ARTICLEワイン記事和訳

ケープの若手生産者の武器となるものは 11 Apr 2015

096-1.jpgこれはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のロング・バージョンである。「南アフリカに吹く変革の風原文)」および「South Africa's exciting new wave」も参照して欲しい。

今年の初めにケープを訪問した私は、南アフリカワインの将来に期待と不安の両方を抱いた。

主にスワートランドに拠点を置く小規模で若手のワイン生産者たちの全く新しい集団が、心躍るような、それでいて南アフリカの個性を表現するワインをケープにある昔ながらのブドウ畑から生み出し、これまでステレンボッシュ周辺の典型的で伝統的なワイナリーが作ってきたヨーロッパのクラシックなワインの模倣品と一線を画すようになったのは疑いのない事実である。

しかし、一連の緊縮的要因と不透明性による低迷が特徴的な南アフリカの経済同様、美しくも不完全なこのワイン生産地の経済も不安定である。例えばカリフォルニアでは、ブドウの価格はその品質に大きく依存する。国全体の平均はセントラル・バレーで栽培されているごく平凡なブドウを含めても1トン当たり700ドルを切ることはないが、ナパ・ヴァレーのカベルネの平均は1トン当たり5,000ドル(場合によっては18,000ドル)にもなる。南アフリカでのブドウの価格はこの数分の一であり、ほとんど区別されずに、1トン当たりおよそ150ドルから850ドルである。最高級のワインに使うブドウの価格は8年前のそれとほとんど変わらない

このワイン・カントリーで過ごした1週間の最初に私が見たのは、有名なポルセレインバーグの隣、流行のスワートランドにある140ヘクタールの畑だった。そこでは農家が畑を売却した巨大な果物会社によってブドウがまさに引き抜かれているところだった。古いブドウ用の支柱は理想的な斜面の下に綺麗に積み上げられ、畑はより利益の得られる柑橘類を植えるための準備が整えられていた。「ブドウを植える農家よりも栽培をやめる農家が増えてきているのです。」ブーケンハーツクルーフ(Boekenhoutskloof)のマーク・ケント(Marc Kent)は話す。プラム、ネクタリン、パッションフルーツ、柑橘類、お茶にするルイボス、リンゴなどは全てブドウよりも利益が高い。比較的新しいワイン産地であるサウス・コーストにあるエルギンでは少し前にブドウ畑がリンゴ畑に取って代わったのだが、最近はその逆の傾向が強まっている。

スワートランドは特にほとんどの地域が灌漑されていないため不安定で、乾期はひどく難しい場合があるうえに平均的な樹齢が高いせいで収量も非常に低い。イーベン・サディのような非常に情熱的なワイン生産者は、農家から従量で果実を購入するのではなく彼らから土地をリースしている。彼は私に不規則に並んだ古いシュナン・ブランの株仕立ての木を見せてくれた。それは彼の拠点であるエイプリルスクルーフ(Aprilskloof)の近くにあり、称賛を集めるサディ・ファミリーの凝縮感あふれる辛口の白ワインに使われるものだった。ブドウの房はこぶし程度の大きさしかなかったと言いたいところだが、サディのこぶしはメロンほどの大きさで、そのような規格外の房はほんのわずかしかなかった。(写真はイーベン・サディで、Swartland Revolutionのウェブサイトから借りたものだ)

彼は明らかに見た目の違う、丘の端にある暗い緑色で綺麗に仕立てられた畑を指さした。「ディステルは」彼は南アフリカで大手のワイン生産者の名を挙げた。「あそこを灌漑して、効率的に栽培をしているんだ。たぶん収量は100hL/haは行くんじゃないかな。コースタル・リージョンのブレンドとして販売されるはずだよ。それがうちではたったの12だ。」

若手生産者たちの地位はその才能と熱意と裏腹に比較的不安定だ。彼らのほとんどが土地を買う余裕はなく、彼らの独創的なブレンドは様々な分野の(多くは小麦の)農家の厚意に依存している。だがイーベンははっきりと、嬉しそうにこう主張した。「僕は今のところ無所属というコンセプトでやっているんだ。」そして彼の供給源は安泰だと付け加えた。「だって他所の8倍も払ってるんだから。」彼は最高のブドウには1トン当たり30,000ランドを払い、毎年ワインの統計学者に間違えてゼロを一つ多くつけているのではないかと確認されるそうだ。しかし、彼は着実に、自分のワイナリー周辺の10ヘクタールをブドウ畑に変えつつある。

096-2.jpg彼の仲の良い旅仲間であり隣人でもあるアディ・バデンホースト(Adi Badenhorst;写真は彼のウェブサイトのもの)は幸運なことに、2008年に裕福ないとこから成熟したブドウが植えられた美しい農園を任された。しかしアディですらブドウを買い入れなくてはならず、ブドウを供給してくれる農家の中には「直前になってよそ者に持って行かれたこともあるんです。友達ならそうはならないけど、その懸念はいつも付きまといます。」

サディのデイヴィッドとナディア夫妻(イーベンとは関係ない)は、同様に才能のあるスワートランドのワイン生産者として台頭し、デイヴィッド(David)のラベルでワインを生産している。つい最近まで、彼らは自分たちの名前のワイナリーも畑も持っていなかった。しかし2015年の収穫からアディの畑のある斜面のすぐ下で齢の高いブドウを所有するPaardebosch ワイナリーの住込みワインメーカーとしての地位を確立し、ようやく安定を手に入れた。

マリヌー(Mullineux)のクリスとアンドレア夫妻もまた、スワートランド・インディペンデント・プロデューサーズ・アソシエーション(Swartland Independent producers' association)の設立メンバーだが、別の方法でその地位を安定化した。彼らは現在、インドの実業家で最近ラウンドストーン・ヴィンヤード(Roundstone vineyard)の獲得に出資したアナルジット・シン(Analjit Singh)の支援を受けている。ラウンドストーンはスワートランドの主要都市、リーベック・カステールの街を見下ろすリーベックバーグの涼しく水源を確保できる最高の場所に位置する。「今まで私たちは買い入れたブドウだけを使ってきました。」クリスは街にあるセラーで私にこう言った。「およそ30軒のブドウ農家からね。でもスワートランドのブドウへの注目が集まるにつれ、その供給源を確保するのが難しくなってきたんです。私たちは5軒の農家を新規参入者に横取りされてしまいました。」'

ダンカン・サヴェッジ(Duncan Savage)はケープ・ポイント・ヴィンヤードの醸造家で、彼の作る白は数えきれないほどの賞を受賞している。彼は最近彼自身のブランドを立ち上げ、あえて由来を明確にしないサヴェッジ・レッド、サヴェッジ・ホワイトとした。「僕がダーリン地区で初めて本当に良いサンソーの供給者を見出だしたんです。」彼は言った。「そして今、たくさんの人がこの赤ワイン用品種に殺到しています。」彼はイーベン・サディと一緒にサーフィンに行き、波に乗りながら赤ワインづくりを教わったのだと言う。彼の計画では「土地の面白い区画を借りてブドウを育てるか、ブドウの独占権を得るために新しい畑を作ることなんですが・・・そこに至るまでのリードタイムと予算がね・・・。」

醸造家とブドウ農家が正式な契約を結ぶことはめったにない。一般的なのはたとえ大企業であっても数年間だけの口約束である。「うまくいけばいいことなのだけど」南アフリカの古いブドウ畑の女王と呼ばれその多くを管理しているローザ・クルーガー(Rosa Kruger)は言う。「多くの醸造家にとって、人の計画を邪魔するようなことは文化的に受け入れられないことなの。例えば、もしディステルの区画をすごく気に入ったとしたら、私はディステルに行って彼らがそこをどれほど重要なのかを聞くわ。農家には常に敬意を払うのよ。でも今の大きな危機はみんながブドウの栽培をやめて他の作物を植え始めていることね。ブドウの価格がとても安いから農家はどんどん(可能な限り)灌漑をして肥料も多くやるの。スワートランドの素晴らしいブドウ畑の中にはただのバルクワインになってしまうものもあるのよ。」

では、解決法は何だろうか?ローザ・クルーガーに言わせると、それはブドウにもっとお金を払い、農家で働く人々の利益を増やすことだという。私から見ると、世界のワイン愛好家たちは南アフリカのワインがどれほど素晴らしい可能性を持っているか認識し、もっとお金を出すことだと思う。これを実現するためには輸出業者および輸入業者がケープの新しいワイン生産者たちがしているのと同じぐらい、企業努力を行う必要があるだろう。

お気に入りの新鋭(やや古いものもあるが)のケープのワイン生産者
詳細なテイスティング・ノートは「South African excitement - reds」と「South African excitement - the rest」を参照のこと

A A Badenhorst
Blackwater
Crystallum
David (Sadie)
Momento
Mullineux & Leeu Family
Paardebosch (by association)
Porseleinberg
Rall
Sadie Family
Shannon
Storm
J C Wickens

原文