これはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のかなり長いバージョンである。
この記事に先立って公開した楽しい季節のための3種のワイン記事(festive fizz(和訳), merry reds(和訳)and cool whites(和訳))ではワインを価格の低い順に並べているが、今回とりを飾る酒精強化酒と甘口ワインの記事では甘さの少ない順、すなわちごく辛口から食欲をそそるシェリー、そして良い意味で歯がとろけそうなものまでを並べることにした。ただし、以下に記す最も甘いワインでも、そのバランスをとる酸や渋みによって後味は非常にさわやかであることは念頭に置いてほしい。また、重要な情報となりうるのでアルコール度数も記した。甘口ワインの多くがハーフ・ボトル(37.5cl)あるは半リットル(50cl)で提供されることにも注意してほしい。
毎年この時期になるとゴンザレス・ビアスが4つの最高品質のシェリーを発売する。これは特別に選ばれた、年月を重ねた樽から直詰したものだ。今年の私のお気に入りは3番目に高価で由緒ある、ゴンザレス・ビアス・トレス・パルマス・フィノ(González Byass, Tres Palmas Fino NV Sherry;50clで約40ポンド Hedonism, Cambridge Wine Merchants, General Wine Co;15.7%)だ。液体になった塩味のクルミを想像してほしい。この素晴らしく溌剌とした超辛口のワインは薄切りのハムやナッツ、ハードタイプのチーズにぴったりだろう。
もう少しリーズナブルに食欲を刺激するのであればゴンザレス・ビアス・デル・デューク・VORSアモンティリャード(González Byass, Del Duque VORS Amontillado NV Sherry;37.5clで20ポンド、Dickens House Emporium; 21.5%)がお勧めだ。トレス・パルマスより古くがっしりとした作りだが、不思議なリコリスやピーナッツのような香りから澄みきって安定した余韻へと香りがつながる。これはお祭りシーズンの食事と食事の間のちょっとしたときに一口、というのがお勧めだ。さらに安価な代替品としてはモリソンズ・ドライ・オロロソ(Morrisons Dry Oloroso NV Sherry;37.5clで6ポンド、Morrisons)を挙げておこう。
ナッツやチーズとの相性が良いが、スイーツと合わせるには辛口かつデリケートすぎるものの中でお勧めはと言えば、エンリケス&エンリケス15年ブアル(Henriques & Henriques 15 Year Old Bual NV Madeira;The Wine Society, Noel Young ほか多数;20%)だ。他に類を見ない大西洋の島での長期樽熟成を示す刺激的なこの香りが私は大好きだ。特にこのシリーズは2014年に樽から瓶詰したもので、ミディアム・ドライとミディアム・スイートの中間といった味わいだ。便利なのは抜栓後でも永遠と言えるほど長持ちすることだろう。
ポートはその甘さに大きな幅がある。グラハム・シングル・ハーヴェスト1972(207Graham’s, Single Harvest 1972 Port;ポンド、Hedonism;207ポンド;20%)は究極までに熟成したヴィンテージ表記のあるトウニーで、トフィーや刻んだ果物の皮のような香りで、40年以上も樽で熟成させたおかげで透明感のある味わいに仕上がっており、後味は辛口で食欲をそそる。この特徴的で伝統的なワインは1972年にピーター・シミントンが、彼の一族がグラハムを引き継いですぐ作ったものだが、瓶詰されたのはなんと今年で、シミントンのヘッド・ワインメーカーとして2009年に彼の後を継いだ息子チャールズによる。
ブランディーズ・テランテス20年(Blandy’s Terrantez 20 Year Old NV Madeira;50clで45ポンド、Wine Society; 19%)はかなり高価に感じるかもしれないが、テランテスという品種が非常に希少な品種だ。このスモーキーで魅惑的な希少品を味わう機会を我々に提供してくれたクリス・ブランディに感謝したい。
もう少し甘いものならこの長期樽熟成した、ペルピニャンの内陸の共同組合、ヴィニュロン・デ・モーリー・ソレラ1928カスク768(Vignerons de Maury Solera 1928 Cask 768 NV Maury;おそらく非常に良く似たカスク835は50clで13.95ポンド、The Wine Society:カスク932は19.95ポンド、Berry Bros & Rudd; 17%)を挙げたい。アーモンドやオレンジ・ピールの香りがして、甘すぎないクリスマス・プディングによく合いそうだ。
貴腐はブドウにつく菌の一種でそこから生まれるワインを蜜のように変える。貴腐、あるいはボトリティスと呼ばれるこの菌が世界で最も多くみられる偉大な地域はオーストリア東部にある水深の浅いノイジードラー湖の周辺だ。手の出しやすい価格で甘口だがデリケートな味わいなのは、典型的な中欧の街ルストに拠点を置く典型的なワインメーカーによる、ハイディ・シュレック・スケルトン、ベーレンアウスレーゼ2013 ブルゲンラント(Heidi Schröck, Selektion Beerenauslese 2013 Burgenland;37.5clで25.2ポンド、Alpine Wines; 12.5%)で、ウェルシュリースリングとヴァイスブルグンダー(ピノ・ブラン)が主体だ。
少量生産で有名な生産者による甘すぎないポートなら、まず手始めに楽しみたいのがワレ・キンタ・ダ・カヴァジーニャ1998(Warre’s, Quinta da Cavadinha 1998 Port;Waitrose, Vagabond Wines, Selfridges, Fenwicks; 20%)だろう。しっかりと熟成した香りはリコリスやダーク・チョコレートで、口に含むとこの上ない凝縮感のあるビター・チョコレートが重なる。まだこもっているタンニンが非常に力強いので、デカンタージュを数時間といわず数日間しても十分楽しめる。
ヴィンテージ・ポートはご存知のようにゴージャスなサテンの舌触りで磨き抜かれた甘い喜びを与えてくれるが、その可能性を真に引き出すためには何十年もの時間が必要とされるという欠点がある。キンタ・ド・ノヴァル・アンフィルタード・シングル・ヴィンヤードLBV2009 (Quinta do Noval, Unfiltered Single Vineyard LBV 2009 Port;15.99ポンド、Ocado, および Soho Wine Supply, General Wine Co; 19.5%)はまるで開いたヴィンテージ・ポートあるいはそれに匹敵するヴィンテージ表記のあるシングル・キンタのような味わいだ。かの有名なノヴァルの単一畑に由来し、その名高いヴィンテージ・ポートに似た強さとスパイシーさを持ち合わせている。もちろん全く急いで飲む必要はないのだが、非常にお値打ちである点で心を打たれた。
フォンセカ1966(Fonseca 1966 Port;1本145ポンドから;Haslemere Cellar, The Vintage Port Shopほか; 20%)はベリー・ブラザーズ・ラッドが瓶詰するもので、10月にテイスティングした際、完全に熟成したヴィンテージ・ポートがいかに個性的な輝きを放つのかを私に思い出させてくれた。
それを裏付けてくれるのがグラハム1983(Graham’s 1983 Port;59ポンド、Fingal-Rock;64ポンド、Hard to Fine Wines;100ポンド、Majestic; 20%)で、完全に熟成したワインは美しくまろやかなサテンのような舌触りで(タンニン全てが完璧に溶け込んでいるのだ)、リコリスと永遠に続くと思われるような甘い赤い果実の組み合わせが絶妙だ。まさにゴージャスという言葉がぴったりだ。このヴィンテージは間違いなく今楽しむべきだろう。一方、フォンセカ1985(Fonseca 1985 Port;希望小売価格85ポンド、Waitrose, Majestic; 20.5%)はこのヴィンテージですらようやく飲み始められるぐらいの熟成状態だ。香りはほんのわずかにアルコール度数が強い印象だが、すばらしく贅沢で甘い味わいがタンニンを伴い、今でも在感がある。ただ私ならそれよりも少し、あるいはかなり主張のおとなしいフォンセカ・ギマラエンス1998(Fonseca Guimaraens 1998 Port;希望小売価格28ポンド、Booths, Fortnum & Mason, Haynes Hanson & Clark; 20%)を飲み頃でお手頃なものとして選ぶだろう。驚くべきことに1985ですらまだ時間が必要だ。
もしこのリストをスコアの高い順に並べるとしたら、これが間違いなく最初にくる。シャトー・ディケム2001(Ch d’Yquem 2001 Sauternes;37.5clで220ポンド、The Sampler, Berry Bros & Rudd他多数; 13.5%)だ。もちろん比較的価格が高いので特別な贈り物としてハーフ・ボトルの購入をお勧めする。自分へのご褒美として、あるいはワイン好きな誰かのために。緊張感と豊潤さが優美にまじりあい、今でも十分な輝きを放っているが、更に数十年はその魅力を増すと思われる。
私はギリシャのサントリーニ島で作られる辛口の白が好きなのだが、アルギュロス・ヴィンサント2007(Argyros, Vinsanto 2007 Santorini;50clで約28ポンド、Apostle, Noel Young ほか; 14%)は干しブドウから作る甘口ワインがいかに素晴らしいものになるかを証明している。究極なまでに甘く、オレンジ・ピールの香りがして、最高級のトスカーナのヴァン・サント同様奇跡的なフレッシュ感をもたらす。
フォンタネル・アンブレ2001(Fontanel, Ambré 2001 Rivesaltes;15.5ポンド、Stone, Vine & Sun; 16%)は今回紹介する中で最もコストパフォーマンスのよいワインで、上記のモーリー同様熟成の素晴らしさを見せつけてくれるにもかかわらずしばしば忘れ去られてしまい、フランスの遥か南、ルーションのセラーでくすぶっているヴァン・ドゥ・ナチュレルの一つだ。味わいはドライ・アプリコット、バタースコッチ、ナッツ。素晴らしい一本だ。
ほとんどの人がハーヴェイと聞くとブリストル・クリームという、アンダルシアの高貴なワインにひどい名前を付けてしまった甘口のシェリーを思い浮かべる。が、今やハーヴェイはドメックの株を獲得し、年代物の最高級ワインを入手できる立場にある。そのうちの一つがペドロヒメネス30年VORS(Pedro Ximénez 30 Year Old VORS NV;50clで21.99ポンド、Waitrose 他多数; 16%)だ。天日干ししたペドロヒメネスは食欲をそそるワインというよりもイチジクのシロップのような液体を生み出すが、これは酸とわずかに引っかかりのあるタンニンの支えで非常に洗練され、ただの甘いだけの液体ではない。これを最高級のバニラ・アイスの上に注いではどうだろう。グラスの中にクリスマスが訪れる。
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