この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。私がこのボーヌで有名なオテル・デューの写真を撮ったのはニュイのテイスティング後のツアーでのことだった。私は下の写真にあるオスピス・ド・ボーヌのベッド(もちろん今は使われておらず、その役割は近代的な病院が担っている)に横になってみたくなった。熟成の評価を伴うテイスティング・コメントについては「Burgundy 2005s revisited」を参照のこと。
ご存知の通り、私はJancisRobinson.comの一員であることを常にとてもありがたいことだと思っている。しかし7月の終盤にボーヌの街の灼熱の空気から逃れたブルゴーニュワイン委員会のエアコンの効いたテイスティング・ルームで、輝かしい2005ヴィンテージの64種のワインの香りを確かめた時ほど、それを強く感じたことはなかった。
2005ブルゴーニュの赤は正当に高く評価され、パープル・ページの会費を払う価値のあるものと考えてくれるような人々に広く購入されたが、若いうちはその命綱でもある固いタンニンと魅力的に熟成した果実味が圧倒していた。一方、非常に希少で(その再来と言われる2009や2010ほどではないにしても)高価だったため、コレクターたちは当然ながら飲み頃が訪れるまでボトルを開けたがらない。
そのため弊サイトのメンバーズ・フォーラムからの(2005の現状を確かめて欲しいとの)頼みで、私は2005ブルゴーニュの聖地への遠征軍に加わるため自腹を切ることにした。ブルゴーニュワイン委員会が快く準備してくれたテイスティングに備え、私は自分のセラーにあった2005の何本かをテイスティングしたが、正直なところ数少ない最高のワインのうちの1本、ドメーヌ・ジョルジュ・ルーミエのボンヌ・マールはどうしても開けることができなかったし、実は辞退したにもかかわらずクリストフ・ルーミエがボーヌの委員会事務所にそのワインを1本送ってくれたと知った時には胸が躍ったことをここに告白しなくてはならない。
これらのワインが大きな注目を集めていることから、その状態を味わいと骨格とあわせて注意深く確認したいと考え、私はこのテイスティングに2日かけることにし、木曜日にはコート・ド・ボーヌの30本に満たない赤の、翌日には35本を超える凝縮感の強いコート・ド・ニュイの赤のテイスティングを行った。
ブルゴーニュワイン委員会の技術専門家、エルヴェ・ビアンキ(Hervé Bianchi)がこのテイスティングを運営し、用意周到なワインレッドのボトルカバーを使い我々にはそのワインがどこの村で作られ、村名なのか、1級なのか、あるいは特級なのかだけがわかるようにしてくれた。私は村名の群を、コート・ドールをおおよそ北上する形でテイスティングした。フィサンやマルサネといった最北部の村は他の南部の物より軽めであることが多いため例外としたのだが、フィサンのクロ・ド・ラ・ペリエールは群を抜いて優れており、新しい所有者であるベニーニュ・ジョリエ(Bénigne Joliet)はそのデビュー・ヴィンテージをして、壁で囲まれた畑を1級から特級に昇格させるのに彼が熱心である理由を見せつけた。
エルヴェがは私に白ワイン用の白いボトルカバーは要らないのかと尋ねたが、私は知り合いのブルゴーニュ愛好家の多くは非常に多くのワインが影響を受けたプレマチュア・オキシデーションを恐れ、だいぶ前に2005のブルゴーニュ白を飲んでしまっていているのだと説明した。いずれにしても2005ブルゴーニュの白は赤ほど並外れたヴィンテージではない。
若いうちにテイスティングした2005赤のほとんどは無愛想でとっつきにくかった。そのため最近(主にボーヌで)テイスティングしたワインはそのほとんどが喜びをもたらすワインに変わってきたと知って心が躍った。タンニンは和らぎ、果実味が絡み合って非常に心地よい味わいを生み、十分な酸が食欲をそそる一方でしっかりと凝縮感も感じられるのだ。
事実、コート・ド・ボーヌのワインの中でまだ開けるのを待つよう勧めるものは3つ(コルトンのグランクリュ3本以外に)しかなかった。その3本は野心的なベルナール・エ・ティエリー・グラントネイ(Bernard et Thierry Glantenay)のヴォルネイ・サントノ、ビトゥーゼ・プリュール(Bitouzet-Prieur)のヴォルネイ・カイユレ、そして特にワインが開くペースが非常にゆっくりなことで有名なミシェル・ラファルジュ(Michel Lafarge)のヴォルネイ・カイユレである。(かなり軽く、早熟な年だった2002の彼のヴォルネイ・クロ・デ・シェーヌはこの二日後に飲んだが非常に美しく熟成していた)。
多くのブルゴーニュ愛好家はポマールがヴォルネイよりも熟成が遅いと予想するだろうが、今回サンプルを送ってきた生産者はあえて比較的早く熟したとわかっていたポマールを選んだようである。
このことは私がテイスティングした2005コート・ド・ニュイの村名および1級にも当てはまると言えそうだ。私はもう少し熟成させた方がよいと思うワインに取り掛かる前に、生産者たちが親切にもテイスティングに提供してくれた9つの特級(と名誉特級とも言えるクロ・サン・ジャック)のめまいのするような高みから下界に降りてくる時間を必要とした。
私は習慣的にテイスティング・ノートには(精密さに自信がないので実は気が進まないのだが)スコア(20点満点の)だけではなく飲み頃の範囲も提案することにしている。最高のワインを特徴づけるのはそれがどれだけ先に延びるかということだ。例えば、ルーミエのボンヌ・マールだとすると、今テイスティングして既に文句なく美味しいと同時に、更なる向上が見込まれ、偉大な熟成をあと20年は楽しむことができるという具合だ(私の提案する飲み頃は2015-2035で、スコアは20点満点中19点だった。私にしてはめずらしく高い点だ)。
これらのワインの色は多様だが、ピノ・ノワールを基本としたワインにしてはまだ比較的濃く若々しい印象だ。ブルゴーニュ赤がその不安定さと当たりに巡り合う確率の腹立たしいほどの低さで悪名高いことを考慮すると、今回の66本のワインは全て非常に成功していると言えるだろう。私が20点満点中16点以下を付けたワインはこのテイスティングではサントーバンだけだったし、他にはがっかりさせられたルイジャドのボーヌ、クロ・デ・ズルシュール(Clos des Ursules)、ピエール・ギュイモ(Pierre Guillemot)の少し野暮ったいサヴィニー、フジュレイ・ド・ボークレール(Fougeray de Beauclair)のやや固いマルサネ、レ・デシュ・ド・ロンジュロワ(Les Dessus de Longeroies)などがあり、非常に変わっていたのがニュイサンジョルジュの1級畑、クロ・デ・ポレ・サン・ジョルジュ(Clos des Porrets St-Georges)だった。R・デュボワ(R Dubois)のものだが、イギリスで1960年代に売られていたような「アルジェリア産のブルゴーニュワイン」のような味がした。ただしこの生産者の単純なヴィラージュのニュイは全く健全だった。少なくとも2本目は。1本目は今回のボーヌでのテイスティングでひどいブショネだった2本のうちの1本だった。
全体として、私は2005のブルゴーニュ赤には2005のボルドーと同じぐらいワクワクしている。そして私の「5のつくヴィンテージ」ルールもまだ破られていないこともうれしい。FT Liveで素晴らしい「FT Fives Wine Dinner」の詳細をぜひ確認してほしい。10月19日(月)にニューヨークで、11月23日(月)にはロンドンで、ヴィンテージが5で割り切れる偉大なワインだけが提供されるディナーだ。
これらすべてのワインについての詳細なテイスティング・ノートも参照のこと。
テイスティングした中で最高の2005ブルゴーニュ
以下は全て20点満点中18.5以上を付けたものである。
Dom Rossignol-Trapet, Grand Cru Le Chambertin
Camille Giroud, Grand Cru Latricières-Chambertin
Dom Armand Rousseau, Grand Cru Charmes-Chambertin
Ch de la Tour, Vieilles Vignes Grand Cru Clos de Vougeot
Dom Georges Roumier, Grand Cru Bonnes Mares
Dom Georges Roumier, Premier Cru Les Cras, Chambolle-Musigny
(原文)