ARTICLEワイン記事和訳

シャンパーニュ~詳細求む 4 Apr 2015

093.jpgこれはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のロング・バージョンである。詳細なテイスティング・ノートは「Current champagne vintages」を参照のこと。

私は長年とても不思議に感じていることがある。我々が購入する中でも最も高価な部類に入るワインがベイクドビーンズの缶詰よりも「いつ作られて、何が使われているのか」という情報に乏しいにも関わらず、当たり前のように販売され続けていることである。少なくともベイクドビーンズのラベルには原料が何で、賞味期限がいつなのか記載されている。だが典型的なノン・ヴィテージのシャンパーニュにはそのような情報は一切示されることなく販売されているのである。法律では、全てのワインのボトルには小さなロット番号が押印されなくてはならないことになっているが、これらはブランドのオーナーと瓶詰業者のみが解読できるもので、我々消費者には何の意味もない。あなたの近所のコンビニエンス・ストアで煌々とした灯りに照らされて置かれている37ポンドのマムは、実はとても長いことそこに置かれていて、本来のきらめきをずっと前に失っていることだってあるかもしれないのだ。

スティルワインに関しては、そのほとんどにヴィンテージの記載があるため、我々は一目でそれがいつ作られたのか知ることができる。そしてそれらの多くはフロントラベル(最近はバックラベルも増えてきたが)が貼られていて、中に何が入っているのか、多くの情報を与えてくれる。公式なアペラシオンが記載されていれば、よく勉強しているワイン愛好家ならその地理的な由来について多くの情報を得ることができる。品種は多くの場合、フロントラベルに無かったとしてもバックラベルには記載がある。事実、私のようなワインオタクのためにバックラベルに記される情報量は気持ちの良いぐらい増加している。

ところがシャンパーニュやスパークリングワイン、特にヴィンテージを記載しないもの(シャンパーニュの全生産量の98%を占める)については全く何の情報も得られないことがなんと多いことか。典型的なノン・ヴィンテージ・シャンパーニュは最新のヴィンテージのワインにごく少量の古いワインをブレンドして作られる。許可されている主要な3品種、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエはどのような組み合わせで使ってもよい。そしてそれらのブドウは数多ある村のどこで獲れたものでもいいのだ。理想を言うと、私はこれら原料全ての情報があればうれしいと思うのだ。

中でも私が特に知りたいのはブレンドがいつ行われたのかである(そのボトルに入っているワインの主なヴィンテージがその前年にあたることを意味する)。これを「ティラージュの年」と表現することもある。ブレンドしたばかりのワインを、二酸化炭素を発生させる二次発酵を瓶内で起こすために追加の酵母と共にボトルに入れ、セラーに寝かせた日付のことである。

いや、更に重要な情報として、そのボトルが流通ルートに乗ってからの時間も必要だろう。これはワインが新しいかどうかを知るためだけではない。シャンパーニュはそのカギとなるデゴルジュマンという工程 ―死んだ酵母細胞をボトルから抜出し、ほんの少しの甘味(一般にドサージュと呼ばれる)に少量のワインを混ぜたものを注ぎ足す工程― の前後で異なった熟成をするからだ。(甘味が全く足されなかった場合はそのシャンパーニュはゼロ・ドサージュ、あるいはブリュット・ナチュレと呼ばれる)。

デゴルジュマンのあと(理想的な環境で)長く熟成されればされるほど、シャンパーニュはよりトーストの香りが強く豊潤な味わいになり、デゴルジュマンの直後では溌剌として酸の強い味わいになる。

ここでの大きな手掛かりはデゴルジュマンの日付だが、シャンパーニュの革新者、ブルーノ・パイヤール(Bruno Paillard)とその名を冠したシャンパーニュ・ハウスが1983年以来、全てのシャンパーニュのバックラベルにデゴルジュマンの日付を記載していることは称賛に値する。ほとんどのシャンパーニュ・ハウスは(15年後にパイヤールに倣ったフィリポナを例外として)何十年もの間この問題への取り組みが鈍い。一方デゴルジュマンの日付の重要性に自信があるパイヤールは、それらがどれほど違うのかを示すため同じワインでデゴルジュマンの日付の異なるものを販売している。

ここでワイン評論家独特の問題が浮上する。我々がバックラベルに日付の記載のないノン・ヴィンテージのシャンパーニュを評価する際、我々は実際にテイスティングしたボトルを特定する手段を持たない。これは読者とて同じだ。これでは新たなボトルが毎年少なくとも1回は生み出され、流通ルート上に優に2、3種類のロットが存在する現状では全く何の意味もないではないか。

この疑問に対する擁護論は長い間、シャンパーニュのブレンドはノン・ヴィンテージのボトル差を減らすことが目的であるというもので、ボトル差はほとんどない、というものだった。しかし、この議論に大きな衝撃が走った。2012年にクリュッグ、シャンパーニュで最も重要な地位にあり、LVMHグループ傘下にある豪奢なシャンパーニュ・ハウスが、以後は彼らの「マルチ・ヴィンテージ」グラン・キュヴェ(クリュッグのものはノン・ヴィンテージほど多く見かけるものではないが)の全てのバックラベルにID番号を印刷し、スマートフォンやウェブサイトで各ボトルの完璧な由来を知ることができるようにすると宣言したのである。

先月、毎年恒例のイギリスのワイン業界を対象としたシャンパーニュ生産者の展示会が開催された。私はテイスティングをヴィンテージの表記されたワインに集中して行い、それらが少なくとも私が推薦できるレベルで特定可能なボトルになっているかどうか、あるいは否かを基準として見て回った。結局9つの異なる現行ヴィンテージの49種のワインをテイスティングすることができた。2008が最も多く、喜ばしいことにアヤラ(Ayala)、ボーモン・デ・クレイエール(Beaumont des Crayères)、ベスラ・ド・ベルフォン(Besserat de Bellefon)、ボランジェ(Bollinger)、ポール・デテュンヌ(Paul Déthune)、シャルル・エドシック(Charles Heidsieck)、ランソン(Lanson)、アンリ・マンドワ(Henri Mandois)、ムタール(Moutard)、サンゲール(Sanger)、ヴーヴ・フルニ(Veuve Fourny)、そしてもちろん、ブルーノ・パイヤールとフィリポナはバックラベルにそのデゴルジュマンの日付を記載していた。また、アンドレ・ジャカール(André Jacquart)はこの重要な情報を明示するパネルは掲示していたが、私が見たボトルには印字されていなかった。出展していたシャンパーニュ・ハウスのほぼ四分の一が(そのほとんどが大規模なハウスだったが)、今やデゴルジュマンの日付は少なくともヴィンテージの記載されたシャンパーニュに関しては、顧客に知らせる価値のある重要な情報だと認めたことになる。

093-2.jpg私はここ数年、最高品質のシャンパーニュ生産者(4500軒を超す生産者の頂点に立つ超一流の生産者)は自社製品に関する情報の公開に非常に長けていることに気づいた。品種やヴィンテージの比率、g/Lで表示されるドサージュ(あるいは残糖)、そして地理的な由来をバックラベルから読み取ることは、小規模な生産者、たとえばベレッシュ(Bérèche)、ユリス・コラン(Ulysse Collin)、ディエボル・ヴァロワ(Diebolt-Vallois)、エグリ・ウーリエ(Egly-Ouriet)でも珍しいことではないのだ(ウーリエについては少なくとも、ワインは濾過せずに48か月澱と共に寝かせ、2013年の7月にデゴルジュしたことがわかる)。

物事は間違いなく、いい方向に向かっている。

お勧めのヴィンテージ・シャンパーニュ

Billecart Salmon, Cuvée Nicolas François Billecart 2002

Bollinger, La Grande Année 2005

Paul Déthune, Grand Cru 2005

Deutz 2007

Duval-Leroy, Blanc de Blancs Grand Cru 2006

Pierre Gimonnet, Gastronome Blanc de Blancs 2008

Gosset, Grand Millésime 2004

Alfred Gratien 2000

Charles Heidsieck 2005

André Jacquart, Le Mesnil Expérience Blanc de Blancs Brut Nature Grand Cru 2007

Cave Co-opérative Le Mesnil, Blanc de Blancs Grand Cru 2007

Bruno Paillard, Blanc de Blancs 2004

Philipponnat, Blanc de Noirs 2008

Louis Roederer 2008

Pol Roger 2004

Veuve Fourny, Blanc de Blancs Premier Cru 2008

詳細なテイスティング・ノートは「Current champagne vintages」を参照のこと。

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