ARTICLEワイン記事和訳

フィレンツェのささくれ 22 May 2014

006.jpgこの記事はもともと有料記事として、ニュースというより一意見として掲載していたが、木曜特別シリーズの一つとして無料で公開することにした。有料読者のみなさんは世界最大の樽メーカーに関する有用な追加情報に注目してほしい。

年を重ねる利点の一つは、人から怒られることが減るということだろう。事実、近年私が叱られた経験はほとんどなく、あるとすればたいてい私たちの子供に関わることであり、我が家にとって不足気味の事象であるとも言える。

しかし、先週末29年間で8回目の開催となるマスター・オブ・ワイン協会によるシンポジウム(第1回のオックスフォード大会に参加した時、私は一人目の子供を妊娠中だった)に参加中、私はすくなくとも3回も叱られるという経験をした。最初は協会の前理事を含む3人のMWと共に外食をしていた時のことである。2人の配偶者を含め6人でボテガ・デル・ブオン・カフェ(Botega del Buon Caffé)というややこしい名前の店でテーブルについていた。ニックが後日記事にすると思われる素晴らしい料理と3本の素晴らしいワイン―ロンコ・デル・ニェミッツ(Ronco del Gnemiz)の2010フリウラーノと、2本のキャンティ・クラシコ、イゾレ・エ・オレーナ(Isole e Olena)の2006 グラン・セレツィオーネ(Gran Selezione)とパラッツィーノ(Palazzino')のグロッソ・サネーゼ(Grosso Sanese) 2007―を楽しんでいた。互いの仲間とも気が合い、少々笑いすぎていたかもしれないが、私自身はそれほどひどいとは感じていなかった。しかし、すぐ近くのテーブルにいた二人のイタリア人女性が見かねて、静かにするよう厳しく苦言を呈してきたのである。

私は組織内で威厳のある人物と捉えられている4人が子供のように叱られたことを面白いと思い、ツイッターで紹介した。すると翌朝、ハンドルネーム「ペンダントモンキー(pedantmonkey)」という人物から返信があり、「あなた方がMWであるかどうか、叱られたこととは関係ないのでは。傲慢に感じます。」と書かれてしまった。これで12時間に2度、叱られたことになる。

そして3度目は翌晩、アンティノリ・ワイナリーのMWディナーでのことだった。400名もの人がサン・カシャーノの旧館のすぐ近くにできたアンティノリのUFOのようなワイナリーで、特別に用意されたバレルホールに集まった(写真はMW受講生であるマーク・ダビッドソン(Mark Davidson)が「侵略者」たちがグラスに殺到する前に撮影したものである)。ディナーの前にはテラスで美しい夕焼けを見ながら、協会の後援でもあるグランディ・マルキ(Grandi Marchi)協会を構成する19のワイナリーそれぞれのワインを楽しむことができた。数百ヤードはあるかと思われるテイスティング・テーブルを順番に回ったが、床に置いてある吐器が少なかったので、今回だけは持ち運べる吐器として紙コップを忘れなくてよかったと嬉しくなった。しかし、それにテイスティング・グラスとペーパー・バックほどの厚さのある資料をあわせて持ち歩くのは容易ではなく、ついリーデルのグラスの商談をしているテーブルに自分のグラスと吐器を置いてしまったのだ。もちろん即座に「ここはサービステーブルではありません」と厳しく叱られてしまった。ストライク・スリー、である。

もちろん、上述のような些細なことを指摘されるより、自分で心から恥ずかしいと感じることを指摘されることの方が、はるかにばつが悪い。先週末のフィレンツェで起こったそれは実際には倍以上叱られるべきだったことであり、まだ私の心に影を落としている。シンポジウムの最初のセッションで私は「ワイン・コミュニケーション―未来の聴衆へ届け」というテーマで話す3名のうちの1人だった。私はJancisRobinson.comを運営する喜びにフォーカスしたいあまり、またワインのように複雑で人の心をつかんでやまない話題にはネットが理想的な媒体であると信じていることもあり、印刷物に対してあらゆる形で否定的であるような印象を与えてしまったのではと心配している。非常に贅沢なワイン雑誌を除いて、近年出版というものは非常に困難なものとなってきているが、美しい印刷物に未来はあると考えているし、街の新聞配達の少年(実際には我が家の場合は少年ではなく、驚くほど明るいミセス・サンディ・パテル(Sandy Patel)だが)やニックと私が週に1冊以上は書籍を購入している近所のダウント(Daunt)書店の懐を潤す以上の役割があると考えている。私はそのあたりをもっと明確に話すべきだった(話者のために用意されたタイマーが正確でなかったため、ペースが乱されたということもあるのだが)。

しかし、さらに私が後悔していることは厚かましい、いや愚かな振る舞いである。最後から2番目のセッション「科学v.s.信念」を非常に興味深く聞いていたときのことだった。そこでは協会議長であるジャン・ミッシェル・ヴァレット(Jean-Michel Valette)MW がチリのヴィーニャ・エラスリスで定評のあるワインメーカー、フランシスコ・ベッティグ(Francisco Baettig)とシャトー・マルゴーのポール・ポンタリエ(Paul Pontallier)、世界有数の樽メーカーでありタランソー(Taransaud)も傘下に持つ、シェーヌ・エ・シエ(Chêne et Cie*)で樽の神様と呼ばれるアンリ・ド・プラコムタール(Henri de Pracomtal)に質問をしていた。プラコムタールが彼の会社が年間およそ50万ユーロという膨大な費用を研究開発に投入していると述べたとき、私はその開発を維持することができるのかと思わずにいられなかった。なぜなら現在世界中のワインメーカーは大きく古い樽を使うことが増え、以前はワインメーカーの誇りだったぎっしりと並んだ新樽の光景は減り、場合によっては全く樽が使われていないというのが現状だからである。そこで私は彼に、明らかに売り上げは下がっていくと予測されるが、開発を維持するための一発逆転の策はあるのかと質問した。確かに無作法な質問だったことは認めるが、彼に最大限の敬意を払っていたことも事実である。しかし、協会の絶大な支援者である人物に向けてするべき質問ではなかった。
彼は後で個人的に、マーケットでのシェアが確実に伸びていることが支えになっていると教えてはくれたが、私はアンリと協会にひどく叱られて当然だと反省している。

* 最初の記事で私はシェーヌ・エ・シエがフレンソワ・フレール(François Frères)も傘下であると記載したが、サンフランシスコの樽ブローカーでありパープル・ページ読者でもあるメル・ノックス(Mel Knox )が間違いを指摘してくれた。もちろんタイトルは「お叱り」だった。

シェーヌはフランソワ・フレールを傘下にはしていません。フレールはTFFグループの傘下で、グループにはほかに下記が入っています。
Demptos of Bordeaux
Napa Demptos
Demptos España
Sogibois, the largest maker of French staves
Treuil, a cooperage in Brive
François Frères
50% of Trust Hungary
AP John of Australia
Stavin & Arobois

シェーヌが所有しているのは
Xtra Chêne
Taransaud
Canton
50% of Kadar of Hungary
です。

ボスウェル・ファミリー(Boswell family)が所有するワールド・クーパレッジ(World Cooperage)がおそらく世界最大の樽メーカーでしょう。彼らは主にバーボン樽を作っていますが、ワイン樽も数多く手掛けています。

とても助かったわ、メル、ありがとう。

原文