ARTICLEワイン記事和訳本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

なぜ今南アフリカのワインを買うべきなのか 10 Oct 2020

351.jpgこの記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。テイスティング・ノートについては South African sizzleを、最近の南アフリカワインについてはこちらのガイドを参照のこと。セレマのワイナリーは上の写真、シモンズバーグの斜面に見える。

新型コロナウィルスの影響が出る前から、南アフリカの経済はトラブル続きだった。現在の失業率は34%で、できうる限りの支援が必要だ。さらに3月からは柑橘類に次いで輸出農産物として重要で、29万人もの雇用を生み出しているワイン産業が深刻な打撃受けている。

ワイン業界は、南アフリカで特に問題となっているアルコールの乱用問題を統制したいと考える政府の思惑に長いこと振り回されてきた。南半球ではパンデミックによる外出などの制限はちょうど収穫期の終盤と重なった。収穫したばかりのブドウと、発酵途中のタンクは放置されるしかなかった。だが3月26日、ワイン業界はギリギリのところで基本的な収穫期の作業を行えるよう制限の免除を取り付けることができた。しかし、通常南アフリカワインの45%を占める輸出と、国内での販売がすべて禁止される事態となった。この措置はワインだけではなく、全てのアルコール飲料に課されたものだ。

この禁止に関する公式な説明は、アルコールを禁止しなければアルコールに関連した患者が埋めることになるベッドを、禁止することで(コロナの患者のために)開放できるというものだった。当然ワイン業界は輸出の禁止は不要だと反発した。

結局輸出は5週間、国内での販売は9週間停止することとなった。6月1日に国内でのワイン販売は厳しい制限のもと解禁となったが、7月12日から5週間、再び禁止された。8月の中旬から国内での販売は再開されたものの、月曜から木曜までの9時から17時のみと決められた(金曜日の同時刻の販売は9月21日になってようやく許された)。

通常南アフリカでワイン・ツーリズムは非常に盛んであり、多くのワイン生産者にとってその売り上げの半分を占めることもあるほどだ。ワイナリーは約5か月間、訪問者の受け入れを禁止され、ようやく8月中頃になってセラー・ドアの営業が許可された。だが、そこには大きな問題が立ちはだかった。週末の訪問者からの注文に、上述の平日の時間帯に対応しなくてはならないのだ。さらに自宅への配送を希望する場合、最低12本を注文しなくてはならなかった。

2019年まで、1000万人もの観光客が毎年南アフリカを訪れ、特に12月から3月、ケープのワイン産地は北半球の冬を逃れてきた人々で最もにぎわっていた。ピーク時にはケープ・タウンのトップ・レストランは1か月前に予約で埋まってしまうほどだ。ツーリズムは、南アフリカのブティック・ワイナリーの売り上げの40%以上を占めていた。

しかし、そんなホリデー・シーズンへの期待を高く持つことはできないだろう。

業界団体であるワインズ・オブ・サウス・アフリカの推計によると、3月以降のこの制限による損失は70億ランドに達するとされている。この国の2,778のブドウ栽培者と彼らに直接雇用されている4万人はまさに苦難の時を迎えている。生産者たちは余ってしまったブドウをジュースや濃縮果汁、ブランデーや手の消毒用アルコールに変えざるを得なくなっている。

南アフリカワインについて良いニュースはないのだろうか?その純粋な美しさこそが、その魅力だ。それなのに、多くの場合には価格が安すぎると思われるこの素晴らしい液体を自由に売ることができないのは、生産者にとってこの上なくもどかしいことだろう。

アパルトヘイトの終結以来、イギリスとオランダは南アフリカワインの熱心なインポータだ。さらに現在はかの重要な市場、アメリカもその魅力に気付き始めている。もっとも、アメリカでもっとも注目を集めているのは、古木のシュナン・ブラン、サンソー、グルナッシュなどを用いる新星の生産者だろう。ケープ・タウンの北東、スワートランドの内陸にある無灌漑の畑は様々な作物が栽培される農地の中にあり、南アフリカの野心に溢れた若手生産者に比較的低価格でブドウを提供する。

ステレンボッシュの古参は綺羅星のようなシャルドネやカベルネを作っているが、カリフォルニアはすでにこれらの人気品種のワインで溢れている。ケープのワインははるかに値ごろ感を感じられるものが多いのだが、アメリカの消費者はヨーロッパの消費者ほどその価値を理解していないように見える。

最近幅広いレンジの南アフリカのワインをテイスティングしたが、私は特に赤ワインの飛躍的な品質の向上に衝撃を受けた。数十年にわたりケープのワインメーカーは心から満足できる白ワインを作る名手であることを証明してきた。シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、シュナン・ブランはフレッシュさと興味深さの境界線をうまく縫うことに成功している。冷却効果をもたらす南極海流の存在を感じるワインは次から次へと表れる。そしてこの国の主要な品種であるシュナン・ブランの平均樹齢の高さはその故郷であるロワールで作られる多くのシュナンよりも真の複雑さをワインにもたらすのに十分だ。

しかし、長年にわたり、赤ワインとなると話は別だった。地域特有のブドウのウィルスのおかげで多くの赤ワイン用ブドウは完熟が難しく、多くのテイスターは南アフリカの赤ワインに大きな不満を覚えていた。しかし、最近のテイスティングから判断するに、これまで行われてきた研究と植え替えによる対策がようやく功を奏したようだ。今回私が出会ったほとんどの赤ワインは、上質なカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーは言うまでもなく、グルナッシュやサンソーなどケープの樹齢の高い畑に由来するものも非常においしかった。赤ワイン用品種の中でこれまで最も批判にさらされてきたのは南アフリカ固有のピノ・ノワールとサンソーの交配種、ピノタージュで、両親のどちらの特徴も感じない品種だ。だがそんなピノタージュですら、今はすっかりその手綱を握られている。

最近まで、ブルゴーニュ品種であるピノ・ノワールから作られる赤ワインは南アフリカでは非常に珍しかったが、この国の冷涼な南部の海岸沿いでは現在本格的なピノが次々と生み出されている。そしてこの国の伝統的なキャプ・クラシックにも、いくつかの素晴らしいスパークリング・ワインが見つけられる。

現在南アフリカのワイン生産者は自由に輸出が可能だ。読者の皆さんが彼らを習慣的にサポートして後悔することはないと思う。

お勧めの南アフリカワイン
これらはたまたま私が最近テイスティングしたものだ。もっともっと、多くのワインが入手可能だ

Aslina, Umsasane 2018 Stellenbosch
$29.95 Amaro, Brooklyn, NY

David & Nadia - 基本的にどのワインも
£110-245 per case of 6 ib Justerini & Brooks. Skurnik is US distributor

 



Journey's End, V5 Cabernet Franc 2017 StellenboschHouse of Dreams Grenache Noir 2019 Swartland
£9 Marks & Spencer

£15.20 Tanners Wine Merchants

Kara-Tara Pinot Noir and Chardonnay 2019 Western Cape
£18.99 Museum Wines


Kumusha, The Flame Lily white blend 2019 Slanghoek

Leeu Passant, Old Vines Lötter Cinsault 2018 Franschhoek
£48.40 Q Wines

Mosi, Tinashe Chenin Blanc 2019 Swartland

Perdeberg Cellars, The Dry Land Collection Courageous Chenin Blanc 2019 Paarl
$19.95 RRP

Perdeberg Cellars, Cinsault 2018 Coastal Region
$14.95 RRP

Rall - 基本的にどのワインも
£95-250 per case of 6 ib Justerini & Brooks


Sadie Family - どのワインも。だが有名になりすぎてしまった
£235-£415 per case of 6 ib Berry Bros & Rudd


 


Stark-Condé Syrah 2017 Stellenbosch
£19.99 Museum Wines

↓ヴィンテージ違い


Thelema Mountain Vineyards, Sutherland Sauvignon Blanc 2019 Elgin
£10.50 VINVM

Thelema Mountain Vineyards, Thelema Chardonnay 2017 Stellenbosch
£16.10 VINVM and others

南アフリカワインに関する最近のテイスティング・ノートはSouth African sizzleを、ただしサディ・ファミリーはあまりに人気で、私たちをしばらく避けている。国際的な取扱業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

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