2014年1月12日追記:これはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のかなり長いバージョンである。2013のブルゴーニュを総括しているこの記事も参照してほしい。今週のロンドンはブルゴーニュ・ウィークで、我々は現在すでに700本以上ある2013ブルゴーニュのテイスティング・ノートに記事を追加するため大忙しになること必至である。

私は毎年ブルゴーニュを訪れ、数々の「一等地」で最新ヴィンテージをテイスティングすることを楽しみにしている。これを楽しみと思わない人がいるだろうか?そして、今週ロンドンで開催されるような、イギリスのワイン商が開催する多くのテイスティングには出されない今世界で最も追い求められているドメーヌを選んで訪れるため、そのヴィンテージの質に関してやや上方修正されたイメージをつかむことになると言える。ヴィンテージの質をルソー、ルーミエ、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティなどを元に推測するのは、フレンチ・レストランの全体像を三ツ星レストランのみで評価するようなものだからだ。そのため今週のテイスティングで多くの人に親しまれ、一流とまでは言えないサンプルをテイスティングすることで、より正確な2013のブルゴーニュの状況が把握できるだろう。

しかし、コート・ドールへの旅で私が得た知見はその年の性質を理解するのに十分と言えるかもしれない。私にとってモレ・サン・ドニのドメーヌ・デュジャックでのテイスティングはいつも特別楽しいものである。これはいつもホストをしてくれるジェレミー・セイスがオックスフォード卒で、いろいろな意味で私の母語である英語を話すからだ。作り込まれた外国語のコメントの行間を読み解かなくて済む。ドメーヌものからネゴシアンであるデュジャック・フィス・エ・ペールにわたる大量のテイスティングが終わりに近づいた時、彼は考え深げに並んだグラスを見つめてこう言った。「実は軽い減酸を試してみたいと思っているんだ。」(これは全く合法な手法であり、ワイン中の酸をごく少量の石灰に似た物質で下げることを言う)

翌日私は別の申し分のない生産者、ジャック・フレデリック・ミュニエを尋ねた。趣のあるシャトー・ド・シャンボール・ミュジニーはまるでおとぎ話の家のようで、後ろに控えるごつごつした岩の丘から有機的に生まれ出てきたもののようだ。私はついでに先の2013の減酸に関する会話について触れてみた。ミュニエ(写真上)は微笑んで深い肘掛椅子から立ち上がり、床に置かれたサンプル瓶の入った籠を見せてくれた。そこには彼自身減酸を試した結果が入っていた。

結論として、ミュニエは減酸を行わないことにした。なぜなら多くの場合予想していた結果と正反対ものもが出来上がったからである。減酸したワインは固く痩せた味わいになってしまったのに対し、手を入れなかったものは樽熟成により肉付きがよくチャーミングになる傾向にあったためだ。一方セイスは一銘柄、ニュイサンジョルジュのダモードのみを減酸することにした。これはネゴシアンであるデュジャック・フィス・エ・ペールのために買い取ったもので、極めて重要なpHを3.3から3.5に上げたそうだ。

これらのことから2013のヴィンテージがどのようなものか想像がつくだろう。味わいは豊かと言えるものではなく、フレッシュで味わいが一点に集約されたものである。更に多くのトップ生産者が指摘するように、完熟したブドウを得るには収量をぎりぎりまで低くしなくてはならなかった。生産者がブドウの収量管理を甘くしたり、傷んだり腐ったりしたものの選果を怠ったりした場合には酸が高すぎるワインや、健全な果実味を伴わないワインになってしまう。

長年のブルゴーニュ愛好家なら、2013の最高の物を飲めば1996がまだ若かった頃のフレッシュさと明確に表れたテロワールを思い起こすだろう。全体的には昨年11月に樽からテイスティングした2013を私は好きなのだが、あえて何人かの生産者に1996のように20年後でも透明感のある酸を保持するような年になりうるのかと聞いてみた。「僕の興味はどちらかというと2012が1998や1988みたいになるかどうかにあるね。」とジュヴレイ・シャンベルタンのジャン・マリー・フーリエは若いころ十分な魅力と強さを見せていたワインが瓶熟成によって強さを兼ね備えるワインに変貌をとげたヴィンテージを取り上げた。「2013が1996のようになるかどうかよりもね。ブルゴーニュは1996以来大きく変わってしまったよ。僕にとっては3年目のヴィンテージだったけど、あの当時、今みたいに酸の高いブドウの扱い方を知っていたら、と思わずにはいられないよ。」

彼の隣人であるドニ・バシュレもまた、2012は万事うまくいくと思っているようだ。「2013の酸は1996のとは違う。あれは例年になく冷たい風と干ばつが1か月続いたせいだったから。2013は収穫の直前3週間でようやくブドウが熟した。でも収穫はすごく遅かった(赤は10月までずれ込んだ)からいつもより日が短くて気温も低く、結果として酸が高くてすごくクラッシックな、典型的なブルゴーニュ・スタイルになったんだ。」

今回ほど遅い収穫はここ一、二世代の間見られなかったことで、それは2年連続の最悪の生育期に続いた。「こんなに疲れるヴィンテージは初めてだよ。」シャサーニュ・モンラッシェのピエール・イヴ・コラン・モレは語った。彼のいるコート・ドールの最南端、コート・ド・ボーヌは北部よりさらに状況が悪かった。というのも3年連続で壊滅的な雹に襲われ、多くの生産者が莫大な量の作物を失ったからだ。 ドメーヌ・コシュ・デュリのラファエル・コシュは疲れ切った様子で話した。「雹には降るし、冷夏が5年も続くし。もし2015年もこんなかんじだったら経済的にも気力の面でももう終わりだね。上向きにする材料がないもの。」ヴォルネイのティエリー・グラントネィは特に雹の被害を多く受けた人物で、彼が言うには2012、2013、2014のワインを合せても2009年に作った量とほぼ同じにしかならないそうだ。

セラーにあるワインの量が少なく、世界的なブルゴーニュ需要が衰退の兆しを見せないのであれば、生産者は2013の価格を再度釣り上げる誘惑に駆られるのではないか、と思えなくもないが、私が話した生産者のほとんどは2012の記録的な高値の反動を恐れているようだった。為替動向から2013のポンドでの価格は凝縮した2012の物より下がることがうかがわれる。最初に私に価格を下げるつもりだと話したのは非常に寛容な財政支援を受けているエティエンヌ・ド・モンティーユである。「ブルゴーニュ人は短期的な視野に立ってはいけない。ボルドーの行き詰まりをみればわかることだ。一線を越えてしまったら、失われた名声を取り戻すのには膨大な時間がかかる。」

私はまた、ボルドーの「スパイ」にも会った。フレデリック・アンジェラは1級のシャトー・ラトゥールとヴォーヌ・ロマネのドメーヌ・ドメーヌ・デュージェニー両方の責任者である。彼はフランスの二大ワイン産地の違いに驚きを隠せない。「ボルドーでは、ブルゴーニュの半分ぐらいしか腐ったブドウはなかったが、ブルゴーニュではそれにもかかわらずブドウのフェノリックが本当に成熟していたように思う。」ひどい開花状況と病害の脅威にも関わらずブルゴーニュのピノ・ノワールが記録的な長さの生育期を経て果皮、種子、梗に至るまで完璧な成熟を見せたと指摘したのは彼だけではない。生産者たちは初夏には泥だらけのブドウ畑でうどん粉病と闘い、特に10月の最初の週末に襲った嵐の後には果実の腐敗の脅威にさらされたにも関わらず、である。「通常鋤入れは4回ぐらいするんだけど」ジャン・マリー・フーリエは疲れた様子で続けた。「2013年は10回近くやったんだ。愚かなことだけど、昔使っていた除草剤を代わりに使いたいと思わずにはいられなかった。9月のここらの生産者の空気は普通じゃなかったね。だって8月の終わりまでまったくもって八方塞がりで、誰もどうしたらいいかわからなかったんだから。」

ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティのオベール・ド・ヴィレーヌは非常に正直だった。「実のところ、最初は2013は心配な年だったよ。ブドウを収穫したとき、ワインは薄っぺらくなると思ったんだけど実際は違った。樽熟成の最初の夏を超えて、はるかにフルーティで柔らかくなっている。こんな難しいヴィンテージは天候に恵まれてその影響が強く出過ぎてしまう年より面白いものになることが多いね。」

事実、私がこれまでテイスティングした多くの2013ブルゴーニュは全体的にテロワールの表現が豊かである。アルコールは低く、13%よりも12%に近い。良い畑の物を選べば、真のブルゴーニュ愛好家のためのワインと言える。

来週我々は2013のブルゴーニュに関する数百のテイスティング・ノートを発表する予定だが、来週ロンドンで続々と開催されるテイスティングで気が狂ったように増えるであろうコメントも引き続き追加する予定だ。

2013年に生産者が直面した困難

  • 異常に寒く雨の多い春だったため畑が水浸しになり畑に入ることもままならず、作業が進まなかった。
  • 開花期である6月は雨のせいで結実数が非常に少なく、収量が比較的少なくなった(残った果実は終盤に少しずつ成熟した)。
  • 7月、壊滅的な雹がコート・ド・ボーヌを3年連続で襲った。
  • 8月になりようやく暖かさが訪れ、3週間になると思われた生育期が2週間で済んだ。
  • 9月は雨が多く腐敗果発生の危険が増し、10月5日から6日にかけての嵐で悪化し、更に酸は危険なほど高かった。
  • 白ワイン用ブドウは主に9月下旬に収穫、赤ワイン用は10月初旬に収穫。
  • 選果は不可欠だったがビオデナミで育てられたブドウは全体的に健全で他の物より成熟も早かった。
  • 梗まで成熟していたものは少なかったため全房発酵は難しかった。
  • 実質的に全てのワインは補糖、すなわち少量の糖を発酵前に添加することで最終アルコール濃度を上げた。
  • 醸造に関して言えば抽出というよりも優しい浸漬がカギとなった。

Mugnier on Australian Pinot」に掲載したフレデリック・ミュニエのビデオ・クリップも参照のこと。

原文