ARTICLEワイン記事和訳本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

世界が最も好む品種は 12 Sep 2020

348.jpegブドウ品種、そして大好きなワインについてあなたが知りたいこと。この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

世界でもっとも多く栽培されている品種は何だろうか?どの品種が世界のお気に入りの座から最も早く陥落しただろう?固有品種ではなく、世界中のワイン愛好家に親しまれる国際品種に強く依存している国はどこだろう?先日アデレード大学のキム・アンダーソン教授とシーニャ・ネルゲン博士によって出版された途方もなく総括的なワイン用ブドウに関する大要*が、これらの疑問と、それ以上のものに答えてくれるだろう。

彼らが見つけることのできた全てのブドウ生産国に関する統計データは最新のもので2016年のものであり、若干の古さは否めない。だが、1990年と2000年の比較は興味深い流行の変遷と世界のブドウ畑がいかに早く進化を遂げてきたかを如実に示している。

2000年から2016年の間に世界のブドウ栽培面積は8%縮小している。この理由の一つは古くからのワイン消費国、特にフランスとスペインのワイン消費量が大きく減少したことだ。同じ時期、アメリカ人、チリ人、そしてニュージーランド人は多くのブドウを新たに植えたが、この減少を上回るほどではなかった。興味深いことに、アメリカ(というよりもカリフォルニア)とオーストラリアは単純に平均収量が高いという理由でブドウの栽培面積よりもワイン生産量の方がランキングで上位に位置している。

2000年から2016年にかけて大きく増加したのは冷涼な地域の畑だ。中国、ニュージーランド(2000年から2016年の間に栽培面積が4倍となっている)、倍増したイギリス、そしてカナダだ。気候変動は世界のワイン地図に大きな影響をもたらしている。アンダーソンとネルゲンの分析によると、2000年、世界のブドウ畑の51%が温暖な気候の地域にあったのに対し、2016年のそれは44%まで落ち込んでいる。この主な原因は2008年にEUで始まったブドウ引き抜き政策のターゲットの多くが最も暑い地域だったことだ。

1999年と2000年に世界の栽培面積を最も多く占めていたのは無名のブランデー用品種、アイレンで、広大な砂漠地帯、ラ・マンチャの主要品種だった。2016年までにアイレンは4位まで落ち、カベルネ・ソーヴィニヨンが世界で最も栽培面積の広い品種となり、その割合は1990年に2%だったものから約7%にまで増加した。この事実に私はかなり驚いた。なぜならこの品種は冷涼な気候で成熟させるには難しいし、主要なマーケットのいくつかではその人気に陰りが見えていたためだ。オーストラリア人たちはカベルネに背を向け、シラーやその他のエキゾチックな品種に注目するようになっているし、アルゼンチン人はカベルネを避け、マルベックの方を好むようになった。赤のボルドーは無論、典型的なカベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインだが、アイデンティティの危機に直面しており、販売が困難になっている。そして、これは数を数えたわけではないが、生産者やインポータが我々のように口うるさいワインライターに提案するワインの中でカベルネ・ソーヴィニヨンの割合は近年急激に減少していることも確かだ。

この明らかな乖離が際立たせるのは、ブドウがいかに長期的に生産を行う品種であるかという点だ。彼らは一度植えられたらゆうに30年はそこにとどまる。そのため、そこに何が植えられているかというのは全く異なる商業論理が存在していた前の世代の決定ということも十分にありえるのだ。

2016年にカベルネ・ソーヴィニヨンの次に栽培面積の広い品種はそのブレンド相手であるメルローだったが、カベルネよりも栽培面積が広かった1990年ほどの人気ではない。メルローを嫌悪する映画、サイドウェイズがその答えだろう。

最も劇的にその栽培面積を伸ばした品種は現在スペインのブドウ畑の多くを占めているテンプラニーリョだ。イベリア半島の外ではそれほど一般的ではないかもしれないが、スペインの栽培者たちがこぞって、特にアイレンを植え替えるために使ったこともあり、テンプラニーリョは2016年に世界で3番目に栽培面積の広い品種となり、アイレンは4位に甘んじることとなった。

シャルドネは2016年まではアイレン同様最も栽培面積が広かったし、おそらく驚くことでもないと思うが世界で最も好まれる白の国際品種であり、1990年以降その栽培面積は3倍に増えた。その理由はスパークリング・ワインの原料として人気だということもあるだろう。

6番目に栽培面積が広いのはシラー(ズ)で、オーストラリア人の情熱と、南仏と、それよりは少ないもののアメリカ西海岸での栽培面積の増加のおかげと言える。一方で、その伝統的なブレンドのパートナーで、原産地であるスペインではガルナッチャ・ティンタ、フランスではグルナッシュと呼ばれる品種は、アイレンに次いで世界第2位だった1990年から大きくその面積を失った。2016年、グルナッシュは7位だ。アンダーソンは最新の報告書でこの品種を少数の「プレミアム(高品質)」品種のグループから外していたが、個人的にはグルナッシュは今、生産者や品質に敏感な消費者によって再評価を受けているところであり、南ローヌだけでなく、スペイン、南アフリカ、オーストラリアなどの偉大なワインによって今まさに流行し始めている品種だと考える。

2016年時点で8番目と10番目に人気だった品種はそれぞれソーヴィニョン・ブランとピノ・ノワールで、どちらも1990年から2016年の間に劇的な増加を見せているこれはそれぞれ、ニュージーランドとアメリカでの劇的な増植もその理由の一つだろう。フランスではユニ・ブランとして知られるトレッビアーノ・トスカーノはかつてコニャックの原料として広く栽培されており9位につけているが、間違いなく「プレミアム」品種としては認識されていない。

赤ワイン用品種は、2000年時点で(わずかだが)白ワイン用品種を好んでいたヨーロッパよりもその他の地域での人気が高いのは明らかだ。2016年までにヨーロッパ以外での赤ワイン用品種の栽培面積は65%に、ヨーロッパでは53%に上昇しているが、ヨーロッパの赤ワイン用品種のかなり多くがロゼワインに使われている点を申し添えておきたい。中国は赤ワイン用品種の比率が最も高く86%を占めている一方で、世界中のとどまることを知らないニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランへのラブコールのおかげもあり、その比率が最も低いのは22%のニュージーランドだ。

アンダーソンの指摘の焦点は世界的に有名な品種が次第に優勢になってきているという点だ。それらに大きく依存している国はフランス(突き詰めるとそれら品種の故郷でもある)、アメリカ、チリ、そしてオーストラリアだ。固有品種の方が国際品種よりも多いのは100%から66%で、多い順にキプロス、ジョージア、スペイン、ギリシャ、クロアチア、ポルトガル、イタリアだ(ただしイタリアは固有品種の比率が2000年から2016年の間に劇的に減少した唯一の国で、その原因は多くの生産者がフランス系品種の魅力に取りつかれていたためだ)。ちなみに、フランスは固有品種の割合が60%をわずかに超える程度だが、その理由は多くの品種がスペイン原産であるためだ。

品種の幅が狭い国は、その順にキプロス、クロアチア、アルメニア、そしてソーヴィニヨン・ブランに夢中なニュージーランドだ。品種の多様性に富んでいるのはルーマニア、その後にイタリア、ハンガリー、ポルトガルが続く。2000年から2016年にかけて品種の多様性が大きく減少したのはキプロス、クロアチア、アルメニア、ニュージーランド、イギリス、ポルトガル、スロヴェニア、ハンガリーの順だ。同じ時期に品種の多様性が増したのはスイス(スイス人であり、ワイン・グレープスの共著者のホセ・ヴイヤーモスは喜ぶだろう)、オーストリア、モルドヴァ、フランス(わずかだが)だ。

 

アンダーソン教授がこの非常に骨の折れる調査を次に行う際、もしも固有品種の割合と数の増加を確認できなかったら私は驚くだろう。テスコですら、その「ザ・ファイネスト(訳注:プライベートブランドのひとつ)」にマルケのマイナーな白ワイン用品種、パッセリーナ(7ポンド)を加えているぐらいなのだから。

*データベースはwww.adelaide.edu.au/wine-econ/databases/winegrapes/. を、Ebookはwww.adelaide.edu.au/press/titles/winegrapes を参照のこと。

トップ10品種のうちお気に入りを人気順に以下に並べた。

これらは最近テイスティングし、卓越していたものだ。

カベルネ・ソーヴィニヨン
Henschke, Cyril Henschke Cabernet Sauvignon 2015 Eden Valley
£100 Honest Grapes and others

↓ヴィンテージ違い


メルロー
Ch L'Église Clinet 1995 Pomerol
£290 Hedonism


テンプラニーリョ
La Rioja Alta, Viña Ardanza Reserva Selección Especial 2010 Rioja
£23.50 The Wine Society and many others

アイレン
Verum, Las Tinadas 2019 or 2018 Vino de la Tierra de Castilla
From €10 in Spain and Belgium


シャルドネ
Kumeu River, Estate Chardonnay 2019 New Zealand
£22.99-£24.90 DBM Wines, Oxford Wine Co, Four Walls Wine and widely available at £150 per case of 12 in bond

↓ヴィンテージ違い


シラー(ズ)
Mullineux, Schist Syrah 2017 Swartland
£74.40 Berry Bros & Rudd

↓ヴィンテージ違い


グルナッシュ
David & Nadia Grenache (any vintage) Swartland
£120 per case of 6 in bond (2018) Justerini & Brooks


ソーヴィニヨン・ブラン
Oliver Zeter, Fumé Sauvignon Blanc 2018 Pfalz
£23 Laithwaites and Averys

トレッビアーノ
Tenuta di Ghizzano, Il Ghizzano 2019 Costa Toscana (ブレンドだが・・・)
£17.01 Winebuyers

ピノ・ノワール
Au Bon Climat, La Bauge au Dessus Pinot Noir 2016 Santa Maria Valley
£40.95 Noel Young Wines and others


国際的な取扱業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

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