ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

122.jpg8月14日午後9時 

以下のコメントをリーデルから受け取った。 

「2015年8月8日土曜日、弊社はティム・アトキンとリーデルの間でロン・ウォッシュマン(Ron Washam)による英国での出版について和解した旨の声明を発表しました。リーデルは以下の点を明確表明致します。この和解によってこの件は完全に解決し、今後ロン・ウォッシュマンを含む関係各位に対しいかなる法的手段も取ることはありません。」

原文はさらに以下のように続いていた。「ティム・アトキンとワイングラス・メーカーであるリーデルはカリフォルニア在住の記者ロン・ウォッシュマンによってtimatkin.comに今週投稿された記事に関する意見の相違を解消したことを謹んでご報告致します。」ティムの説明にはこのようにあった。「ロンは彼なりの独特なやり方でワイングラス・メーカーであるリーデルをからかったのですが、私は個人的にリーデルを尊敬しているし、同社の製品を愛用しています。私のウェブサイトでは、この記事が風刺記事であるとの説明が不十分でした。そのためにゲオルグ・リーデル(Georg Riedel)氏に不愉快な思いをさせてしまったことについて心からお詫びを申し上げます。ロン・ウォッシュマンの記事を作成するに当たりゲオルグ・リーデル氏へのインタビューは一切行われておらず、記事にある引用は全てフィクションであり、ゲオルグ・リーデル氏および彼の会社のいかなる私的、および公的意見を反映したものではないことをここに明記させていただきます。」

ティムとの和解に際し、ゲオルグ・リーデルはこのようにコメントしている。「この件について円満な解決に至ることができ、うれしく思っています。私は長いことティムを知っており、我々の間にはお互いに対するプロとしての尊敬の念が存在します。私は言論の自由を支持しており、けしてそれを抑圧する意図はありません。読者に誤解を与えないような明確な記載があれば風刺は歓迎です。当初の投稿ではこの点が明確ではなかったため、個人的な侮辱となり、私が強く否定するような意見を私と結びつけていた点が問題でした。これは私にとってこの上なく不愉快な経験でしたが、和解に至り前に進むことができることをとても喜ばしく思っています。」

8月14日午前10時 

ロン・ウォッシュマンはカリフォルニアのソムリエ出身の風刺家で、ホースマスター・オブ・ワインとして自身のブログに頻繁に、またティム・アトキンのウェブサイトに毎月投稿している人物だ。彼の記事はたいてい非常に辛辣で、稀にユーモアがあり、時にはその両方でもある。私も何度もこのホースマスターの標的にされてきた。女性の登場人物が欲しいときには特に、だ。

我々の多くは彼のある種のユーモアを含んだ辛辣な言葉に寛容だが、先日このホースマスターはティムのウェブサイトにコラムを提供し、グラスメーカーのゲオルグ・リーデルを辛辣に風刺した。ところが、このオーストリア人には彼の笑いが通じなかったのである。弁護士を通じ彼はウォッシュマンとアトキン両社に対し法的な手段に出ると警告した。名誉棄損法がアメリカよりはるかに厳しいイギリスで、冗談では済まされなかったのである。その結果、やや冗長な前置きとしてティムのウェブサイトにはティムがリーデル製品のファンであること、リーデルへの実際のインタビューは行っていないこと、「これは風刺を意図した記事です」ということを明記することとなった。ロン・ウォッシュマンに対する法的手段の警告は未だ撤回されていないため、ホースマスターは弁護基金を立ち上げたのだが、どうやらその必要はなくなりそうだ。

彼自身が認めている通り、これはウォッシュマンの最もできのよい投稿とは言えないものの、リーデルのユーモアに欠いた高圧的な反応によって多くの人々がホースマスター側につくこととなった。特にアメリカのワイン(およびテニス)・ライターであるマイク・スタインバーガー(Mike Steinberger)は同僚のジョン・ボネ(Jon Bonné)の支持を得て昨日長い時間をかけてゲオルグ・リーデルへの公開質問状の作成にあたった。私はこのやり方がやや尊大に感じたのと同時にリーデルの警告は非難されるべきだと考えたため、代わりにただ「ゲオルグ、もっと人生を楽しんで(Get a life, Georg)」とみんなでツイートすることを提案したのだが、あまりに未熟すぎると却下された(私ときたら、いつまでも学生気分である)。

私はこの24時間のかなりの部分を渦中の書面に対する偉大な署名の一覧を世界中から集める手伝いをして過ごした。だがつい1時間ほど前、おそらくアメリカ人はまだ眠っているだろう間に、南アフリカで最も著名なワイン・ライターの一人であるマイケル・フリジョン(Michael Fridjhon)から返信が来た。彼はあらゆることに関わっていて、その中にリーデルも含まれていたようで、私のメールに対しリーデルと話してみると約束してくれた。「メールを送ったらすぐに返信がきて、さらに電話がきましたよ。」彼は続けてそう報告してくれた。「ロン・ウォッシュマンに対して法的措置を行う意図は全くないそうです。彼らは単純に、それが風刺であると理解していなかっただけのようで、ティムがウェブサイトにそれを明記したことで彼らとしてもすべてが終わったと考えているようです。私は彼らにそれを明確にする声明を発表すべきだと提案したところ、ジュリー(ゲオルグの秘書)から、(明らかに弁護士と相談したのでしょう)できるだけ早く、おそらくはティムを通じる形でそうすると返信がきました。」

さあ、これで解決だろう。コミュニケーションの正の力だ。

原文