ARTICLEワイン記事和訳本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

生まれ変わるグルナッシュ&ガルナッチャ 7 Nov 2020

354 b.jpg最高の新星ワインの作り手は誰か?価格帯の幅もかなり大きいが・・・。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

先日南オーストラリア、マクラーレンヴェールの今流行のグルナッシュから作られたワインを12本テイスティングし終わったところで、友人のジェームス・ハリデーが1990年に著したオーストラリアン・ワイン・ガイドでグルナッシュについて彼がなんと書いていたのか見てみなくてはと思った(ハリデーはオーストラリアで最も広く知られ、最も経験豊かなワイン・ライターであり、実質的にオーストラリアで作られるすべてのワインを評価対象とし毎年出版されていたハリデー・ワイン・コンパニオンの責任者の座を82歳にして降りたところだ)。

この網羅的な本の巻頭にはモンティリスなどのように無名なものから、その故郷であるブルゴーニュではもはや栽培されておらず、オーストラリアの特にグレート・ウェスタンでグローリーと改名された品種までを含む116の品種名が並んでいる。だがそこにグルナッシュの名前はない。当時オーストラリアでは全くその品格を認められておらず、安価な酒精強化酒の原料としかとらえられていなかったためだ。

ところが、今回のオンライン・テイスティングに添付された、洗練されたフルカラーのパンフレットで私が目にしたのは「グルナッシュはマクラーレンヴェールの秘密兵器であり、オーストラリア最高の品種であるだけでなく、ローヌのそれに全く引けを取らない。」というジェームス・ハリデーのコメントだ。

長年にわたり、グルナッシュはフランス南東部にある南ローヌとプロヴァンスだけに関連付けられてきた品種だ。シャトーヌフ・デュ・パプ、ジゴンダス、ヴァケイラス、コート・デュ・ローヌを含め、ローヌ南部の多くのアペラシオンや、本来色の薄い品種であることから、現在世界を席巻しているプロヴァンスのロゼの主要品種だ。典型的な南ローヌの赤は濃厚で力強い。シラーやムールヴェードルなど色の濃い品種とブレンドしているためスパイシーで色が濃く、豊潤だ。

一方スペインはその地でガルナッチャと呼ばれるこの品種をフランスと同じぐらい栽培しており、スペインの新星ワイン生産者たちがこの品種主体の新たな赤ワインのスタイルの急先鋒となり、その名声を復活させたと言っても過言ではないだろう。今や尊敬を集めるために赤ワインの色が濃くある必要はないことから、比較的透明感が高く、フレッシュで甘やかな花(特にバラ)の香りをまとうグルナッシュ(ガルナッチャ)に、ブルゴーニュの赤ワインの安価な代替としての道が開けたと言えるだろう。

このスタイルは特にマドリードの南にあるグレドス山脈に名声をもたらした。スペインの多くのワイン産地で見つかる、非常に樹齢の高い状態で株仕立てのグルナッシュから生み出されたワインがその立役者だ。つい最近まで生産者たちは骨格のしっかりしたテンプラニーリョをガルナッチャより優れているとみなしていたため、それら樹齢の高いグルナッシュはテンプラニーリョを植えるために引き抜かれずに残っていたものに限られる。丁寧に扱われたガルナッチャは真に繊細で、その多くが安すぎるのだが、カラタユド、ラ・マンチャ、ナヴァラ、カリニェナ、カンポ・デ・ボルハ、さらにはアラゴンの一部でフェルナンド・モラMWが自身のフロントニオ・シリーズのために見出した地域のものが見つけられる。あのテンプラニーリョが優勢なリオハですら、落伍者とみなされていたガルナッチャ、特に古木のそれから作られるワインが増えているのだ。

ガルナッチャ(グルナッシュ)は他に類を見ないほどエスカユータイパなどの病害に強く、この点は世界中の生産者たちが世界のブドウ畑で非常に樹齢の高いガルナッチャを見かける理由として挙げている。近年悩まされることの多い干ばつへの耐性に優れていることも栽培上の利点だ。

この点は南アフリカ、特に無灌漑のスワートランドのような地域でこの品種の再評価が進んでいる理由の一つだ。スター生産者であるデイヴィッド&ナディア(才能ある夫婦の名前がそのままブランドネームとなっている)は干ばつと熱波をやすやすと乗り越えたグルナッシュを目にし、この品種に集中するため他の赤ワイン用品種をあきらめたほどだ。またグルナッシュはpHの低いワインを造ることができるため、安定性があり、十分な酸も保たれる。

こう書いてくればグルナッシュはカリフォルニアの多くの畑に向いているのではないかと考える読者の皆さんもいるだろう。もちろんその推測は正しい。パトリック・コミスキーが2016年に著したアメリカン・ローヌという本では「1990年代の半ばにアメリカのローヌ・ブームが始まると、生産者たちはその時点でカリフォルニアに植えられていたローヌ品種の調査を真剣に始めた。すると、グルナッシュは彼らの周囲どこにでも存在していたということがわかり、驚いた。」と書かれている。この品種はラベルに記載されることはめったにないが、その代わり安価なワインの原料として、ブドウの本質的な性格がわからなくなるようなほど高い収量で使われていたのだ。

ボニー・ドゥーンのランドール・グラハムはカリフォルニアのグルナッシュを積極的にほめたたえた最初の一人であり、モントレーにある彼のクロ・デュ・ギルロイは「世界のニンニクの中心地」産という独想的な肩書がつけられている。現在はカリフォルニアのどこでもグルナッシュの個性を表現したワインは見つかるが、特にシエラ・フットヒルズやセントラル・コーストなどが注目だ。

イタリアではグルナッシュはほぼサルデーニャ島だけで栽培されており、カンノナウとして知られる、最も栽培面積の大きい品種だ。サルデーニャ人とスペイン人たちはどちらがこの品種を先に栽培していたのかについて激しい論争を繰り広げているが、サルデーニャ島でみつかる、透明感のある新星のスタイルで作られるアントネッラ・コルダのようなワインを見ればその答えは明らかだろう。

ではオーストラリアのグルナッシュはどうだろうか?グルナッシュの近代的な盛り上がりという意味では比較的遅れを取っていたため、オーストラリアのワインメーカーたちがグルナッシュと真剣に向き合い始めたころには、小型の新樽を用いて熟成を試み、グルナッシュは大型の樽やコンクリート・タンクを好むと見出した先駆者たちから学ぶことができた。他の産地同様、彼らも梗を発酵槽に一定量加え、ワインに生き生きした風味を与えることが多い。中でもオーストラリアのマクラーレンヴェールは最もグルナッシュに注力するようになった地域であり、グルナッシュに向いた砂質土壌に多くの古木が見られることもその理由の一つだ。

私はハリデーになぜ彼の1990年のリストにグルナッシュがないのか尋ねてみた。その理由はなかったが、彼はこの品種がオーストラリアで安い酒精強化酒の原料から国で最も価値のある辛口ワインの原料へと再興しつつある面白い証拠をメールで示してくれた。今年グルナッシュの平均的なブドウ価格は1トン当たり1209オーストラリアドルで、他のどの品種よりも高い。彼によればこの名声の回復はワイン審査会での特定のカテゴリ、例えばジミー・ワトソン・トロフィーを(2016グルナッシュで)取得したターキー・フラットや、(マクラーレンヴェールの優れたサブリージョンであるブリューイット・スプリングス(Blewitt Springs)が認められたこと、そしてアルコール度数を16%から14.5%にまで引き下げたことなどが要因だと考えられるそうだ。

残念なことにこの品種はその個性を十分に引き出すためには潜在アルコールをかなり高くせざるを得ない。だが今回テイスティングした12本のマクラーレンヴェールのグルナッシュのうち2本は14%を下回り、非常に美味しくもあった。もっともアルコールの低かった13.5%のものは友人であるイギリスのMW、ジル・クックとスコットランドのインポータ、ファーガル・タイナン(Fergal Tynan)が作ったシスルダウンのワイン3本のうちの1本だった。彼らは「オーストラリアのグルナッシュの権威」となることを目指してきたその探求の道で、スペインのガルナッチャに触発されたことを認めている。

不思議な点は、この新しくデリケートなスタイルは、そのフランスの中心地である南ローヌで見つけることが非常に難しいことだろう。


美味しいグルナッシュ&ガルナッチャ

Paniza, Terrenal 2019 Vino de España 14.5%
£6 Marks & Spencer

House of Dreams 2019 Swartland 13.5%
£9 Marks & Spencer

Los Cardones, Estancia Tigerstone 2018 Salta 14%
1,030 pesos Ozono Drinks, Buenos Aires

Frontonio, a range of Garnachas IGP Valdejalón
From £15 Winebuyers

Bernabeleva, Navaherreros 2017 Vinos de Madrid 14%
£15.19 Gauntleys, £19.99 Hay Wines, Thorne Wines, £21.99 Selfridges

Malmont 2015 Côtes du Rhône 13.5%
£19 Stannary St Wine Co

Sierra Cantabria 2016 Rioja 15%
£16.65 Exel Wines, £18.85 The Great Wine Co

Verum, Ulterior Parcela No 6 2017 Vino de la Tierra de Castilla 14.5%
£19.95 The Great Wine Co (yesterday's wine of the week)

Carsten Migliarina 2017 Wellington 13.5%
£19.95 Yapp Bros

David & Nadia 2019 Swartland 13.5%
£120 per case of 6 ib Justerini & Brooks

↓ヴィンテージ違い


Birichino, Besson Vineyard Old Vines 2018 Central Coast 14%
£24.50 Vinoteca, £27.95 Field & Fawcett, £28.99 Majestic, £29.50 Butlers Wine Cellar

↓ヴィンテージ違い


Ministry of Clouds 2018 McLaren Vale 13.9%
£33 RRP Master of Malt, D Vine Cellars, Elicité, Eight Stony Street, The Good Wine Shop, Theatre of Wine, Red Squirrel Wine

S C Pannell, Old McDonald 2017 McLaren Vale 14.5%
£40 RRP Cru, VINVM, Exel Wines, Lay & Wheeler

Thistledown, This Charming Man 2018 McLaren Vale and Thistledown, Sands of Time 2018 McLaren Vale both 14.5%
£44 RRP Noble Green, Hedley Wright and, by the case, The Fine Wine Co; imported into the US by Southern Starz

Whitcraft, Stolpman Vineyard 2018 Ballard Canyon 13%
£48 The Sorting Table (an online retailer launched recently by Ben Henshaw of Indigo Wine), $39.99 Apex Fine Wine, NC

Yangarra, High Sands 2017 McLaren Vale 14%
£86 RRP imported into the UK by Boutinot, many stockists in Australia

↓ヴィンテージ違い


テイスティング・ノートはMcLaren Vale Grenache todayを、国際的な取扱業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

原文