ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

142.jpg2015年11月12日 以下の記事は2014ヴィンテージに関するものであり、私が今ブルゴーニュで忙しくテイスティングしている2015ヴィンテージの、誰もがワクワクしながら収穫したものについてではない点に注意してほしい。だが2014のブルゴーニュは間もなく我々の手元に届くことになるし、高品質の2014白の中には既に流通しているものもある。そのため昨年の異常事態に関する記事を再掲するのが適切だと考えた。昨日までブルゴーニュは珍しく非常に暖かかったため、この時期でもヨーロッパ系ショウジョウバエ(おそろしいアジア系ではない)がテイスティング・グラスの周りを飛び回っていた。

2014年11月10日 ようやくローヌ、スイス、ブルゴーニュでの集中的なテイスティングの旅から戻り、ヨーロッパの不気味なほど暖かかった秋の影響でショウジョウバエがまだ猛威を振るっている事態を報告することができる。実際一番そのハエが気になったのはテイスティング・ルームで、スイスのヴァレーにある非常に洗練されたワイナリーでのことだった。そこではショウジョウバエが美しいワイングラスに絶えず急降下を続けてきたのである。そのためロマネ・コンティでオベール・ド・ヴィレーヌがグラスに入っている2012の熟成がどれほど進んでいるか2013を樽からテイスティングして確かめるよう、と地下のテイスティング・チャンバーにグラスを置いて行く提案をした時に私は不安を感じた。帰ってきたら1本何千ポンドもする液体の中でショウジョウバエが泳いでいることになるのではと思ったためだ。だが彼はそこの気温はショウジョウバエには低すぎるから大丈夫だと語り、ありがたいことに彼は正しかった。

Asian fruit fly – a 2014 pest」で指摘した通り、この新しく獰猛なタイプのショウジョウバエは最近ヨーロッパに渡来したと考えられ、大きな懸念となっている。ローヌ渓谷滞在中には誰も今年の新たな脅威、オウトウショウジョウバエ(Drosophila suzukii)について口にしなかったが、ブルゴーニュでは比較的頻繁にその名を耳にした。全員が同意するのは知らぬ間に痕跡を残さずブドウに穴をあけるこのやっかいなショウジョウバエが白ブドウにはまったく興味を示さない点だ。オベール・ド・ヴィレーヌは自身のドメーヌはこの虫の影響は全く受けていないと述べ、ハエが興味を持つのは比較的大型の房のみで、彼が「上質なピノ」と呼ぶものはそれに当てはまらないのだと語った。

また、別の話はモレ・サン・ドニのトプノ・メルムのロマン・トプノ(Romain Taupenot)から聞けた。モレ・サン・ドニは現在大規模な人事ローテーションの真っ最中で、クロ・ド・タールのシルヴァン・ピティオ(Sylvain Pithiot)の後をつい最近アクサのドメーヌ・ド・ラルロに入ったばかりのジャック・デヴォージュ(Jacques Devauges)が継ぎ、彼の後はボーヌのアレックス・ガンバルのジェラルディーヌ・ゴドー(Géraldine Godot)が継いだ。一方最近LVMHが獲得したクロ・ド・ランブレイに空きが出ることになり、ティエリー・ブルーアン(Thierry Brouin)が間もなくそこに納まる。彼らは莫大な資金を投じてヘッドハンターでも雇ったのだろうか?あるいはジャン・ギョーム・プラッツが誰かをボーヌのバーに潜り込ませ、彼らの地元での評判を調査したのだろうか?そのロマン・トプノ(彼のドメーヌは今でもほんのわずかなクロ・ド・ランブレイを所有している)によると、この新たなハエの影響で収穫を相当早めざるを得なかった生産者もいたとのことだ。

デュガ・ピィのベルナール・デュガは自身の畑はこの虫の影響を受けていないと述べたが、エリック・ルソーは一部だが影響を受けたと報告した。2014の選果台では慎重に慎重を期する必要がありそうだ。

(パープル・ページの)フォーラムに頻繁に顔を出すサイモン・ブラウン(Symon Brown)のお気に入り、セシル・トロンブレー(Cécile Tremblay)は彼女の所有する区画のうち3つで、このショウジョウバエのせいで異変が起きていると語った。そこは壁の陰になっていたり風から守られていたりしてショウジョウバエが明らかに好まない環境なのだが、私の理解が正しければ、彼女はブドウにタルクをぬると防御効果があることを見出したそうだ。

フレッド・ミュニエはこの現象に懐疑的だったし、基本的に私が先週ブルゴーニュで会うことのできたトップ生産者たちはおおむね、被害はそれほど甚大ではないとの見解のようだった。

偶然にも来週に卓越したヴィンテージである2013のローヌに関するテイスティング・ノートを発表する予定で、今月後半にロンドンでローヌ専門ワイン商が開催するテイスティングで味わうものもそこに追加する予定である。

いつもの通り、ブルゴーニュに関する報告は1月に行う。年明け早い時期にスイスのレポートも掲載する予定だ。

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