ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

024.jpgオーストラリア在住でレギュラー寄稿者のマックス・アレン(Max Allen)は先日の記事”Australia at the crossroads?”でオーストラリアのワイン業界はどこへ向かうのかと疑問を投げかけたが、バロッサの著名な生産者トルブレック(Torbreck)は、彼らの最高品質の単一畑ワイン、ザ・レアード(The Laird)をマラナンガから生み出すあのナーデンフライ・ヴィンヤード(Gnadenfrei vineyard;写真)を入手したことで、間違いなくその王道を駆け抜けていくのだろう。

その5エーカーのナーデンフライ・ヴィンヤードは伝説のマルコム・セッペルト(Malcolm Seppelt)の所有で、西バロッサ・ヴァレーのサブリージョンであるセッペルツフィールド(Seppeltsfield)とマラナンガ(Marananga)を分ける尾根の東側、南東向きの斜面にある。そこには1958年に植えられた最初のバロッサ・シラーズのクローンの一つが、濃色の重いクレイ・ローム、赤くもろいクレイ、ライムストーンの地層が重なる畑に植えられている。畑は無灌漑で機械化はせず、オーストラリアワインの歴史で長きにわたり名声を保ってきた特別な場所である。

この畑のブドウは最初のヴィンテージである2005年から今回のトルブレックによる買収までザ・レアードのために提供されてきた。しかしこの買収は中小規模のオーストラリアの生産者が発展するための未来へ向かう長期戦略の一部でしかない。

トルブレック・ヴィントナーズは現在いくつもの名のあるブドウ畑を所有し最高級ワイン、ザ・レアード、ランリグ(RunRig)、ディセンダント(Descendant)などに使用している。その他の製品には自社畑、共同耕作地、リース畑、そして生産者同士のネットワーク契約からブドウを手に入れる。

トルブレック・ヴィントナーズのチーフ・ワインメーカーであるクレイグ・イスベル(Craig Isbel)によると「買収は大切な資産としてだけではなく、僕らの長期的な野望、すなわちこのバロッサの最高のテロワールから国際レベルの上質なワインをコンスタントに生み出すという夢を叶える戦略的な活動としても意義があるんだ。」

話題を集めた(訳注)デイヴ・パウェル(Dave Powell)の離脱後に指名されたゼネラル・マネージャーである元ブリースデール(Bleasdale)のピータ・ペラン(Peter Perrin)はこう語る。「これはトルブレックにとってもバロッサにとっても、上質なワインを作り続けていくためのそして素晴らしい機会だと思う。さらにこれを地域のワインからその土地特有のワインの追及にまで深めていきたい。これがかなうのも全て、知識に基づいた長期的な戦略に共鳴してくれた辛抱強い資本のおかげなんだ」

トルブレックの会長であるコリン・ライアン(Colin Ryan)は故レン・エバンス(Len Evans)によるプロジェクトのようなオーストラリアワインに関する活動の長きにわたる支援者であり、オーナーはカリフォルニアのソノマにキヴィラ(Quivira)を所有するピート・カイトである。

(訳注:デイヴ・パウェルはトルブレックの創始者で、2013年9月に事実上自分の会社から追放された⇒ワインスペクテーターの記事はこちら

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