ARTICLEワイン記事和訳

2015、ドイツ人の嗜好が変わった?  14 May 2016

この記事のやや短いバージョンはフィナンシャル・タイムズに掲載されている。220におよぶテイスティング・ノートもとマイケル・シュミット(Michael Schmidt)によるヴィンテージ・レポート参照のこと。

5がつく年が(5で割り切れる年がヨーロッパのほとんどの地域で)良年であるという法則を作って以来、2015で最高なのはどの地域かを常に考えていることを白状しよう。

もちろん最近テイスティングした一連のボルドーにはなかなかの喜びを感じたのだが、先月末にドイツで行ったテイスティングはさらに印象的だった。

毎年ドイツのワイナリーのトップからなる組織、VDPのメンバーはライン川のほとりマインツで開催されるヴァインベーゼ(Weinbörse;試飲会)で大規模な最新のヴィンテージの発表を行う。ここ数年参加していなかったのだが、恐ろしいほどの締め切りに追われたあとに初めてテイスティングするヴィンテージが2015だったことに心が躍った。

展示会には非常に多くのワインが出展されており、2014の赤およびリリースが遅かった白も合わせて1500本以上もあったため、慎重な選択を必要とした。そこでJancisRobinson.comのドイツ・ワイン専門家、マイケル・シュミットと私で地域を分担し、私は北部のモーゼル、ナーエ、ラインヘッセンに集中することとした。

モーゼルにあるウィリ・ハーク(Willi Haag)のマルクス・ハーク(Marcus Haag)が語るには「あんなに夏が暑かったので異例の熱波のヴィンテージである2003の再来になるかと思ったのですが、最終的には高い酸と中程度のアルコール、素晴らしい複雑さに恵まれました。」

今回の訪問では長年の知り合いであるドイツのワイン生産者の子供に会う機会も多く、彼らのもつ野心、哲学、理論と実践両面での高い知識に大変勇気づけられた。実質的に彼ら全員がヨーロッパ内外両方での経験を積み、世界中のワイン業界に有用なコネを張り巡らせている。

ナーエにあるクルーガー・ルンプ(Kruger-Rumpf)の若きゲオルグ・ルンプ(Georg Rumpf) は彼の父であるステファンのワインを1990年以来テイスティングしてきて、残糖が低めで総酸量の高いワインが最もよく熟成することに気づいた話をしてくれ、そのために2015以降クルーガー・ルンプのワインはかつてのものより早めに収穫することにしたそうだ。例えば彼らの遅摘はドイツの伝統的な成熟の基準である70エクスレ以上にはしない(そしてゲオルグは時にはベーレンアウスレーゼやトロッケンベーレンアウスレーゼに格付けされるとてもとても甘いワインを生み出す、貴腐と呼ばれるボトリティスを積極的に避けている。しかもそうしているのは彼一人ではない)。

同様にモーゼルのうらやましいほど最高の畑を統括するアネグレット・リー・ガルトナー(Annegret Reh-Gartner)はあえて辛口のカビネットやシュペートレーゼを残糖80g/L未満で作っていると話した。ブドウの中の糖がアルコールに変わるのだから、彼女の作るワインは以前よりもややアルコール度数が高くなるのだということだ。しかし彼女はその結果が「より軽やかで飲みやすく、無駄のない味わい」であると確信している。

1971年に制定された、ブドウの糖度を何よりも優先するというドイツ・ワイン法の悲惨な影響は現在完全に鳴りを潜めている。実際には上質なドイツ・ワインで最も重視されているのは成熟と甘みだ。

ドイツ・ワイン法への反応として、また暖かい夏も手伝って、完熟した辛口のワインがドイツで作られており(今や高すぎる酸を糖でごまかす必要がないのである)、ドイツ国内でも極辛口のトロッケンが大ブームになった。そのようなワインは伝統的な輸出市場であるイギリスやアメリカではゆっくりとした成果しか上がらなかったが、この理由の一部は長年ドイツ・ワインを輸入してきた業者は最初にドイツの最高級の甘くフルーティなワインにほれ込んだのが始まりであり、トロッケンは酸っぱい異質な存在と認識していることにもある。

そのため私は世紀が変わる頃、ドイツのワイン生産者の間には二段階の考え方が存在していると感じていた。多くは自分たちの最高のブドウを最高級の辛口ワイン、ドイツのワイン愛好家が高額で購入するいわゆるグローセス・ゲヴェックスに使っていたようだ。一方で主に輸出用の甘いワインは、昔から言われている甘みは七難隠すが辛口はすぐに見破られるという考え方に基づき、やや質の劣るブドウから作られていたようだ。

しかし、現代のワインの世界が往々にしてそうであるように、大きな変革が起こっていると私は感じている。とにかく極辛口のワインにだけ注力していた生産者が最高級のフルーティな(バランスがとれ、わずかな残糖のあるワインの婉曲表現である)ワインを作り始めているのだ。

ザールにあるファン・フォルクセン(Van Volxem)のローマン・ニエヴォドニツァンスキー(Roman Niewodniczanski)は、長年モーゼル上流にある支流、ザールという冷涼な土地で上質な辛口ワインの旗手であり続けた人物だが、彼ですらカビネット、シュペートレーゼ、アウスレーゼと呼ばれる(グローセス・ゲヴェクスとは違って)甘みのあるワインを作っているのである。

フリッツ・ハーク(Fritz Haag winery)のオリバー・ハーク(Oliver Haag)はかつてドイツで(徹底的な甘口ではなく)オフ・ドライのワインへの興味が増していると述べた数少ない生産者の一人だった。今や彼のワインの半分は彼が「フルーティ」と表現されるものである。

この現象は冷涼で長きにわたってフルーティなワインを作るのが普通だったモーゼルに限ったことでもない。フリードリヒ・グレーベ(Friedrich Groebe)はドイツの高級辛口ワインのいくつかがすぐに連想されるラインヘッセンのヴェストホーフェンに拠点を置くが、彼ですらドイツの顧客の間でやや甘口のワインを受け入れる動きがあると述べている。彼はアルテ・レーベン(Alte Reben;古樹)という名のオフ・ドライのワインを2007年にたった600リットルから作り始めた。ところが彼は今やそのファインヘルプ(feinherb)と表記されるワインをその4倍も作っている。ファインヘルプとはドイツ人が好む表記でオフ・ドライのワインを指し、ハルプトロッケン(ハーフ・ドライ)はかなり時代遅れの用語となっている。

ラインヘッセンでもカイ・シェッツェル(Kai Schätzel)が大旋風を巻き起こし、ニアシュタイン周辺の自社畑にビオデナミを導入、ここでもフルーティなワインの比率は三分の一から半分にまで増えた。

ザンクト・ウルバンス・ホーフ(St Urbans-Hof)のニク・ワイス(Nik Weis)は ドイツの国際的なワインメーカーの一人だ。彼はトロッケンというコンセプトに我慢できなくなった。「将来的に私はラベルにトロッケンと表示するのをやめるつもりです。なぜなら「ただ規則に従うために」残糖量を調整するなんて馬鹿げていますから。私は辛口ワインには白いラベル、フルーティなワインには黒いラベルを使っています。モーゼルでは辛口ワインは甘口のものとは全く違いますからね。黒いラベルはかつて生産の25%を占めていましたが今は50%を超えるほどです。これはフルーティなワインをやや辛口に仕上げているからなんです。でもグローセス・ゲヴェクスは辛口である必要がなければいいのに、と願っているんです。だってもう少し甘い方がバランスが良くなることが多いですからね。」

テイスティング・ノート全文を参照のこと。取扱業者の情報はWine-searcher.comで。

VDPで2015に並はずれた結果を残したワイン

Mosel

Clemens Busch
Forstmeister Geltz-Zilliken
Grans-Fassian
Maximin Grünhaus
Fritz Haag
Willi Haag
Reinhold Haart
Reichsgraf von Kesselstatt
St Urbans-Hof
Schloss Lieser
Van Volxem

Nahe

Dönnhoff
Emrich-Schönleber
Kruger-Rumpf
Schäfer-Fröhlich
Schlossgut Diel

Rheinhessen

Groebe
Keller
Kühling-Gillot
Schätzel
Wagner-Stempel
Wittmann