ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

204.jpgこの記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。一連の2015ローヌについてはこのガイドを参照のこと。

ブルゴーニュ2015は比較的品薄になる可能性があるが南部ローヌ(シャトー・ヌフ・デュ・パプの本拠地であり、モン・ヴァントー山の見下ろすジゴンダスや多くのコート・デュ・ローヌの村々はフランスで最も生産力の高い産地だ。この地はまた、2015という優良なヴィンテージの恩恵を受けた地でもある(2016の南部ローヌはさらに良いとの報告がある)。ユーロでの価格も非常に安定しており、この点はブルゴーニュと異なる。

現時点で私は566の南部ローヌ2015をテイスティングしているが、その多くは先の10月に仲間と共にブラインドでテイスティングしたものだ。そのうちごくごく多数を赤が占めていたのは、この地域では白の生産は少数派であるということと、2015の白が若干酸に欠けるという点が理由だろう。

ヤップ・ブラザーズ(Yapp Bros)はイギリスでも数少ないローヌ・ワインの専門店だ。2015の販売はつい先日終了したところで、2010以来最大の成功だった。もっとも、ユーロで仕入れるワイン商との交渉やポンドでの値付けが難しかったのは想像に難くない。

フィリップ・カンビエ(Philippe Cambie)はこの地域で最も尊敬を集めるエノロジストの一人だが、彼は1985年以来5の付く年の南部ローヌはすべて優良だと指摘する。(Bordeaux 2015 harvest continues the rule of fiveも参照のこと)2015の生育期は史上最も暖かく日照が多く、1947年や1921よりも暑かった。グルナッシュやムールヴェードルの中には(特にシャトー・ヌフの南部では)記録的な日中の厚さに抗うように成熟を止めてしまったものもあったが、シラーは特にうまくいき、素晴らしい出来となった。夜は比較的涼しかったので出来上がったワインはフレッシュさも残し、色もよく、ブドウは素晴らしく健康だった。ヴィニュロンたちは収穫にゆっくり時間を割くことができたことを意味する一方、グルナッシュとムールヴェードルに関しては成熟が追い付くのを待つ必要があったことを意味する。

冬は十分に雨が降り、非常に寒かったために生育期の開始が3週間遅れた。だが開花期の気候は非常によく、安定していたため大豊作となった(降水量の少ないこの地域では収量は比較的少ないのが常だ)。

比較的雨の少なかった夏のおかげでシャトー・ヌフのブドウの果皮は非常に分厚くなり、ワインメーカーたちはカンビエやグエンハエル・ケスラー(Guenhaël Kessler)がアドバイスしたように強烈でドライなタンニンを避けるためにフェノリックの抽出を注意深く、素早く行う必要があったようだ。毎年のシャトー・ヌフのテイスティングを行っている私から見て、年を追うごとに色が濃く力強いものから色が淡くまろやかで香り高いものへとスタイルの進化が見られていると言える。

赤はこれまでになく多様である。固いクラレット調のものからフルーティでバラ色の、ブルゴーニュスタイルのものまであるが、数年前のヴィンテージと違い明確に強い樽やフルーツ爆弾のようなものは明らかに減り、ミネラリティとして表現されるフレッシュで控えめな品質を示すものが多くなった。夏の暑さにもかかわらず多くのワインは口の中に心地よい涼やかな後味を残した。アルコール度数は高い傾向にあり14%を超える者も中にはあったが、2015はおそらくこれまでテイスティングした中で最高にバランスが取れた、赤のシャトー・ヌフの年と言える。

(アルコールの高いワインは時として扱いにくい(特に二日酔いの問題)こともあるのは理解しているが、注意深く作られたものは危険なほどに美味しいのだ)

このように透明感のあり花の香りのあるワインは(除梗せず一部全房発酵をしたものが多いが)ここのところシャトー・ヌフが絶頂期を過ぎてしまったと考えているワイン愛好家に十分アピールできるだろう。甘いチェリー(赤と黒両方)の香りはシャトー・ヌフに共通するものだが、丘を登ったジゴンダスには見られない。ここではフェノリックが十分にこなれて成熟していないワインが多い。

しかし、以下のジゴンダスはブラインドでテイスティングしたものだが、群を抜いて印象が強かった。: Bergerie de la Plane, Domaine des Bosquets (Le Lieu Dit), La Bouïssière (Tradition and Font de Tonin), Montirius (Confidentiel), Notre Dame des Pallières (Les Mourres and Vieilles Vignes), Ogier Cave des Papes’ Héritages, Domaine d’Ouréa, Château Redortier およびChâteau de St-Cosme (Classique and Hominis Fides).

いつものように多くの生産者は異なる品種と区画のブレンドを用いるが、2015に関しては何がうまくいったのか総括的に言うことは難しい。シャトー・ヌフでは基本的なブレンドをトラディションと呼び、そこから外れたものをキュヴェ・スペシアレ(Cuvée Spéciale)と呼ぶ。だがこれらの「スペシャル・ブレンド」がトラディションのものと比較して明らかに優れている場合ばかりではない。

数百、いや数千の様々なワインが毎年南部ローヌで生み出され、私がテイスティングするワインもシャトー・ヌフに限らず多くの村におよび、ジゴンダス、ヴァケイラスなどは間違いなく全てをカバーしてはいない。範囲の広いアペラシオンであるコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュの後ろに村の名を付けられる村の数は年々増えている。2016年の収穫からはSainte-Cécile, Suze-la-RousseそしてVaison la Romaineが加わり、その数は20に及ぶ。また、独自のアペラシオンを名乗ることができるのはジゴンダスとヴァケイラス以外にボーム・ド・ヴニーズ、ヴァンソーブル、ラストー、そして2015からはケランヌもその仲間に加わった。

シャトー・ヌフとジゴンダス以外に突出していた者としてはヴァントーではドメーヌ・ド・ラ シャルボニエール(Domaine de la Charbonnière)のヴァケイラス・キュヴェ・スペシアレとレゼメイル・デ・ヴェン(Les Semelles de Vent)、タルデュー・ローラン(Tardieu-Laurent)のヴィエイユ・ヴィーニュ・ヴァケイラス、 ドメーヌ・ド・ボールナール(Domaine de Beaurenard)のラストー(彼らのシャトー・ヌフも併せて)、ドメーヌ・ピク・バッセ(Domaine Pique-Basse)のラストー、ドメーヌ・ド・フォンドレシュ(Domaine de Fondrèche)とシャトー・ペスキエ(Ch Pesquié)のヴァントーのカンテサンスドメーヌ・グラムノン(Domaine Gramenon)のローランティッド・コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ(Laurentides Côtes du Rhône-Villages)、ル・クロ・デュ・カイユ(Le Clos du Caillou)のコート・デュ・ローヌのル・クワルツ(Les Quartz)だ。最後のは地図上では外にあるが、その品質から言えばシャトー・ヌフと言っても過言ではない。www.h2vin.co.ukでは12本で保税価格159ポンドだ。

シャトー・ヌフでのワイン作りはどこよりも洗練されていると思われるが、私のお気に入りのワイン生産者に加えて新たな名前を見るのもうれしいことだ。この地域はかつて多くが地元の協同組合にブドウを卸していたが、現在それら個々の農家がワインメーカーに転身し、ドメーヌ詰めのワインを生産するようになっている。

昨年11月、2015 north Rhône reds – best in 55 years?訳文)で私はこれらの非常に魅力的な北部ローヌの赤を紹介したが、それらは比較的生産量が少ない。一方で現在でも2015の南部ローヌの赤は十分に入手が可能だ。特にイギリスのワイン商は公式な販売をまだ行っていないこともあり、アメリカでしか発売されていないこともある。最高品質のシャトー・ヌフは今年の末にならないとイギリスには入ってこないだろう。しかしそれらを慌てて飲む必要はない。今後10年、その半ばぐらいまでは十分に飲みごろだろう。2004は現在非常に飲みごろだ。

550以上の南部ローヌ2015のテイスティングノートはこちらを参照のこと。

お気に入りの2015南部ローヌ
ここに記したのはすべてシャトー・ヌフ・デュ・パプで、その多くがスペシャル・キュヴェだ。
Domaine des 3 Cellier, Éternelle
Charvin
Clos des Papes
Domaine de la Côte de l’Ange, Vieilles Vignes
Domaine de la Croze-Granier, Le Château
Ch Fargueirol, Cuvée Antonin
Font de Michelle, Élégance de Jeanne
Olivier Hillaire, Les Terrasses
Olivier Hillaire, Tradition
Roger Sabon, Prestige
Roger Sabon, Secret de Sabon
Serguier, Révélation
Domaine de St-Siffrein, Terre d’Abel

取扱業者についてはwine-searcher.comを参照のこと。パープル・ページのメンバーはこの記事で紹介したワインについてはテイスティングノート内のWine-Searcherのリンクを使うこともできる。

原文