ARTICLEワイン記事和訳本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

ワインの温度を保つには 6 Apr 2019

300.jpg2019年4月9日 気温が高い中でワインの温度を低く保つ方法について様々な提案が届いているので、この記事の最後に追加した。

2019年4月6日 ワインの提供温度に関するこの記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

地球環境が急速に悪化していく中でこのテーマを取り上げるのはあまりに自己中心的で浅はかなことと思われるが、そう言ってしまうと私がプロとして人生をささげてきた世界が浅はかなものだったことになってしまうので、この点はご容赦願いたい。

どこか暖かい地域でワイン・グラスを手にして休暇を過ごしている自分を想像してほしい。目の前の砂浜には波が打ち付け、頭上にはヤシの木が揺れている。仕事を抜け出した牧歌的生活の典型のような景色だが、ここには決定的な間違いがある。

問題はあなたがお金を払って手にしたグラスの中のワインが最高の状態にあるのはほんの数分間のことだけだという点だ。暖かい気温のせいで、リフレッシュするための飲み物は生ぬるいスープに変わってしまう。ワインがどんな色であれ、この不都合な現象からは逃れられない。

つい最近までこのワイン温暖化症候群は熱帯にしか当てはまらなかった。だが最近は地球温暖化のせいで赤道からはるかに離れた場所でもワインが不愉快なほど生ぬるくなってしまう夏は多く存在する。

ワインを楽しむためにどれほど提供温度が重要か強調しすぎることはないだろう。冷たすぎれば香りが揮発せず何の味も感じなくなってしまう。低温では酸や固いタンニンが強調されるが、それは常に好ましいことではない。だがあまりに温度が高すぎると、白やロゼだけでなく赤ワインでも、ワインは面白みと風味を失い、ビネガーのような香りを感じるようになる。最も深刻なことは、特に暑い日にワインが爽やかさを失うことだ。だが飲み物の最も重要な役割はこの爽やかさなのである。

ワイン用温度計を神経質に使うことを推奨するわけではないが、理想的なワインの提供温度はほとんどの白ワインの場合6-10度だ。この幅の中でも低い温度帯は泡として溶けこんでいる二酸化炭素を維持するためスパーリング・ワインにふさわしいし、一部の甘口ワインやとくに軽いワインにも適切だろう。もう少しフル・ボディに近い白ワイン、たとえば高級な白のブルゴーニュ、最高品質のシャルドネ、ローヌやその他地域のヴィオニエなどはもう少し高い温度、だいたい10―14度で提供することでその香りやワインの特徴を引き出すことができる。この温度帯は理想的で、時に「セラー温度」とも呼ばれることがある、なぜならどんな色のワインにも適切な保管温度であり、ボージョレのように軽くフレッシュな赤ワインやシンプルなピノ・ノワール、ポートやシェリーなどにも最適な温度と言えるからだ。

フル・ボディの赤、特にタンニンの強いワインには(カベルネ・ソーヴィニヨンなどの若いワインにとくに当てはまるが)18度程度まで温度を上げて提供する方が好ましいこともある。

それでもこれらの温度は世界のほとんどの地域の夏の外気温よりははるかに低いし、現実的には温度管理された室内の気温よりも低いことがほとんどだ。(かつての赤ワインの提供に最適な温度は「室温」であるというのははるか昔、まだ気温が低かったころの話だ)。では、最適な状態でワインを楽しむためにワインの温度を低く保つにはどうしたらよいのだろうか。

これがスピリッツやカクテルなら話は早い。飲み物の温度が高くなったと感じたら氷を足せばいいのだ。だがワインと氷はあまりよい相棒とは言えない。その理由の一つはワインの持つ力強さだけでなく、味わいとバランスも変えてしまうことだ。(最近アントワープで開催された世界ソムリエコンクールの審査をしていた際に、かつての優勝者から聞いたアドバイスは、ワインを飲んでいる人にワインに入れるための氷を提供する適切なエチケットはそのゲストに自分で氷をいれてもらうことだそうだ。)

気温が高い場合はワインを通常より少し冷たくして提供するのも一案だろう。たとえば提供の30分ほど前に赤ワインを冷蔵庫に入れておき、温度が上がることで最適な提供温度に到達させることだ。だがもちろん、最初のうちワインは理想よりも温度が低いことを意味するし、結局はスープのように生ぬるくなってしまうことには変わりはない。

ああ、これこそワイン愛好家の前に立ちはだかる壁ではないか!

このジレンマを解消すべく多くの器具が開発されてきた。私のお気に入りはワイン・ボトルの温度を一定に保ってくれる真空断熱の層を備えた円筒形の保冷容器だ。これは刺すような日差しの下でも非常に効果的で、氷を入れたバケツに比べて場所も取らず、エネルギーも使わない。

バケツは氷だけを入れるよりも氷と水を一緒に入れる方が効果的だが、急速にボトルのワインを冷やしたい場合には間違いなく効果的だ。私はレストランで赤ワインを頼んだ際、テイスティングして(温度が高いと思ったら)氷の入ったバケツで冷やしてもらうよう頼んだ経験も多い。だがこれはかなり場所を取るし、氷を作り、それを保管するためにエネルギーも使うし、ボトルも水で濡れてしまうので取り扱いづらくなる。

冷凍庫で冷却しておけるような球状、あるいはオセロの駒の厚さを倍にしたような形をした金属製の製品を使うのも選択肢の一つだろう。これならワインを薄めたり、味を変えてしまったりすることなく冷やすことができる。だが私からするとワインを口にするたびにそれらが歯にぶつかるのであまり心地のいいものではない。タムによるとジョン・ルイス(訳注;百貨店)で6個15ユーロで販売されているgranite whisky stones も同じ働きをするそうだ。これらは小袋に入っているので冷凍庫の匂いが石についてしまうこともない。

(ちなみにワインを凍らせることは推奨できない。ワインは凍らせると急激に膨張し、コルクをボトルから押し出してしまうことがあるためだ)

我々ワイン愛好家が最適な温度に近い状態でワインを飲むためには2つの方法しかないように思う。一つは氷の入ったバケツか真空保冷容器でボトルを最適温度よりやや低く保ち、毎回ほんのわずかな量ずつ注ぐことだ。もう一つはワインを大急ぎで飲んでしまうことだが、これは決してお勧めできるものではない。

このワイン温暖化症候群へ対処するためのアドバイスは大歓迎だ。一方で私は以下の予測も立てている。気温が上がるにつれ、我々はフル・ボディの赤よりも冷やして飲める赤へより注目するようになるだろう。複雑で深刻な赤ワインは温度が高いと、さらに夏の気温が高いとその本領を発揮することができないため、我々の多くは爽やかなワインを切望するようになるだろう。だがこれは白やロゼに限ったことではなく、少し冷やして提供する需要にうまくこたえられる赤もその中に含まれるだろう。以下のおすすめを参照のこと。

冷やして飲めるお勧めの赤

以下のワインはタンニンが低かったり非常にライト・ボディだったりするので少し冷やして提供することも十分に可能だ。

Ringleader, Old Vine Grenache 2018 Riverland £5.99 Aldi (アルディでの在庫は少ないが実質的に同じものがMorala, Old Vine Grenache 2018 Riverland £8.99 でマジェスティックで取り扱いがある)

Percheron Old Vine Cinsault 2016 Western Cape £6.99 Purple Foot of Oxfordshire and many more

Jean-Paul Brun, Le Ronsay 2017 Beaujolais 1ダースあたり保税価格£62.50 Justerini & Brooks

De Martino, Gallardia Cinsault 2016 Itata £14.50 Berry Bros & Rudd

Pedro Parra, Imaginador Cinsault 2016 Itata $23.96 Astor Wines, New York

Domaine Chapel 2017 Juliénas £23.48 Uncharted Wine, £25 Quality Wines, £28 Lechevalier

Jane Eyre 2017 Chénas £25 D Vine Cellars, The Wine Reserve, Morrish and Banham

Le Grappin 2017 St-Amour £26 legrappin.com

Julien Sunier 2017 Fleurie £28.50 Berry Bros & Rudd

Kutch Pinot Noir 2017 Sonoma Coast £360 a dozen in bond Farr Vintners

Tasting notes on Purple Pages. Other stockists via Wine-Searcher.com

テイスティング・ノートはこちら

読者から寄せられた追加のおすすめ

(訳注;翻訳後にも続々と追加されているようですので興味のある方は原文からどうぞ)

Guy Smithのおすすめはこの2本用の電気式冷却器だ。コンセントが必要だが個別に温度が設定できる。なかなかよさそうだ!

ベルギーから寄せられた情報はかなりオシャレ(そして高い)Qelviq のワインクーラーで、今年中には発売されるものだ。プロフェッショナル・バージョン(€399) とソムリエ・バージョン (€499) がある。電池でも稼働可能で非常に静かだ。ソムリエ・バージョンは35万本におよぶワインの理想的な提供温度情報を搭載したアプリがついている。プロフェッショナル・バージョンはアメリカだけの配送になるようだ。

デンマーク人Arne Jensenのお勧めはボダムのダブルウォールグラスで、4客セットで35ポンドだ。だが、ワインに最適な形ではない。手前味噌だが、自分がデザインしたワイン・グラスの方がいいと思ってしまった。

原文