ARTICLEワイン記事和訳本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

白ワイン、今飲むべきか、飲まざるべきか  6 Feb 2021

362.jpg先週は今飲むべき赤ワインのヴィンテージについて書いた(和訳)が、今週は熟成に値する白ワインについて書こうと思う。この記事のやや短いバージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

ワインセラーや個人のワインコレクションで白ワインが赤ワインより多いことはほとんどないだろう。ただ、例外としてドイツは考慮に入れてもいいだろう。彼らの白ワインは生産量でも圧倒的に赤ワインをしのぐし、長期熟成の可能性については絶大な実績を誇るからだ。

ドイツの代表的な品種であるリースリングは私の経験上、「不死」と言えるほど長命なワインを生み出す。先週抜栓して比較的涼しい場所に置いておいたリースリングが十分に楽しめるというだけでなく、リースリングのワインはボトルの中で何十年も発達を続ける。私が現在心地よく飲んでいるのは1980年代と1990年代のリースリングだ。時間が経つにつれワインは辛口に感じるようになる。そのためシュペートレーゼのように、作られた時点では自然の糖が比較的明確に感じられたワインが10年から20年を経た今、ほぼ辛口に感じられ、食前酒にふさわしいものとなっているのだ。そして、そのワインを生み出した畑のテロワールが昇華したようなニュアンスが味わいの中でどんどん増してくる。アルコールの低い代替品として、スパークリング・ワインの代わりにもいいのではないだろうか。われらがドイツ専門家、マイケル・シュミットが書いた今飲むべきドイツのヴィンテージも参照のこと。

リースリングは大量市場向けものですら、産地に関わらず他の品種で作られたワインより遥かに長命なものが多い(実際ドイツだけではなくアルザス、オーストラリア、そしてオーストリアで素晴らしいワインが作られている)。スーパーマーケットで販売されているような白ワインはすぐに飲むべきものというのが定石だが、リースリングに関しては私自身1年以上置いておくことになんの不安も感じない。

ロゼワイン同様、ソーヴィニョン・ブランは若くして飲むべきワインの代表だ。比較的安価なものはその主たる魅力であるアロマや果実味が失われてしまう前に楽しむべきであることは間違いない。しかし、中には、特に樽熟成を経て洗練されたテロワールを豊かに表現するサンセールやプイィ・フュメのように長期熟成向けにデザインされたものもある。

ロワールと南アフリカで主に作られているシュナン・ブランも、それほど熟成が早く進まない品種だ。フランスの南西地方にあるジュランソンで作られるプティ・マンサンも然り。これらが長命な理由は恐らく、リースリングのようにシュナン・ブランもプティ・マンサンも比較的酸が高いことだろう(ソーヴィニヨン・ブランも酸は高いのだが、価値のあるソーヴィニヨンの香りは長くは続かない)。先日私は缶入りのシュナン・ブラン2019(コッパー・クルー)をテイスティングしたが、2年が経過しているにもかかわらず、まったく衰えを見せずに生き生きとしていた。最近タナーズ(Tanners)が1本たった7.5ポンドで販売しているルーマニアのフェテアスカ・レガーラ2017もそうだ。このワインには熟成を進行させる酸素をほとんど遮断するスクリューキャップが使われていた。

長期熟成の価値がある白ワインの一つは、有名なボトリティス・シネレア、別名貴腐菌によって糖が凝縮された甘口のワインだろう。貴腐菌は完熟したブドウについてその水分を奪い、表面をカビで覆うことでブドウに魔法をかけるのだ。本当に最高品質のソーテルヌはリースリングよりも長命だが、その理由の一つはリースリングに比べてアルコール度数が高いことだろう。2014年、誕生日のディナーの最後に私はちょうど100年目を迎えたシャトー・ディケムを楽しんだのだが、それはまだ生き生きと活力に満ちていた。さらにここ数年で楽しんだその他の1920年代のソーテルヌも間違いなく素晴らしい状態だった。

甘口の白ワインが長期熟成可能かどうかはそれらがどう作られたかによるように思える。ブドウが凍結することによってできるアイスワインは貴腐のついたブドウで作られたものほど長命ではない傾向にある。

最も大きな疑問符が付くのはあらゆる白ワインの中でもっとも広く知られている、シャルドネで作られたものだろう。かなり大雑把な言い方だが、シャルドネは上述のワインに比べてややアルコール度数が高く、やや酸が低い。さらに樽で熟成されることでリースリングなどよりも多くの酸素にさらされており、比較的熟成が早い傾向にある。例えばほとんどのアメリカのシャルドネはリリース時点で飲み頃だ。

一方、世界で最も偉大な白ワインの代表はシャルドネから作られる白のブルゴーニュだろう。ミレニアムを祝うため、幸運にも飲むことができたドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティ1978モンラッシェ以上に見事な辛口の白ワインを私は思い出せない。

しかしながら、白のブルゴーニュは1990年代に作られたものが数年の熟成を経ただけで褐色になり、果実味を失う現象が見られたことでその名声に大きな打撃を受けた。いわゆるプレマチュア・オキシデーション、あるいはプレモックスと呼ばれる現象だ。ブルゴーニュの生産者たちはこの問題を解決するために最善の努力をしているが、私のようにワインの飲み頃を提案する仕事をしている人間は強く警戒せざるを得ないのが実情だ。

プレモックス前の時代、私は自信をもって最高品質のブルゴーニュ白は20年ほど熟成が可能だとしていた。最近では10年と提案することすら危険と感じることもある。また、5年熟成した白のブルゴーニュと10年熟成したものの品質の違いは同等のリースリングに感じるほどではないと感じている。シャルドネが瓶内熟成によって獲得する複雑さはリースリングよりも少ない(もちろん、このような大雑把な一般化は危険でもあるのだが)。ちなみに私は先日クエルチャベッラ・バタールの作る、トスカーナでは珍しいシャルドネ2017を大いに楽しんだことは付け加えておこう。

その中で、古典的な例外はシャブリだ。ブルゴーニュの遥か北に位置し、シャルドネで作られるそのワインは伝統的に樽よりも酸に依存しており、ボトルの中で素晴らしい進化を遂げる。40年を経たものでも楽しめた経験がある。

近年は赤ワイン同様に白ワインの生産者たちも、かつてより遥かに早く楽しめるように白のブルゴーニュを作っていることも指摘しておこう。私自身のセラーにも多くの白のブルゴーニュが眠っているのだが、実は実験的な意味もある。ただ、私がしたことを誰かが真似したとしたら、きっと罪悪感にさいなまれるだろう。つまり、これまでに2019のブルゴーニュを300本ほど楽しくテイスティングしたのだが、そのほとんどは現在飲み頃だった。

このことはソーヴィニヨン・ブランに少しのセミヨンをブレンドして作られる白のボルドーにも当てはまる。じつはここの所大量の2018ボルドーを赤白両方テイスティングしている。赤ワインは比較的最近瓶詰めされたもので、2019年の4月にカスク・サンプルをテイスティングした時点よりも評価を適切にすることができると思われる。だが、瓶詰の遅い赤ワインに合わせて2018のヴィンテージがようやく商業的な流通経路に乗った白ワインが、かなりの確率でそのピークを過ぎていた点は衝撃的だった。

白ワインがこれほど早く熟成してしまうのであれば、赤ワインと同時に白ワインをリリースすることは不利益になると言わざるを得ないだろう。私はミシェル・シャプティエが先日、最新のシングル・ヴィンヤードのワイン、セレクション・パーセレールを紹介した際、この点を彼に指摘したことを思い出した。白のローヌは特に、赤ワインよりも熟成による進化が遥かに早いにもかかわらず、赤ワインに合わせて出荷を待たなくてはならないのである。少なくともプリムールで提供される多くのブルゴーニュの白については赤ワインよりも瓶詰めも出荷も早いため、消費者の下へ届くまでにピークを過ぎてしまうリスクが低いと言えるだろう。

以下にイギリスの主要なワイン商が、人気が高く非常に魅力的な2019のブルゴーニュをどのように出荷するのかをまとめた。

ブルゴーニュの出荷はいつか


私は赤白両方を出荷する予定のある以下のイギリスのワイン商に質問を送ってみた。特に記載のない限り白ワインは今年の春から初夏にかけて、赤ワインは秋に、真夏の暑さを避けて出荷するとの返答だった。彼らのほとんどは、赤白両方を生産者から購入する場合には秋まで出荷を待つと話した。これらはGoedhuis, H2Vin, Howard Ripley and Lay & Wheelerも同様だ

Berry Bros & Rudd
生産者の中には白ワインの瓶詰めが遅く、春に出荷が間に合わないため秋になることもある。

Corney & Barrow
生産者は5月から6月に出荷するので、夏の暑さを避けて10月から11月になる。

Haynes Hanson & Clark
上記の通りだが、オリヴィエ・ルフレーヴ・フレールのものは年3回出荷する。ただし、ブレグジットによって変更になるかもしれない。

Jeroboams
最近は瓶詰めが早くなる傾向にあるためシャブリとコート・ド・ボーヌは春に出荷できる。

Justerini & Brooks
主に10月と11月だがマコンとコート・シャロネーズの一部の白は春に出荷予定。

Lea & Sandeman
瓶詰めの早い生産者は4月から、ほとんどは秋から、そして瓶詰めが遅い生産者のワインは2021のクリスマス以降。

Montrachet
顧客はプリムールを2回のタイミングで受け取る。1回目には白と、軽い赤が含まれることがある。

Stannary Wine
ブルゴーニュからの出荷は一年中冷蔵車を使うので熱波の心配は不要。

Tanners
生産者がリリースにふさわしいと判断したら出荷し、倉庫のスペースを確保するためできるだけ早く発送する。

1000本以上のブルゴーニュ2019のテイスティング・ノートはこちらから。

(原文)