今日はオックスフォード・コンパニオン・トゥ・ワインの正式な出版日である。もう数週間前からこの本が出回っていると思ってしまっている人がいても無理はない。我々は長いことこのサイトやwww.oxfordcompaniontowine.comで取り上げてきたのだから。だがたとえあの巨大なアマゾンでも、公式出版日の取り決めにしたがっているはずであり、実際の発送は今日から行われることになっている。
2006年に第3版のコンパニオンが出版されて以来、改訂版の発行にはこれまでになく長い時間がかかった。この本は驚くほど、そして個人的には大変喜ばしいことに、世界中のワイン愛好家やワイン学習者の暮らしに大きな意義をもたらしている。実際WSETの最高位資格であるディプロマ受験生にとって欠かせない参考書でもある(出版社であるOUPがWSETに今年の入学者数に応じた出版前からの販売委託を特例として許可していたのも頷ける)。そして、シンガポールで尊敬を集めるワインの大家、ポー・チャン(Poh Tiong)は昨日親切にも彼のメーリングリストのメンバー全員に向けて「ワインライターですら参照し、尊重する書籍」だと述べてくれた。
副編集者であるジュリア・ハーディングMWと私はこの100万語以上に上る本を更新するために多忙な日々を過ごしてきた。ワインの世界は2006年からは大きく変化を遂げ、私たち自身、4000以上に上るアルファベット順に並んだ項目(アッボカート(abboccat)からチマーゼ(zymase)まで)のかなりの部分、60%以上を見直し、時には完全に書き直さなくてはならないことに気付いた。今回は300の新しい項目(アクセス・システム(access system)からゼレン(Zelen)まで)も加わった。
ご想像の通り、これは一朝一夕にできる仕事ではない。我々はゆうに2年もの歳月、ジュリアにいたっては更に長い期間を費やした。彼女は地図の更新および栽培と醸造に関わる全ての項目の責任者としてこれ以上に無い科学的な情報提供者とのネットワークを構築し、最終段階では前職のプロの編集者としての経験を生かし細部の詳細な検証も行ってくれた。
もちろん、ワインと同様速いスピードで変化していく膨大な参考文献を考えると、内容が古くなってしまわないよう、あまり長い時間をかけたくはなかった。実際印刷前にスロバキア(いまや中国ではないのだ)の項目のかなりの部分を見直すことができた。初版の出版には5年を費やした。なにしろゼロから始めて二段組み800ページを埋めることになったのだから。初版がようやく世に出たのは1994年、第2版が1999年だったが、家族には「4人目の子供だね」と言われてしまった。
言うまでもなく、今回のコンパニオンにも著名な歴史家から第一線の科学者、特定の国あるいは地域の専門家まで、187名の専門家の多大な協力が寄せられ、彼らの多くが自身の記事を大きく更新することになった。歴史家の中には新発見によって自身の記事を見直さねばならない人もいたし、第一線を走る権威であるパトリック・マクガヴァン(Patrick McGovern)はいわゆる栽培の根本となる記事7000語を完全に書き換えた。また、ワインに興味を持つものにとってその重要度が増してきた地質学に関する全ての項目もアレックス・モルトマン(Alex Maltman)教授によって完全に書き換えられた。彼はザ・ワールド・オブ・ファイン・ワインへ定期的に寄稿している人物である。
他にも我々が恩恵を受けたのはエネルギッシュな新星でイタリア関連項目のほとんどを更新してくれたウォルター・スペラー(Walter Speller)、オーストラリアのヒュオン・フック(Huon Hooke)、ポルトガルのサラ・アーメド(Sarah Ahmed)、ドイツとオーストリアを同様に大きく書き換えてくれたデイヴィッド・シルクネヒト(David Schildknecht) がいる。ご想像に難くないと思うが、2006年に比べて東ヨーロッパは全体的に把握が難しい。 だが専門家であるカロライン・ギルビーMWのおかげで、その項目も全て更新することができた。アメリカン・ワインの共著者であるリンダ・マーフィ(Linda Murphy)同様にアメリカのワイン産地に関して貢献してくれた。
先週末私は記事1本、「Nine years of new words (訳文)」をまるまる使って特に目を引く最新の項目、例えばワイン生産を行っている全く新しい国などを取り上げた。それら国は多くの場合が気候変動の影響を受けている(気候変動の項目自体も劇的に見直された)。しかし、ワインに興味のあるみなさんでこの最新版の必要に疑念をもつ人には、この言葉だけは見てほしい。ミネラリティ(minerality)だ。今や大流行のこの概念は2006年当時ワイン・テイスィングの用語として重要視されていなかったという事実は意外ではないだろうか。だが、少なくともこれでワインの世界の変化がどれほど速いかがはっきりするだろう。
確かにひいき目がないとは言えないかもしれない。だが、もし旧版を手に入れるほどワインに十分興味を持っている人ならこの最新版を間違いなく必要とすると私は確信している。www.oxfordcompaniontowine.com には世界中どこからでも書籍あるいはデジタル版を入手する媒体へのリンクがある。デジタル版は項目間をリンクで快適に行き来できる仕組みが完璧に機能するよう現在微調整中で、多くのデバイスで使えるものが来週末には提供できるはずである。
前回は第3版をJancisRobinson.com.に反映させるまで6か月もかかってしまった。今回はパープル・ページのメンバー限定で年内にオンライン・バージョンが見られるようにしたいと考える。今回は初めての試みとして、重要な項目には私が昨年4月に録音した音声データを添付することを計画中だ。
サンプルページの閲覧と旧版のレビューはwww.oxfordcompaniontowine.comを参照のこと
(原文)