ARTICLEワイン記事和訳

ボルドー2012 ~うれしい驚き 13 Feb 2016

157.jpgこれはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のロング・バージョンである。250に及ぶ右岸の赤左岸の赤に関するテイスティングコメントも参照のこと。この写真は3年前にサウスワールドで撮影したものだが、何人かの顎ひげが伸びたことを除いてほとんど変わりはない。

毎年1月に、イギリスの高級ワイン商の代表を主な構成メンバーとするワインのプロ約20名がイギリス東部の海沿いの街、サウスワールドに集まってボルドーの4年前の秋に収穫されたヴィンテージをブラインドテイスティングする。最近は3日間のセッションのあと、全員が今世紀のヴィンテージをランク付けするよう言われる。最新のランクは下記に示している。

2011は気の毒な年、以前私は習慣的に弱者への気遣いからそう言ったかもしれない。最近マスター・オブ・ワイン協会協賛の非常に包括的な 2011ヴィンテージのブラインドテイスティングに参加しなかったとしてもそうだろう(私は昨年のサウスワールドでの2011の会に参加できなかった)。最近のどのヴィンテージにまして2011はボルドーの異常なまでに非現実的な価格戦略による価格と品質のミスマッチを示す良い例となっている。

出来の良い2009と2010のブリムール・キャンペーンの大成功に気を良くし、そのキャンペーンで大きなカギを握っていたアジアの投資家が今やプリムールというビジネスに不満を抱いているという危険な兆候を無視して、ボルドー人たちは惨めな2011にあまりに吹っ掛けすぎた。2011のなかでの救いと言えばソーテルヌで、もう一つの重要な甘口ワインの産地であるポートでの成功を恵まれない年という点を除いては反映していると言える (The best 2011 reds anywhere参照のこと)。

先月のサウスワールドは2012ボルドーの回で、前年あまりに喜びの少ない2011のトラウマを引きずるテイスターたちは気乗りしない様子だったが、輝きのなかった2011よりも2012が全体的に低い価格が付けられている事実に元気づけられたようだった。いつものように我々はサンテミリオンの丘のふもとから始め、いつものように仲間のテイスターたちは20点満点から非常に厳しい点数をつけて行った(最も人気のなかったワインは13.61という低さだ)。

だが初日の午前中には少しずつ、希望の光が感じられてきた。右岸のワインの中ではぱっとしないサンテミリオンのトップワインの中から突き抜けてくるもものが現れ、特にポムロールが目立った。これはおそらく最高の作り手は十分に選果をする余裕があったことも理由だろうが、これらの小規模生産者の場合はその名だたる優れたテロワールがものを言ったという方が正しいかもしれない。

サンテミリオンではトロロン・モンドはアルコールが他の成熟したヴィンテージのものより穏やかで私は非常に気に入った。またボー・セジュール・ベコも非常によくできていた。トロットヴィエイユも間違いなく2012は成功している(翌日同じくフィリップ・カステジャ所有のポヤックにあるバタイィもよくできていることがわかった)。サンテミリオンの傾向はアルコールとオークを強調しすぎる点にあるが、幸いなことにいくつかの名声の低い作り手がいまだにその手法を模倣的に使ってはいたものの、その傾向は鳴りを潜めていた。

面白かったのはサンテミリオンのすぐ東にあるあまり魅力的でないアペラシオン、カスティヨンのワインもいくつか、それら名声の低いサンテミリオンのワインに混ぜて、言うまでもなくブラインドでテイスティングしたのだが、サンテミリオンに比べて明らかに劣っているとは感じられなかった点だ。

最高のポムロールはこのヴィンテージの250本に及ぶ再審査でも非常に高い点がつき、これらの最高峰に達しなかったワインたちを大きく引き離した。セルタン・ド・メイ、クロ・レグリーズ、レグリーズ・クリネ、ガザン、ラフルール、ペトリュス、トロタノワ、ヴュー・シャトー・セルタンはすべて群を抜いていて、このヴィンテージの最高にワクワクする一群をなしていた。甘く熟した果実だけでなく、エネルギーとその土地の香りに満ちていた。

ジロンド川をはさんだ左岸では、スターたちはそれほどの輝きを発していなかった。この年はカベルネ・ソーヴィニヨンのヴェレゾン(ブドウの色が緑から紫に変わること)が長引き、涼しい夏とうどん粉病の蔓延のおかげでブドウが完熟するまでに非常に時間がかかった。そのため比較的青臭く未熟な香りがする、刺激の強いタンニンのワインばかりだった。特に品質のそれほど良くないメドックの作り手の2012はその傾向が強かった。

一方で印象的だったのはワインづくりの高い技術を明確に感じた点だ。明らかにこの年は完ぺきなヴィンテージとは言えないが、よい作り手では不完全なタンニンの扱い方が素晴らしかった。味わいの中ほどにそれほど果実の凝縮感はないとはいえ、舌触りはその欠点を忘れてしまうほど引き立てられていた。

AOCマルゴーは、パルメは私が2013年の4月に樽から試飲した時よりもボトルで飲んだ時の方が味わいを強調しすぎていると感じたものの、本物の魅力の軌跡が垣間見られた。シャトー・マルゴーのセカンドワイン、パヴィヨン・ルージュはサウスワールドでは壮麗で、先月非常によくできているように思ったムートンなどのグランヴァンからほんの少し劣る程度に思えた。

いつものようにサンジュリアンは職人気質で時に堅苦しいのだが、驚くほど素晴らしいものはなかった。レオヴィル・ポワフィレのトレードマークである豪奢さが比較的貧相なヴィンテージでは際立っていた。

お隣のポヤックでは品質は明らかなばらつきを見せていたが、ピション・ラランドは魅力的な一方、グラン・ピュイ・ラコストとバタイィ(それぞれMillésima から12本で460ポンドと380ポンド)はテイスティングした中で最も適正な価格がつけられた2012だった。ポヤックの1級はその10倍はするものの、どれほど注意深く作りこまれていても10倍の喜びはもたらしてくれない。

私は最低の評価はサンテステフにつくのではと考えていた。なぜならもともとサンテステフのワインは渋くできるようになっており、全体に未熟なヴィンテージでは必ずしもそれが良い方に作用しないからだ。だが実際は全体的な安定感とトップ・シャトーの品質に感銘を受けた。カロン・セギュール、コス・デス・トゥルネル、モンローズは魅惑的と言え、Millésimaから320ポンドという安価で手に入るフェラン・セギュールも然りだ。

ボルドーのすぐ南にあるペサック・レオニャンの赤は青臭さも少なくグラーヴと共通する魅力的でフレッシュな香りがあるものの、それほどの凝縮感はない。私だったあまり長いこと寝かせてはおかないだろう。

ペサック・レオニャンの白こそがテイスティングの最終日に我々を元気づけてくれたワインだ。これこそ間違いなくこのヴィンテージの成功者である。2012はソーテルヌやバルザックのような甘口ワインにとって失敗のヴィンテージともいえる。イケムやシュディローはグランヴァンを作ることすらしていない。だが2012の辛口の白はテイスティングして楽しく、おそらく今ピークを迎えていると思われる。そのスタイルは突き抜けるようなフレッシュなソーヴィニヨン・ブランから豊潤でクリーミーな、オーブリオンから生み出された特に成功を収めているフルボディの白まで様々だ。

いつものようにスミス・オー・ラフィット・ブランは非常に印象的だったが、テイスティング・チームのお気に入りは軽快なブスコーで1本「たったの」30.95ポンド+付加価値税でFour Walls Wine から入手可能だ。ブラインドは素晴らしい。

最近のボルドーのヴィンテージランキング

およそ20名のワインのプロによる今世紀のヴィンテージの格付けで、最高13点から最低1点の配点だ。

2005 (221 points)
2009 (215 points)
2010 (210 points)
2000 (179 points)
2001 (165 points)
2008 (120 points)
2006 (118 points)
2012 (108 points)
2003 (89 points)
2004 (85 points)
2007 (60 points)
2002 (43 points)
2011 (25 points)

(原文)