同日更に遅い時刻: マスター・オブ・ワイン協会がようやく輝かしいMW全員のリストを公開した。
(訳注;個人名のカタカナ表記は省略させていただきました)
Marcus Ansems はアメリカ生まれのワインメーカーで、ワインと恋に落ちたのは少年時代、地元の収穫を手伝っていた頃だった。アデレード大学を卒業し農業科学の学位(エノロジー専攻)を1997年に取得。世界中で30回以上の収穫経験を積み、ヨーロッパ、南アフリカ、オーストラリア、カナダでワイン作りに携わった。共同経営者、総責任者、チーフ・ワインメーカーとして複数のワイナリーで長年の経験があり、6件のワイナリーおよびブドウ畑の立ち上げにも直接関わってきた。現在カナダに拠点を置き妻のRachel と共に有機栽培を中心としたワイナリー(Daydreamer Wines)をブリティッシュ・コロンビア州オカナガン・ヴァレーに立ち上げた。
論文タイトル:The effects of late season (autumn/fall) frost on Okanagan Valley Syrah (Shiraz) grape and table wine composition, utilising chemical and descriptive analysis
絵画と彫刻を学んでいたMollie Battenhouseはレストランでアルバイトをして生計を立てていた。優秀な成績でジョージア州メイコンにあるウェスレヤン大学を卒業後、ニューヨークにある評判の高いレストランで働き始めた。Mollieがワインに傾倒し始めたのはマンハッタンにあるワインショップ、Joshua Wesson’s Best Cellarsでパートタイマーだった頃だった。彼女はレストラン界に戻るとTribeca Grill でヘッド・ソムリエとして勤務、その後販売業務に異動した。彼女は現在ニューヨークとニュージャージーにあるVOS Selections で販売・営業開発部長を務めている。 Mollie はマスター・ソムリエ協会でもアドバンスド・ソムリエであり、インターナショナル・ワインセンターで講師も務める。
論文タイトル:Attitudes of the NYC wine trade towards Finger Lakes Cabernet Franc
Konstantin Baumは豊富な国際経験のあるワイン商およびコンサルタントで6か国に拠点を持つ。彼の経営するMeinelese はドイツのオンライン・ワイン業で、ワイナリー、レストラン、ワイン商のコンサルタントを行う。Konstantinは卒業後いつの日かホテルのマネージャーになることを夢見てホスピテリティ業界に入ったが、すぐにホテル経営ではなくワインに目覚め、ソムリエとしてミシュラン2つ星のレストランで働くためにダブリンに移った。ワインのビジネスとしての側面に興味を持ち、ドイツのガイゼンハイム大学で学んだ後世界のワインの首都、ロンドンに移り高級ワイン取引を行うLiv-ex の営業開発部長として勤務する傍ら、マスター・オブ・ワインの冒険を始めた。2014年からドイツのバーデン・バーデン在住。
論文タイトル:Digital direct marketing for premium wineries in Germany: current use and future potential
Victoria BurtはWSETの研究開発部長で、WSETの教材の見直しや更新を担当している。 前職はMajestic Wine Warehousesの店長。2012年、WSET DiplomaでDerouet Jameson賞を受賞したことをきっかけにマスター・オブ・ワインの道に進んだ。
論文タイトル:Does glassware have an impact on the sensory perception of champagne?
Wendy Cameronは経験豊富なワインメーカー件コンサルタントでオーストラリアのヴィクトリア南東部を拠点としている。彼女はオーストラリアで最も長い歴史のある家族経営ワイナリーの一つ、ブラウン・ブラザーズ・ミラワ・ヴィンヤードの醸造責任者で、16歳の時からそこで働いていた。Wendyはオーストラリア・ぶどう栽培・ワイン醸造学協会(Australian Society of Viticulture and Oenology (ASVO))の委員の一人で2012年にASVOのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーも受賞している。数多くのオーストラリアのワイン・ショーで審査員を務め、パネル・チェアの経験もあり、オーストラリアワイン技術会議(Australian Wine Industry Technical Conference) およびアメリカブドウ・ワイン学会(American Society of Enology and Viticulture)の会議 の招待講演者でもある。
論文タイトル:A comparison of three bentonites in Chardonnay and Sauvignon Blanc: An Australian winery study
Lynne Coyle MW (アイルランド)
スコットランドで生まれ育ち、ホテル経営を修了したLynne Coyle は25年以上にわたり飲食業界で働いてきた。ワイン業界でのキャリアをスコットランドにあるオン・トレード向け代理店Forth Winesで始め、店長として小売業での経験を積み、ロンドンのOddbinsのエリアマネージャーを務めたのち、購買部長に昇進。続いてアイルランドのディアジオでも同様な役職を経験。シャンパーニュ・アカデミーの会員でもある彼女は地理、スペイン、イタリアのワイナリーのコンサルタント、国際的なワインコンクールの審査員、レディング大学での講師でもある。現在はアイルランドのO’Briens Winesでワインの専門飲料小売店を対象とした購買開発部長として働く。
論文タイトル:Ingredient labelling in wine: an investigation into Irish consumer attitudes
Dawn Daviesは代理店であるSpeciality Drinkのヘッド・バイヤーである。 彼女は以前イギリスの高級代理店Selfridgesでビール、ワイン、スピリッツのバイヤーを9年勤め、当時その独自の手腕で数々の飲料小売賞を受賞した。Selfridges に入るまでにはオン・トレードのマネージャーやソムリエとしてZuma、Boxwood,、 The Square、The Ledbury などのレストランで幅広い経験を積んでいる。
論文タイトル:Anthropological case study into the motivation behind wine gifting in a premium retail environment
Romana Echenspergerはドイツおよびスペインの高級レストランのソムリエとして 12年勤務した。2015年、ベルリンのベストソムリエに選出され、ドイツワイン1000本のワインリストを作成。 2007年から2010年にかけてドイツのベストレストランに輝いたケルンに近くの三ツ星レストラン、ヴァンドームでヘッド・ソムリエを務めた。2011年から国際レベルのワイン講師およびコンサルタントとしてドイツワイン協会のドイツワイン・アンバサダーなどの活動をしている。またワイン・ジャーナリストとして自身のワイン・コラムも執筆。
論文タイトル:Does Premium Franconian Silvaner (PFS) have enough sustainable advantages and producer support to justify its extensive vineyard plantings in the future?
Rebecca Gibbはイギリス人のジャーナリストかつ編集者で、現在はニュージーランドのオークランド在住。イギリスの若手ワイン・ライター・オブ・ザイヤーおよびルイ・ロデレールの新進ワイン・ライター賞を受賞したRebeccaはワイン・サーチャーで3年間の編集経験を経て最近新設された高級ワイン雑誌LE PANに加わった。マスター・オブ・ワインとして、自身のワイン史への情熱を追求したいと考えている。ワイン以外には好きなものはマウンテン・バイク、チェロ、ペンギン。
論文タイトル:Were the causes of the 1911 Champagne riots essentially economic?
リチャード・ヘミングはイギリス人のフリーランス・ワイン・ライターでありワイン講師でもある。彼は2008年からJancisRobinson.com に定期的に寄稿し、ワインの世界のあらゆる事象をカバーする記事やテイスティング・ノートを発表してきた。彼の記事はフィナンシャル・タイムズ、デカンター、ドリンクス・ビジネス、ハーパース・ワイン・アンド・スピリッツ、ザ・ワールド・オブ・ファイン・ワイン、ノーブル・ロットにも掲載され、オフ・ライセンス・ニュースに隔週でコラムも寄稿している。また、デカンター・ワールド・ワイン・アワードなどのコンクールで審査員を務め、企業や個人向けのワイン講座も開催。以前はMajestic Wineでイギリスの小売マネージメントを6年、ケントにあるガズボーン・エステート(Gusbourne Estate)で栽培助手も経験している。
論文タイトル:How have trends in the publication of consumer wine books changed since 1914, and how does this inform their present prospects?
Yiannis Karakasisはギリシャのアテネに生まれた。ギリシャ士官学校を少尉として卒業、パイロットや指導教官として多くの軍艦に搭乗。2011年ワインへの情熱を追求するために中佐として海軍を退役。現在はワインコンサルタント、講師、影響力の強いギリシャのワイン・ブログwww.winecommanders.com の共同設立者でもある。国際的な雑誌やウェブサイトにも寄稿。彼が最も情熱を注ぐのはフィロキセラ以前のワインとピノ・ノワール全般、バローロ、トカイである。
論文タイトル:Reasons for the rise in alcohol levels in Naoussa PDO wines
Sarah Knowleはオーストラリア、ニュージーランド、北アメリカ、オーストリアのワイン協会のバイヤー。以前はワインとスピリッツを扱うAmathus Drinksでワイン商社としての 地位を確立するために力を尽くし、購買部門を統括していた。初めてワインに興味を持ったのはオックスフォードで地理を学んでいた時のことで、大学のブラインド・テイスティング・チームに所属していた。フランスのシャンパン・ハウス、ポル・ロジェでのコンクールに勝利し、マネージメントやコンサルタントから世界中でブドウを摘むことに進路を変更した。
論文タイトル:What is the relative importance when using a member’s (amateur’s) positive review vs an expert’s positive review on sales within The Wine Society?
Eugene Mlynczykのワインへの愛はカリフォルニアで、1980年代にスタンフォード大学で学んでいる頃に生まれた。その愛は出身地であるカナダのトロントへ戻ってからさらに大きくなり、収入の一部を地元のナイアガラのワインに費やすようになった。カルペ・ディエムという格言に触発されてワインについて本格的な勉強を始め ワイン業界で新たなキャリアを積み始めたのが15年前のことだ。彼は現在コンステレーション・ブランズで戦略経理部長を務め、LCBOの特別部門であるVintages を主な対象として世界中のワインを販売する責任を担っている。
論文タイトル:An assessment of retailer and sommelier attitudes toward VQA sparkling wine in Ontario
大橋健一は東京を拠点とするワインと日本酒のエキスパート。栃木県に生まれ、ワイン、日本酒、および焼酎を取り扱う山仁商店の三代目社長である。自身のコンサルタント会社、レッド・ブリッジを経営すると同時に日本最大の総合酒類小売店グループ企業、サマーソールトの取締役も務める。世界的な日本酒プロモーションの第一人者であり、インターナショナル・ワイン・チャレンジ・ 日本酒部門の審査員最高責任者でもある。独立行政法人酒類総合研究所の清酒専門評価者であり、日本酒サービス研究会の認定するマスター・オブ・サケの称号も持つ。
論文タイトル:Wine lists in quality sushi restaurants in Tokyo: the status quo and opportunities for change
Andrea PritzkerはワインコンサルタントでありWSET講師、ライター、後援者の顔も持つ。カナダのトロントで生まれ育ち、フランスのボルドーでワイン商業の学位を取得、2003年にオーストラリアのシドニーへ移住。Andreaのワイン業界でのキャリアは卸、小売り、オークションからデジタル・マーケティングまで多岐にわたり、高級ワインオークションハウスであるラングトンのオークション・マネージャーおよびヘッド・オブ・コンテンツも務めた。最近Ashton & Kingのディレクターとして、ワイン専門ベンチャーを始めた。
論文タイトル:The Australian fine wine consumer online: involvement, characteristics, motivation and associated behaviour in the fine-wine off-premise wine market
Janek Schumannはヨーロッパのドイツ語圏でフリーランス講師およびワイン・アンバサダーを務める。フライベルグのワインショップ、La Vinothèqueおよびオンライン・ワインショップ、Taste that!、ワイン・スクールとワインショップを併設したレストランDie Weinwirtschaftをドイツのリヒテンワルデで経営。複雑なワインの世界に魅了され、1992年にワインショップをオープン、2003年には全てのエネルギーをワインに注ぐため金融のキャリアを捨てた。同年オーストラリア・ワイン・アカデミーでWSET Diplomaをmeritの成績で修了。
論文タイトル:Back to the future: Determination of superior parcels within a VDP Gross Lage through a comparison of historical sources with current scientific measures
Emma Symingtonは遺伝学を学んだ後10年間ワイン業界で勤務。現在はイギリスでのワイン・オーストラリアのイベントと教育プログラムを担当。複数の国際ワインコンクールで審査員を務め、WSETの認定講師でもある。空いた時間には2014年にルイ・ロデレール・アワードの新進ワイン・ライター賞を受賞したWine Monkeysブログに投稿している。
論文タイトル:An investigation into how UK bricks and mortar independent wine merchants use websites to complement their retail shops
Tan Ying Hsienはシンガポールを拠点とするワイン・ジャーナリスト、講演者、講師。Taberna Wine Academyを経営し、テイスティングおよび講義を実施。Yingはシンガポールでのインターナショナル・ワイン・チャレンジ、香港でのデカンター・アジア・ワイン・アワードで審査員を務め、2015年シンガポールの国際ソムリエコンクールでも審査員を務めた。テイスティングおよびワインの勉強を始めたのは1983年、イギリスの大学に通っていた頃。シャンパーニュ騎士団のメンバーで、ラ・コフレイエ・シュヴァリエ・デュ・タストヴァン、コマンドリー・ド・ボルドーを取得。
論文タイトル:Clos de la Roche: the creation of a Grand Cru
大学で国際政治を学んだ後すぐにワイン、特にシャンパーニュへの情熱に目覚め、フィンランドのアルコール独占企業であるAlko Incに入社、様々な職種を経験。2006年から製品コミュニケーションマネージャーとして広報、従業員教育、ワイン講座を牽引。
論文タイトル:The effect on consumer purchasing decisions of profiling wines by the Finnish Alcohol Monopoly Alko’s Flavour Types
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同日後刻: 皆さんはなぜいつものようにMWの一覧がここに公開されないのかと思っているだろう。実は新しいMWの一人に電話でもパソコンでも連絡が取れないと言うのだ。マスター・オブ・ワイン協会が彼女に接触できない限り一覧は公開できないということなのだが、既にプレス・リリースでは少なくとも19名の新しいMWが先の5月に発表された5名に加わるとされている。これは記録的な数字だ。彼らのうち11名が女性で8名が男性(女性の優秀さときたら!)で、オーストラリア、カナダ、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、日本、ニュージーランド、シンガポール、イギリスおよびアメリカの10か国の出身者たちだ。この魔法の二文字を取得したことを既に公開しているのは元セルフリッジのDawn Davies MW、 ニュージーランド出身でル・パンマガジンのRebecca Gibb MW、ギリシャの Yiannis Karakasis MW 、ザ・ワイン・ソサイエティの Sarah Knowles MW、日本の Kenichi Ohashi MW (少しの間私も誤解していたが日本人初のMWではなかった),、ロンドンのワイン・オーストラリアのEmma Symington MW 、シンガポールのYing Hsien Tan MWがいる。
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喜ばしいことにJancisRobinson.com は4名のMWが在籍するサイトになったことをここに報告する。ワイン書籍に関する論文が認められ、リチャード・ヘミングがついに、マスター・オブ・ワインを名乗ってよいとの知らせを受け取ったのである。
ふう~!
彼は困難に直面しながらもこれ以上ないほど忍耐強かった。試験自体にははるか前に合格していたにもかかわらず、3度目の論文のテーマがなかなか認められなかったのである。我々はMW研修生の日記をこの6年間公開し続け、最新のものはなんと60回だった!
彼の最後の連載は明日掲載することにして、現在マスター・オブ・ワイン協会からの電話を待ち焦がれている皆さんの幸運を心から祈るとともに、新たなMWの名前がわかり次第ここで紹介したいと思う。