ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

045.jpgドメーヌ・クラレンス・ディロンは有名なペサックの1級格付け、シャトー・オーブリオンのオーナーだが、昨年の5月、歴史家たちにある挑戦を仕掛けた。初めてオーブリオンのワインの名前が記されたとされるチャールズ2世のセラーの記録書は1660年のものだが、それから350年を記念し、それより早い16世紀初頭にその名が記載された正当な書類を2つ以上見つけるよう注文したのである。

見つかったもののうち古いものは1521年、日付は1月21日の公正証書でジロンドの公立書庫に保存されていた。そこには終身年金の支払いをワインで行うことが書かれており、ジャン・ド・モンク(Jean de Monque)、モンクの大地主であり騎士である人物と、ギレン・ド・メロワ(Guilhem de Mailhois)、資産家の商人でありボルドーの法執行官でもあった人物との間に交わされたものだった。支払いは400ボルドー・フランで成立している(これは現在の貨幣価値で5万ポンド以上と推定される)。この借金の返済のため、ジャン・ド・モンクは毎年パイプ(バリック8つ分、1800リットルの大樽)4つ分の「オーブリオン」という名の場所で作られたワインを納めることになっている。

‘quatre pipes de vin, seront du cru des vignes appartenant audit de Monque du lieu appelé Aubrion, appartenant audit vendeur. Lesquelles sont sises derrière son bourdieu assis audit lieu appelé du Brion, en la paroisse Saint-Martin de Pessac, ensemble des vignes de Pins Bouquet, de la Gravette et de Cantegrit, le tout appartenant audit seigneur de Monque, assis en Graves de Bordeaux et si cas était que ne vint aucuns fruits de raisins qui fussent pour satisfaire lesdites quatre pipes de vin de rente, bon, pur et net et marchand, le dit vendeur sera tenu lui en bailler d’autres aussi bon provenu du cru desdites vignes dessus déclarées.’

「パイプ4つ分のワインはここに記すオーブリオンという土地出身のド・モンクが所有する畑から作られたもので、ここに記すセラーのものである。ここに記すブドウはサン・マルタン・ド・ペサックの小地区にあるル・ブリオンと名付けられた場所にある彼所有の小さな建物の裏にあり・・・」(訳注:上記のフランス語の後に記載された英文を訳したものであり、フランス語の訳ではありません)

この時支払われた金額は、私の計算では現在の価格に換算してボトル1本あたり20.83ポンドである。なんと格安な!

原文