ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

293.jpgこの記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。今年サウスウォールド・テームズで、ブラインドでテイスティングした261本のボルドーについての総括的なコメントを紹介する。これらのコメントのもととなった3本のテイスティング記事へのリンクはBordeaux 2015 – the guide を参照のこと。

今年もこの季節がやってきた。私の歯が250以上の大量のボルドーで黒く染まる。毎年サウスウォールド・テームズ開催される、4年未満のヴィンテージの水平テイスティングだ。サフォークの海辺で始まった会だが、今はテームズ川のほとりにある高級ワイン商ファー・ヴィントナーズのオフィスで行われている。ここはワインがたとえがっかりするものだったとしてもその眺めは素晴らしい場所だ。ほとんどのシャトーは親切にもサンプルを提供してくれるため、それらがボルドー専門家のビル・ブラッチ(Bill Blatch)とハミッシュ・ウェイクス・ミラー(Hamish Wakes-Miller)によって集められ、ロンドンへ船で輸送される。

およそ二日半かけて我々ワイン専門家、今年は約20名が2015ヴィンテージのワインを12ずつの似たワインごとのフライトで審査した。そのフライトにどのワインが含まれているかは知らされるが、どれがどのワインなのかは知らされない。そして写真を見てお分かりの通り、我々は非常に真剣だ。

これらの審査が終わると我々は今世紀のヴィンテージを品質の良い順に並べるよう求められる。これらすべての2015をテイスティングした結果合意したのは、このヴィンテージは2010、2009、2005、2000ほど偉大なものではなく、2001と2014よりは良いものの、第5位の座に収まる程度だという点だった。

左岸の1級シャトー全て、そして右岸(サンテミリオンとポムロール)でそれらと同等と自他ともに認めているワイン全てをテイスティングしたものの、2015の中には素晴らしく衝撃的なワインはほとんどなかった。

これら有名な銘柄の中で最も印象的だったのはシャトー・オーゾンヌ、シュヴァル・ブラン、ラ・ミッション・オーブリオン、ムートン・ロートシルトだった。だがそれらほど有名でないワインの中にはこの上なく素晴らしい品質をブラインドでも感じることができたものがあった。それらは以下にリストにしてあるが、サンテステフにありシャトー・カロン・セギュールと同じチームが運営するシャトー・カプベルンのようなお値打ち品も含まれている。当時、かつての所有者の名前を加えシャトー・カプベルン・ガスクトンと呼ばれていた2009もまた、今でも非常によい状態にあるお値打ち品だ。

偉大なシャトーをしのぐほどだったもう一つのサンテステフは(サウスウォールドのブラインド・テイスティングでは初めてのことではないが)シャトー・メイネイだ。ここは一部をクレディ・アグリコル銀行が所有しているが、間違いなくうまく運営されている。多くのテイスターがこのワインを遥かに偉大なシャトー・モンローズ2015(保税価格は1ケース1000ポンドを優に超える)と間違えたとわかると、ファーストフードの所有者、ステファン・ブロウェット(Stephen Browett)はジャスティリーニでこのワインが保税価格1ケース200ポンド以下で販売されていると告白した。メイネイ2012は2017年にワイン・オブ・ザ・ウィークにも選ばれている。

よく聞かれるワインの通説では2015の品質はメドック南部(特にマルゴー)の方が北部(サンジュリアン、ポヤック、そしてとくにサンテステフ)よりも明らかに良いというものだ。これは北部で収穫前に味わいを薄める強い雨が降ったことが理由とされる。だが実際にはサンテステフは期待よりもよかったし、安定して最も(ポヤックよりも)印象的だったのはサンジュリアンのフライトだった。また、マルゴーはかつてがっかりさせられるようなシャトーもあったのだが今はしっかりと軌道修正し、その年の雨の状況がどうであれ、遥かに良くなっている。

右岸では、昨年行った2014のテイスティングでサンテミリオン和訳)に抽出やアルコール、過剰な表現が控え目になるという希望の光が見えてきていたのだが、残念なことに2015ではそれは引き継がれていなかった。全体的にサンテミリオンの高い格付けのものは低いものよりも抽出を控え目にしているものが多かったとはいえ、高い格付けのものの中にもまったくがっかりするようなものが見られたのも事実だ。

ただ、ワインメーカーによる意図的な退化ではなく2015の特に暑く乾燥した夏の中盤の気候がメルロに与えた影響が一因なのかもしれない。ワインはアルコールが高く、その多くが14.5%を超えていたが、確かに過剰な樽香はかつてほど感じられなかった。2014で見られたのと対照的に、2015ポムロールは全体的にサンテミリオンよりも印象的で、全体の流れに乗っているように感じられた。

ペサック・レオニャンの多くがあまりできの良くないサンテミリオンと同じようにキシキシと口の中が乾くような余韻に苦しんでいたが、今年のテイスティングでワクワクしたのは白ワインのフライトで、そのうち2フライトは白のペサック・レオニャンだった。

私がこのサウスウォールドのテイスティングに初めて参加したのは1970年代のことだったが、(参加していない年もあるものの)3年半が経過した辛口の白ワインがこれほど印象的だったヴィンテージを思い出すことができない。甘口の白がボルドーの有名な赤に大差をつけて勝つことは2013、2011、2007などのヴィンテージで見られた。2015は甘口の上質な白にとっても偉大な年であると言えるが、辛口の白もこれ以上ないほど素晴らしい。

最初のフライトは上質な白ワインだった。通常初日は後半になるほど質が高くなるものだが、2015に関しては最初のフライトのスコアが最もよかった。クラランス・ディロン所有の2つの最高級の白、オーブリオン・ブランとラ・ミッション・オーブリオン・ブランは間違いなく抜きんでており、おそらくその価格もそうだろう。

一方、野心的にフロンサックでソーヴィニヨン・ブランを栽培するシャン・リーブレはポムロールにあるシャトー・ラフルール(最高スコアを獲得したシャトーの一つでもある)でよく知られるギノードー家によるものだが、彼らは低い格付けであるACボルドーに甘んじているもののその輝かしい未来を常に感じさせる。残念ながら価格が非常に手ごろなわけではないが、他の有名どころと肩を並べ、地に足をしっかりつけている。

甘口に関していえば2015のベスト・ソーテルヌはイケム、リューセック、ラ・トゥール・ブランシュ、ラフォリー・ペラギー、ド・ファルグで、それぞれ非常に傑出していた。そろそろ流行と言う名のスポットライトが彼らにもう一度当たるときがくるのではないだろうか? クリスタルのラリック、そして右岸のシャトー・フォジェール、ペビ・フォジェール、カプ・ド・フォジェールの所有者でもあるシルヴィオ・デンツ(Silvio Denz)は間違いなくそう考えているに違いない。彼は最近、決して活気に満ちているとは言えないソーテルヌの田舎にあるシャトー・ラフォリー・ペラギーを豪華なホテルに改装しているし、このシャトーの400周年を祝うため、ラリックのクリスタルでできたオーク樽の複製を設置している。

2015の白は傑出していると思うが、赤はそれには及ばないだろうし、それほど長期の熟成には向いていないだろう。昨年10月にはスマートな2016も幅広くテイスティングしたが(サウスウォールドより本数は少なく1級シャトーはなかったが)全体的に特に赤に関しては2016の方が2015よりも品質が良く、輝きが感じられ、力強い印象だった。来年サウスウォールドのテイスティングでそれらがどこにランク付けされるのか今から楽しみだ。

注目すべき2015
2015の赤に安いものはほとんどないが、私が最近テイスティングした中でその格付けや価格を遥かに超える品質のものは下記だ。

ボトルで

Ch Saintayme, St-Émilion
£17.20 Tanners

La Chenade, Lalande-de-Pomerol
£20.95 Lea & Sandeman

Ch Capbern, St-Estèphe
£22 Averys, BBC Good Food Wine Club, Laithwaites, Sunday Times Wine Club

Ch Meyney, St-Estèphe
£26 Averys, BBC Good Food Wine Club, Laithwaites, Sunday Times Wine Club

ケースで

Ch Carignan, Cadillac
£84 a dozen in bond, Farr Vintners

Allées de Cantemerle, Haut-Médoc
£135 a dozen in bond, Farr Vintners

Ch La Garde, Pessac-Léognan
£165 a dozen in bond, Berry Bros & Rudd

Farr Vintners Pauillac
£180 a dozen in bond, Farr Vintners
(2015 vintage of The Wine Society’s Exhibition Pauillac will be the same wine)

Ch Les Cruzelles, Lalande-de-Pomerol
£100 for six in bond, Justerinis & Brooks

Baron de Brane, Margaux
£240 a dozen in bond, Goedhuis

原文