ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

175.jpgこの記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。美味しそうな写真はサンフランシスコの中華街でワイン・ライターであるランディ・カパローソ(Randy Caparoso)が撮影したものだ。Rosé assemblageのテイスティング・ノートも参照のこと。

フィナンシャル・タイムズの3ページ、ライフ&アートのコーナーに掲載されている「ランチ・ウィズ・フィナンシャル・タイムズ」で食べたり飲んだりされているものに魅了されている読者は私だけではないはずだ。誰かがワインをオーダーするたびに、私は心の中でその勇気に称賛を送っている。そしてブラボーと言いたいのがカルロ・アンセロッティ(Carlo Ancelotti)だ。彼は先日サッシカイアの弟分にあたるトスカーナの赤、グイダルベルト(Guidalberto)をシェアしただけでなく、最後にインタビュアーにグラッパを勧め、それに酔いしれさせたのである。

翌週、赤のボルドー・ブレンドをロブスターのタリオリーニに合わせたアンセロッティの選択に疑問を投げかけるブルックリン在住のフィナンシャル・タイムズ読者からの手紙が公開され、先週の土曜には別の投書が続き、今日また赤ワインは様々な食べ物に合うという別の意見が続いた。私の経験上、ワインのプロの非常に多くが白ワインには魚料理を推奨するというルールを完全に無視することが多いと言っておくべきだろう。例えばボルドーを訪問する際、私が赤ワインで流し込むのは多くの場合シタビラメだ。

ここで我々が一度に一種類の食材のみを口にすることはめったにないという問題がある。すなわち、どんなワインにしろ、非常に幅広い味わいに合わせられる必要が出てくるのだ。例えばタコ、ブッラータ、ナス、ホウレンソウ、ズッキーニなどに加え、アンセロッティのランチにはパスタの皿もあった。

レストランでテーブルの全員が同じものを頼むことも珍しい。これらのことをすべて考え合わせ、私は美食の観点から幅広いワインを求めるようになってきた。最近行った今年のロゼのテイスティングでは(このカテゴリーのワインは流行遅れというレッテルの貼られたクローゼットから飛び出してきたものだが)、私は一部のピンク色をしたワイン、すなわち極辛口でほどほどに主張し、軽すぎず、幅広い料理に対応できるワインに次第に惹かれるようになってきた。

これらのワインは提供温度も幅広くとることが可能だ。暑い日にしっかり冷やしてもいいし、軽めの赤、例えばボージョレや多くのピノ・ノワールにふさわしい、セラーそのままの温度でも良いのだ。

私の言う典型的な料理と合うロゼを作るには、ある程度の温暖な気候と日照が必要となる。典型的なプロヴァンスのロゼは現在最も流行している、ごく淡く、羽のように軽いものだが、一般的には本格的な料理に合わせるよりも食前酒に適している。一方バンドールの上質なロゼはその際立ったハーブの香りとイサキとの相性が素晴らしく特にドメーヌ・タンピエのヴィニュロンであるルル・ペイロー(Lulu Peyraud)のものであれば文句なしだ。その伝説的なホスピタリティはフード・ライターのリチャード・オルニー(Richard Olney)も「ルルのプロヴァンスの食卓(2013年にGrub Streetが再版)」で絶賛している。

私は同様のロゼ、カシス(白ワインで最も有名なのだが)のクロ・サント・マグドレーヌ(Clos Ste-Magdeleine)も楽しんだ。カシスはバンドールと同じ海岸沿いにある。そのムールヴェードルという品種がこの沿岸部のロゼの幅広い性格のカギを握る。プロヴァンス内陸のロゼで典型的な品種はグルナッシュとサンソーで、これらからは比較的軽やかでフレッシュなものが作られる。

グルナッシュとサンソーはまた、バンドールとカシスの西に位置し、ローヌ渓谷の遥か南部にあるフランスでは珍しいロゼのみのアペラシオン、タヴェルでも特徴的な品種だ。タヴェルは典型的にはやや重く時にシロップのようだが、ラングロールのようなカルトワインは例外だろう。自然派ワインの作り手エリック・ピュフェリンク(Eric Pfifferling)はじれったいほど少量生産で色の濃いロゼと軽やかな赤を作るが、それらは他のどのタヴェルとも異なる。私もようやくテイスティングすることができたが、それらは活力にあふれ、スミレのクリームや電気をチャージしたストロベリーを連想させられたが、けして甘すぎるものではない。その2013はパリのフレンチー(Frenchie)で楽しんだが、さまざまなコースの1品目にも、アミガサタケを添えたラムやチキンにも、十分に対応できるものだった。

ラングドックの多くの生産者も最近はロゼに真剣に注目し始めている。サンソーはハーブの香りが印象的な例だが、標高の高い良質な畑で育ったグルナッシュもうまくいく。

一方で、経験上フランス北部で作られるロゼのほとんどは(ボルドーで増え続けるロゼですら)爽やかで食前酒には向いているがメイン・コースに太刀打ちできるほど濃厚であることはめったにない。多くのロゼワインが赤ワインの発酵槽から残りの赤ワインの凝縮感を上げるために引き抜かれたものであるからだ。

イタリアは料理に合うロゼの生産国として使い勝手がいいかもしれない。なぜなら時に苦味と言わないまでも味わい深く、赤ワインとそれに用いる品種の性質が現れているからだ。サンジョヴェーゼはイタリア中央部で上質な辛口のロゼを生み出すことができるだろうし、白状すると私はイタリアのかかとに当たるプーリアで作られるロザートやロッソが好きだ。それらはボンビーノ・ネロ、ネロ・ディ・トロイア、ネグロアマーロ、プリミティーヴォなどが使われ、しっかりと残糖がなくなるまで発酵された場合には非常に良い、力強く色の濃いロゼとなる。

また、典型的なオーストラリアの食事に合うロゼ(以下のリストも参照のこと)はヴァルポリチェッラの品種、ロンディネッラを用い、ニュー・サウス・ウェールズ州の冷涼な角地から作られることからも、北イタリアでの食事に合うロゼ生産の可能性を裏付けると言えよう。

一般的にロゼワインを選ぶ際にするアドバイスは最新のヴィンテージを選ぶことだが、これらのように食事に合うフルボディで辛口のロゼには必ずしもそうではない。最も有名で代表的な例はヴィーニャ・トンドニア・ロザート・グラン・レセルヴァ(Viña Tondonia Rosado Gran Reserva)であり、淡いオレンジのリオハの現行ヴィンテージは信じられないことに、2000年である。

私が書いたこのアンティークなワインのテイスティング・ノートの一部はこのように書かれている。「蝋のような感覚が興味深い。ミディアムからフルボディ、フレッシュかつオレンジ・ピールの余韻。軽やかな飲みごたえ。本当に特徴的。料理に合うワイン。これをメキシカン・フードと合わせることすら想像できるし、こんなことをテイスティング・ノートに書いたことは今までにない。」

ポルトガルのワインと言えば一時期つまらないロゼ(マテウスやランサーズ)を意味していたが、今や私のお気に入りの食事と合わせるロゼワインはディルク・ニーポートのレドマ・ロゼ(Redoma Rosé)で、ドウロ渓谷でポート用の品種から作られる。これもまた色の濃いフルボディのブレンドで、この場合は新樽で発酵しているのだが、全く樽が強すぎるわけではない。後味は辛口でこのポルトガル北部のテロワールを雄弁に語る。

他にもこの便利なジャンルの例はヨーロッパ以外でも多くあるに違いない。だが、私はロンドンに拠点を置いているため、ヨーロッパ以外の例をあまり目にする機会は多くない。ロゼの流行はいわゆるニューワールドに広がるのはゆっくりで、生産者は賞味期限の短いワインを遠くまで輸出することに消極的だ。本当に辛口で食事と合う白とロゼも、ヨーロッパ(ひとまとめにするのは危険だが)以外ではあまり一般的ではないが、南アフリカ、ウォータークルーフのムールヴェードル主体のサーカムスタンス・ロゼなどはかのアンセロッティのロブスター・タリオリーニにも非常によく合うはずだ。

料理に合うロゼ

L’Anglore 2013 Tavel

Castello di Ama Rosato 2014 Toscana

Château des Chaberts, Cuvée Prestige Rosé 2015 Coteaux Varois

Domaine de l’Horizon Rosé 2014 Côtes Catalanes

Freeman Vineyards, Rondo Rosé 2015 Hilltops

Lopez de Heredia, Viña Tondonia Rosado Gran Reserve 2000 Rioja

Niepoort, Redoma Rosé 2014 Douro

Château de Pibarnon 2015 Bandol

Domaine de la Ribotte, Cuvée Anaïs 2014 Bandol

Château St-Jacques d’Albas 2015 Minervois

Domaine Tempier Rosé 2015 Bandol (どのヴィンテージでも)

Waterkloof, Circumstance Cape Coral Mourvèdre Rosé 2015 Stellenbosch

テイスティング・ノートも参照のこと。また、以下にわがチームの推薦も記載しておく。

ジュリアのおすすめ

Afros, Vinho Verde (最後にテイスティングしたヴィンテージは2011である。強いタンニンと酸のために常に極辛口というわけではないが、料理、ローストした肉にすら非常によく合う)

Alpha Estate 2015 PGI Florina

Azores Wine Company, Vulcânico Rosé 2015 IGP Açores

Chêne Bleu 2014, IGP Pays du Vaucluse

De Martino, Gallardía Rosé Cinsault

Julia Kemper, Elpenor Rosé 2013 Dão

Intellego 2015 Swartland

リチャードのおすすめ

Kutch Pinot Noir Rosé, Sonoma Coast

タムのおすすめ

Calmel & Joseph, Pays d’Oc

Ch Lagrezette, Le Pigeonnier, Cahors

(原文)