日曜日の早朝、カリフォルニア州北部は1989年以来最大規模の地震に見舞われ、その震源は世界有数の優良ワイン産地であるナパ・ヴァレー南部にあるナパの町の目と鼻の先だった。協調精神と現実主義を貫くことで有名なナパのワイン産地ではその言葉通り、地域一丸となって迅速に対応し、多くの援助の手が差し伸べられた。
イギリスでは祝日だった昨日一日の間だけでも、様々な報告が漏れ聞こえてきた。ブルゴーニュのドメーヌ・ドゥジャックのジェレミー・セイス(Jeremy Seysses)は彼の妻でワインメーカーでもあるダイアナ・スノウデン(Diana Snowden)の妹がナパ・ヴァレー在住で、「目が覚めるたら家じゅうの物が床に散乱していて、そのほとんどが壊れていたし、正面玄関のドアは開かなくて、建物の構造自体がダメになっちゃったみたい。もう、うすら寒くて曇りがちなこの天気に文句を言ってる暇はないわ。アメリカ人は今立ち上がる力を試されているのよ。」という彼女のコメントを寄せた。
サン・フランシスコを拠点とする樽ブローカーのメル・ノックスは当サイトのフォーラムにも頻繁に投稿してくれているが、彼は樽のかかったカリフォルニアのシャルドネのイメージの再構築するキャンペーンからしばらく離れ、こうコメントしている。「今は地震の心配をすることが先決だ。うちのスタッフの1人も家を失って、立て直しには15万ドルかかると言われている。地震の断層が彼らの土地を通っていることを見ることができるらしい。彼女の夫はヘスのワインメーカーで、ヘスは3万ガロンものカベルネを失っているんだ。」
「震源地はカーネロスで、セインツベリーから2マイル、ブシェーンから1マイルの位置にあり、ウヴァッジョが作られている場所です。トレフェセンの壁は歪んでしまったし、たくさんのワイナリーから大量の樽が床に散乱している写真がメールで送られてきました。」
トレフェセンは歴史的なワイナリーで、ナパ・ヴァレー南部オーク・ノール地区で最も価値のある古い建造物の一つを所有している。その彼らが報告と写真を送ってきた。「マグニチュード6.0の地震が日曜の午前3時20分にナパを襲い、ナパ・ヴァレーの最も象徴的なワイナリーの一つであるトレフェセン・ファミリー・ヴィンヤードの受けた被害が明らかになりました。1886年建造で米国国家歴史登録材に認定されている三階建ての木造ワイナリーは、この地震の大きな衝撃に耐えました。」
「樽はひっくり返り、ボトルや機材、家財などの破片は敷地じゅうに散らばっていますが、幸いなことに地震発生時、従業員は誰一人ワイナリーにはいませんでした。近代的な設備は転倒はしたものの故障はなく、すぐに稼働できると思います。来週ぐらいには収穫も始まりますしね。収穫開始が極めて早まるという予測に反して、最近は日中の温度が低いためブドウの成熟速度が遅くなっています。これは機材を元に戻し、タンクをラインに戻すために奮闘しているスタッフにはよいニュースです。」
「生産棟の片づけは今週も続きますが、破砕はすぐに始められるでしょう。ただワイナリーの歴史ある建物の再公開時期はまだ決まっていません。歴史的建造物保存の専門家が破損具合を検査し、今後の方針を決めることになっています。一方、訪問者向けサービスの閉鎖は数日で済むでしょう。再建作業を進めている間、仮設のテイスティングルームを最善な方法で構える計画が着々と進んでいますからね。訪問者は大歓迎です。だって2014年のブドウの収穫を見ながら上質なワインを楽しみ、歴史的なワイナリー再建の過程まで見られるんですから。トレフェセンはファー・ニエンテ、イングルヌック、グレイストーンと並んで「ビッグ・フォー」と言われるワイナリーの一つですが、これらは有名な航海士、ハムデン・マッキンタイアーがデザインした建物です。トレフェセンはその4つのうち唯一の木造建築ですが、1906年、1989年、2000年の地震、特に最後のものは震源地が非常に近かったにも関わらず全てを耐え抜いているのです。」
「ワイナリーの社長であるジョン・ルエル(Jon Ruel)は『地震が来ても問題ないタイミングというものはありませんが、母なる自然はそれでも、私たちを気遣ってそのタイミングを選んでくれていると思わずにはいられません。今週はちょうど瓶詰が終わり破砕を始める前のはざま期でした。2012の赤と2013の白は最近すべて瓶詰し、ワイン・サービス組合に保管のために送ってしまったところで全部無事でしたし、2013のカベルネ・ソーヴィニヨンはラッキングを終えたばかりで、木の樽からタンクに移してありました。ちょうど地震の前にね。大きなステンレスタンクは破損を免れたし、基部から外れてしまったタンクもありましたが、ワインを失うことはなく全て他のタンクに移すことができました。生産棟と歴史的建造物にあった樽も、散らかり方はひどいものですが、ほとんどが空でした。』と述べています」
「そして彼はこう続けました。『我々は農業に携わる者として常に自然の振る舞いには謙虚であるし、与えられた試練を受け入れるために必死に努力しています。私は今回、迅速かつ熱意をもって結集した我々のチームを誇りに思っていますし、トレフェセン・ファミリーがこの伝説のブドウ畑とワイナリーに捧げる想いに改めて深い敬意を示します。』」
(原文)