ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

101.jpgTT:木曜特別シリーズの意。最近の事例に関連のある過去の記事を再掲するコーナーです。

2015年5月15日 今日の木曜特別シリーズでは2012年の記事を再掲する。3年前のロゼワインの進化を詳細に検討した記事である。その後、飛躍的に良い方向への進歩がみられた。

2012年5月12日 これはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のロング・バージョンである。

現在入手可能な興味深いロゼワインおよそ90本のテイスティング・ノートも参照のこと。.

最近自分のお気に入りスティルワインのロゼの(やや短い)リストを見ていて、フランスのロゼのメッカとも言えるプロヴァンスのものと同じ数、5つものイタリアワインが含まれていることにかなり驚いた。私自身は上質なプロヴァンスのロゼ、非常に淡いピンク色でごく辛口、シルクのようにスムースでガリッグ(訳注:プロヴァンスでよく見られる植物)の香りがして、セミの鳴き声をイメージさせる生き生きしたワインが自分の最も好みのスタイルだと考えていたのに、である。

しかし、最近テイスティングしたプロヴァンスのロゼは私がスーパー向けのロゼと呼ぶものに近いものばかりだった。ベタつきがあり、弱々しい低温発酵による単調な香りしかせず、フレッシュさを感じさせるためと思われる、なんとなく溶け込んでいない酸を余韻に感じたり、ただただ水っぽくて興味をそそられなかったりするのである。おそらく収量が高かったり収穫が早すぎたりした結果だろう。

2006のヴィンテージをテイスティングして以来、私はサシャ・リシーヌ(Sacha Lichine)がプロヴァンスの丘で作る革新的なシャトー・デスクラン(Château d’Esclans)に深く敬意を払っている。このワインが全てのロゼワインの質を引き上げたと考えているからだ。私のテイスティング・ノートを見てもらうとわかるように、その品質は常に他の見本となるものであり続けている。また、イエール(Hyères)近くにあるバンフォード(デイズルフォード(Daylesford)/JCB) Bamford)のワイナリーの作る高品質のロゼ、ル・セクレ・ド・シャトー・レオブ(Le Secret de Château Léoube)も非常に洗練されたロゼの代表格であろう。これはデスクランの最もベーシックなウィスパリング・エンジェル(Whispering Angel;これもまた年々洗練され続けている)を除く、どのレンジのワインよりも安い。

しかし今年、別のプロヴァンス(訳注;AOCではなく地方としてのプロヴァンス)のロゼに心を奪われた。それは古くからのロゼワイン生産地のものではなく、偉大なローヌ渓谷の南部のものだった。Chêne Bleu, Rosé 2010 Vin de Pays du Vaucluse はジゴンダスの上にそびえる美しいダンテル・デ・モンミライユ山地が見下ろす、ニコル・ロレ(Nicole Rolet)の細やかな心配りと共に発展してきたワイナリーで作られたものだ。彼女の夫、グザヴィエ(Xavier)はロンドンの証券取引所でチーフ・エグゼクティヴを務める。(上質なプロヴァンスのロゼの生産にも消費にも、潤沢な資金が必要なようだ)。写真はこの経営状態のよいワイナリーのウェブサイトから転載した。

他のフランスのワイン産地からも様々なロゼを推薦することができる。私の知っているサンセール・ロゼはほとんどの場合不当に価格が高すぎて特徴に欠けるが、Vincent Delaporte 2011 Sancerre Rosé は非常に気に入った。「積極的に主張するピノ・ノワール」という、1980年代中ごろに私が受けたマスター・オブ・ワインのブラインドテイスティングで頻繁に聞かれたフレーズを引用したい。その強い芳香とサンセールの白を思い起こさせる酸、超辛口の余韻から、アペリティフとして飲むよりは料理と組み合わせる方が良いと思われ、個人的には特にポーチド・サーモンと合うイメージである。

ピノ・ノワールの故郷、ブルゴーニュでは心を引き付けられるロゼは非常に少なく、味わいにおいても薄っぺらいものが多い。しかしブルーノ・クレール(Bruno Clair)のマルサネ・ロゼは毎年例外であり、Dom Bruno Clair, Rosé 2009 Marsannay はフルーティな辛口で保存状態がよかった。おそらくこれはブルゴーニュの2009のヴィンテージの力強さに由来するのだろう。

101-2.jpgヨーロッパ以外で私が気に入ったロゼ3本のうち2本はピノ・ノワールのデリケートさと冷涼気候にインスパイアされたものである。メルボルン郊外のヤラ・ヴァレーは非常にフレッシュなものを作り出すことができ、ジャイアント・ステップス(Giant Steps)のフィル・ゼクストン(Phil Sexton)は絶妙に名づけられたイノセント・バイスタンダー(Innocent Bystander) で、その地のブドウ畑から流行のスタイルのワインをうまく作り出す先陣を切った。Innocent Bystander, Rosé Pinot Noir 2011 Victoria (難しかった2011年にはブドウはゴールバーンとポート・フィリップのものを使用している)はややスモーキーなピノの特徴を十分に詰め込んでいるものの、余分な甘味やアルコールは感じない。他のこのようなロゼ同様、アルコールはたった12.5%である。

その他のニューワールドのロゼで冷涼な地域で作られたかのような味のものはチリの沿岸部、太平洋の冷却効果を受ける比較的新しいワイン産地のものだ。Viña Leyda, Loica Vineyard Rosé Pinot Noir 2011 Leyda Valley はバラの花びらのような香りのする比較的シンプルなピノ・ノワールだが、多くの典型的に短命なロゼよりも長持ちする。このワインはおそらくヴィンテージを経るにつれて良くなるだろう。

一方、ヨーロッパ以外のロゼで私のお気に入りの3本目はこれまで述べた比較的デリケートなワインとはかなり異なる。それはイギリスの生協で販売されており、非常に若々しいワインで、それほど良い年ではない2011は7.5ポンドである。しかし、今回テイスティングしたそれ、すなわちFairview, La Capra Rosé Pinotage 2010 Paarlは非常に生き生きとしていた。ヴィクトリア朝の大道芸のラベルと、南アフリカのトレードマークである赤ワイン用ブドウから作られる力強い果実味が「僕は他とは違う」と叫んでいるようである。他の多くの低価格帯のロゼ(および白)ワイン同様、わずかな二酸化炭素を溶けこませることによってフレッシュさを保っているのだが、このワインは果実味が非常に強く、二酸化炭素とバランスを取ってくれるので、場合によってはあまり好ましくないこの手法が功を奏している。ブラーイ(訳注:アフリカのBBQ)に持って行きたいものだ。ただし2011はもう少し瓶熟成が必要であることにも注意されたい。

火曜に発表したルイスの記事(offbeat Spanish bits and pieces)で特集されていた最も珍しいロゼと言えば間違いなく、López Heredia, Viña Tondonia Rosado Gran Reserva 2000 Riojaだろう。このワインのスペインでの価格は馬鹿馬鹿しいぐらい不当に低いと言えるが、イギリスのような輸出市場では20.75ポンドになる。2011の最もコストパフォーマンスの良いロゼはスーパーの棚ではなく、The Wine Society のリストで見つけられる。私のお気に入りの中で唯一のスペイン産であるこのワインはスペインのロザートのメッカで作られ、典型的なロゼ用のブドウ、グルナッシュ(ガルナッチャ)を使用している。 また、Vicente Malumbres, Rosado 2011 Navarra はたった5.95ポンドだが、力強いワインなのであまり冷やして提供されないように留意する必要がある。繊細ではないが非常によくバランスがとれており、酸が非常に生き生きとしている。

しかし、本当に驚いたのは最初に述べたように今やイタリアで多くのバラエティに富んだロゼが作られている点である。私はこれまで、イタリアよりもスペインの方がロゼワインを発掘しやすいと考えていた。しかしイタリア南部、シチリアやサルデーニャは個性あふれるフルボディのロゼワインを生み出す。おそらく最も特徴的なのはエトナ山の火山性土壌から生み出されたものだろう。Terre Nere, Rosato 2010 Etna は価格も高くなく、2種類の地ブドウ、ネレッロ系品種から作られており、マグマに味があるとしたらこういう味なのかもしれないと思うワインだ。臆病な人やセラーでの熟成には向いていない。早いうちに冷やして炭火で焼いた肉と共に飲むべきだ。同様に、それよりはかなり価格は高くなるが究極なのがサルヴォ・フォティ(Salvo Foti)の作る I Vigneri, Vinudilice Rosato 2009 IGT Siciliaだ。いわゆる自然派ワインによくあるリンゴの皮の香りがする。Fotiはシチリアワイン界では地元のヒーローであり、この島で最も尊敬を集めるワインを作り出す人物だ。このワインは刺激を求める人にはお勧めするが、用心深い倹約家にはお勧めしない。

昨夏プーリアへ旅行した際にはイタリアの踵がA Mano, Rosato Primitivo 2011 IGT Pugliaのように素晴らしいフルボディのロゼの産地としてどれほど優れているかを思い知らされた。また、全てアリアニコで作られたFeudi di San Gregorio, Ros’aura Rosato 2011 IGT Campaniaも非常に気に入った。

更に普通ではないけれども奇抜過ぎないものにはコルスのSaparale, Rosé 2011 Corse Sartène from Corsica がある。この上なくワイルドだが徐々に重要となってきているワインのロゼというカテゴリーにおいて全くもって素晴らしい品質である。

ロゼのお気に入り

Chêne Bleu, Rosé 2010 Vin de Pays du Vaucluse 13%
£22.28 Justerini & Brooks

Ch Léoube, Le Secret de Léoube Rosé 2011 Côtes de Provence 13%
£20 Ocado, Corney & Barrow, Daylesford, www.rose-wine.com

Ch d’Esclans, Rosé 2011 Côtes de Provence
£118 for 6本セット Goedhuis

Vincent Delaporte, Rosé 2011 Sancerre 13%
£13.95 Robert Rolls (ケース販売のみ)

Saparale, Rosé 2011 Corse Sartène 13%
£13.75 Yapp Bros

Dom Bruno Clair, Rosé 2009 Marsannay 12.5%
£13.28 Justerini & Brooks

Innocent Bystander, Rosé Pinot Noir 2011 Victoria 12.5%
£11.75 HarperWells

Viña Leyda, Loica Vineyard Rosé Pinot Noir 2011 Leyda Valley
£11.50 Hic Wines

Terre Nere, Rosé 2010 Etna 13%
£10.78 Justerini & Brooks

Fairview, La Capra Rosé Pinotage 2010/11 Paarl 13.5%
£7.50 Co-op

Vicente Malumbres, Rosado 2011 Navarra 13.5%
£5.95 The Wine Society

興味深いロゼワインおよそ90本のテイスティング・ノートも参照のこと。