ARTICLEワイン記事和訳本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

もっとギリシャのワインを 26 Oct 2019

318-1.jpegギリシャ・ワインの品種およびその素晴らしい品質をほめたたえるこの記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。テイスティング・ノートも参照のこと。

気づいている方もいるかもしれないが、Jancisrobinson.comでは数カ月ごとに愛好家向けのセルフ式のテイスティングをロンドンのキングス・クロスにあるキャラヴァンで開催している。これは利益を得るためではなく、我々が今よりも注目に値すると考える一連のワインを紹介するのが目的だ。我々がそのようなイベントを初めて開催したのは2013年、4回開催したバローロ・ナイトの初回であり、当時イギリスのワイン愛好家たちはフランス・ワインに注目しすぎていると感じてのことだった。アメリカ人たちが我々イギリス人よりもはるかに気に入っていたこの偉大なワインのすばらしさを知らしめたかったのだ。そして今、うれしいことにイギリスのワイン商のリストでバローロは以前よりもはるかに定番の位置を占めるようになっている。

以来、我々はブルネッロ、キャンティ・クラシコ、シェリー、ラングドック、偉大なドイツの辛口リースリング、リースリング・カビネット、そしてボルドー赤のクリュ・ブルジョワなど様々なテイスティングを開催してきた。そして2週前の日曜日に、現在最も人気のある、ギリシャ・ワインのテイスティングを開催した(先週公開されたレポートも参照のこと)。チケットはすぐに売り切れた。テイスティングに訪れた人々は開場前から雨の中を30分ほども列を作り、ニューキャッスルからそのためだけに車で来た気の毒な一人の参加者は閉演である午後9時の15分前にようやくたどり着いていた。

私がテイスティングした42本のワインはギリシャを定期的に訪れるジュリアが厳選したものであり、この盛り上がりの理由は容易に判断できる。唯一の疑問はなぜそれらがギリシャ以外の国のワイン・リストやショップの棚でなかなか見つからないのか、という点である。

我々の用意したセレクションを見る限り、ギリシャの最近のラベルはスマートで、英語を話す人間にも簡単に解読できる。だが少なくともイギリスでは、ワイン業界が全く聞いたことのない名前(産地、アペラシオン、生産者、品種)に対し少なからず抵抗を感じており、これほどにエキサイティングな分野をごく一部の専門業者、例えばEclectic(彼らが今年初めに開催したテイスティングのレポートも参照)、Hallgarten & Novum、Southern Wine RoadsのようなインポータやBedales of Borough、Maltby & Greek、Quality Wines、 Theatre of Wine、Vincognito、Whole Fd Market、Wine & Greene、そして驚くほど視野の広いWine Society(昨日公開した彼らの最新の品ぞろえに関するレポートも参照)に一任してしまっているように見受けられる。むろん、彼らは誰よりもギリシャ・ワインに好意を持っているのだが。

アメリカのインポータで比較的ギリシャ・ワインの品ぞろえがいいのはDiamond Imports (ワインはSkurnik によってニューヨークで流通している)、Winebow、Athenee Importsなどが挙げられる。

選ばれた42本の構成は、古き悪しきタベルナ(ギリシャの軽食レストラン)の記憶を消し去るために作られた2本のレッツィーナ(そのうち1本は他のワイン全てをテイスティングした締めに飲みたいと私が感じたものだ)、遅摘みの赤ワインで樽で10年寝かせたものを含む5本の甘口ワイン、9本の赤ワイン、26本の白ワインがあり、白ワインのうち2本は流行の、果皮と長く接触させたオレンジ色をしていた。

その緯度から直感的に捉えると、ギリシャは白ワインが最高であると言えよう。それらの多くは例えばフランスに当てはめるとブドウが熟すことが不可能なほど標高が非常に高いところで栽培されている。例えば中央ペロポネソスにあるマンティニアというアペラシオンはエーゲ海から標高が上がること700mにもなり、夜の涼しさを十分に享受し、モスコフィレロのデリケートな香りと自然な高い酸を保つことができるため、出来上がったワインのアルコール度数はわずか12.5%で、非常に爽やかだ。

多くのギリシャ・ワインの爽やかさは海からの風に由来する。ギリシャのこのうえなく複雑な島もまた、ヨーロッパの他の地域で作られる偉大なワインと同じぐらいあらゆる点において上質で素晴らしいワインの宝庫である。

このテイスティングで提供された42本のワインはほぼすべてが合わせて24種類の固有品種主体で作られており、ごくわずかな国際品種とブレンドされていたのはわずか3本のみだった。中には(赤のMavrokoundouraやクレタ島の白、Melissakiなど)8,9年前に出版された、商業的にワインを作っているブドウ品種を全て網羅したガイドであるワイン・グレープスの共著者である私にとっても目新しいものもあった。

ロボラはケファロニアの品種でライムの香りが特徴的な白ワイン用品種だが、「コレリ大尉のマンドリン」を思い越しながらすするのが良いだろう。Chidiriotikoはレスボス固有の品種であると考えられており、この島が悲劇的なまでに混み合い、支援も十分ではない難民キャンプだけではないことを思い出させてくれる。

マスカットと、エキゾチックなFokianoはサモス島の特別な品種で、夏の暑い陽の下で干され、非常に甘いワインを作る。

クレタ島は固有かつこの上なく特徴的な品種の宝庫であり、Douloufakis やLyrarakisなどがVidiano, Vilana, Plyto、Dafniなどの品種を山の中で栽培している(話は変わるが、同じぐらいの緯度で東に位置するキプロス島もまた、標高の高い畑を活用し、沿岸にあるリマソールまで昼の炎天下をトラックで運ぶ代わりに畑により近い場所で醸造をすることに注力したことでテーブル・ワイン業界の再生に成功している)。

だがギリシャで最も重要なワイン島と言えば美しい火山島であるサントリーニであり、異論の余地なく高貴な品種、アシルティコと、それを補佐するアイダニとアシリがその特色と言える。テイスティングでは10本、すなわち全体の4分の1ほどを占めていたわけだが、不思議なことではない。そのうち数本は島の奇妙で低く仕立てられたバスケット型のブドウから作られ、その樹齢は100年とも200年とも言われる。2008や2010に作られ今でもまだ十分に強いワインもあれば、樽を使ったものと使わないもの、培養酵母を添加せずに自然発酵を行ったものなどさまざまだ。どれも好奇心旺盛な白ワイン愛好家のセラーを埋める価値のあるワインと言える。

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ギリシャの赤ワインも限りなく進歩を遂げており、最近は輸入品種への依存も、強すぎる樽のおかげで見掛け倒しなスタイルも減る傾向にある。ここでもどれが真のスターなのか次第に明らかになってきている。マット・トムソンは世界中でワインを作るニュージーランド人で、上の写真で妻のソフィー・パーカー・トムソンと並んでいる人物だが、彼の心はバローロとブルゴーニュにあると言いながら、このギリシャの一連のワインを試した後に彼は「クシノマヴロに恋しちゃったかも」と口にしていた。実際、マケドニア西部の丘あいにあるナウサというアペラシオンで作られる最高のクシノマヴロが上質なバローロと同じうような緊張感、軽やかさ、テクスチャの粗さを持つ。

アギオルギティコはペロポネソスの最も有名なワイン産地、ネメアで有名な赤ワイン用品種で、よりフルボディに近い、しかし明らかに飲みやすい赤ワインを作る傾向にある。

これらのワインはニューヨークにあるグリーク・ワイン・ビューローのソフィア・パーペラ(Sofia Perpera)とジョージ・アサナス(George Athanas)と公的な生産者団体の協力のもとに集められ、ギリシャから輸送された。テイスティングの席でソフィアが興奮した様子で、イギリスでのギリシャ・ワインのプロモーションの予算が承認されたと話していたが、それがどのぐらいの金額なのかはまだ分かっていないようだ。もしこのままイギリスがEUを離脱すれば、EU圏外にEUワインをプロモーションするためにより多くの投資が期待できるかもしれない。わずかな希望の光と言えるだろうか?

イタリアの専門家、ウォルター・スペラーは次のテイスティングの企画に余念がない。12月1日日曜日に開催されるそれはヴァルテリーナ・ナイトであり、このスイスとイタリアの国境にある地域のネッビオーロに捧げるものだ。パープルページの会員は現在早期割引チケットの入手が可能で、一般販売は10月31日からだ。

ギリシャのお気に入り

価値のあるワインとして、テイスティングした40本のうち29本に私は20点満点中の16.5点(私にしては高い)をつけたが、ここに紹介しているのは17点以上のものだ。

白ワイン
Gerovassiliou Malagousia 2018 Epanomi, Macedonia
Douloufakis, Dafnios 2016 Crete
Oenops, Vidiano 2017 Greece
Gentilini, R Robola 2015 Cephalonia, Ionian Islands
Aoton, Savatiano 2017 Attiki, Central Greece
Methymnaeos, Orange Chidiriotiko 2016 Lesbos, Aegean
Argyros, Monsignori 2017 Santorini
Karamolegos, Pyritis 2017 Santorini
Volcanic Slopes Vineyards, Pure 2016 Santorini
Hatzidakis, Skitali 2016 Santorini
Sigalas, Santorini 2010 Santorini
Boutari, Selladia 2008 Aegean Islands

赤ワイン
Dalamara, Paliokalias 2015 Náoussa, Macedonia
Tsantali, Rapsani Grande Reserve 2010 Rapsani, Macedonia
Alpha Estate, Omega Late Harvest Xinomavro 2007 Florina, Macedonia

ギリシャ・ワイン・ナイトのテイスティング・ノートも参照のこと。国際的な取扱業者Wine-Searcher.comで見つけることができる。

原文