メディア業界の行状に興味を持っている向きならおそらく、木曜のニュースでフィナンシャル・タイムズ、すなわちニックと私が毎週寄稿している国際的な新聞がイギリスの出版社であるピアソンから日本の新聞関連複合企業、日経に売却されたことはもうご存知だろう。この知らせはフィナンシャル・タイムズのニュースルームですら寝耳に水で、彼らはドイツのアクセル・シュプリンガー・グループに売却されるものと信じていたとのことだ。
このニュースをようやく消化することができた今、私はそのことを歓迎している。新しい日本の経営者が私が2年前に「A yen for quality」で書いたようなワイナリーを所有する日本企業の不干渉モデルが実現すればことさらである。ピアソンはペンギンを所有しており、偶然にもワイン・グレープスの出版者でもあるが、すでに教育分野の出版に注力する方針を決定しているが、ある意味これまで長いこと予測されてきたことである。日経の主要な出版物はその名の通りで、それらは高く評価され日本のフィナンシャル・タイムズとして広く知られている。
そこには間違いなく相乗効果が生まれるだろうし、日経が長期的かつ世界的視野でこの投資を行ったことは間違いない。日経にとってフィナンシャル・タイムズの魅力のひとつは、デジタル時代への移行が非常に順調なことだろう(購読契約の70%が既に紙媒体ではなくft.comへ移行している)。フィナンシャル・タイムズの最大の市場はアメリカで、イギリスがそれに続き、世界中でも販売されている(だから私のフィナンシャル・タイムズでの記事では他のイギリスのワイン・コラムに比べてイギリスの小売業者に関する記述が非常に少ない傾向にある)。私はもちろん、食と、今ではワインも日本の文化に非常に重要であることを喜ばしく思うし、とりわけ、本当に偶然ではあるものの来年3月にニックと共に久しぶりに日本を訪問する予定を立てていたことはうれしい限りだ。
フェリックス・サーモン(Felix Salmon)のフィナンシャル・タイムズの記事はこの変化が日経とフィナンシャル・タイムズにどう影響するかを補足してくれるだろう。我々の編集者であるライオネル・バーバー(Lionel Barber)も同様に心を躍らせている。すなわち、全体として見て、これは朗報なのだ。他の売却先候補で予測されていた不利益を考慮するとなおさらである。
この売却を祝って私は来週から4週間フィナンシャル・タイムズをお休みする(ニックも次の土曜に掲載されるコラムを最後に4週間の休暇に入る)。そしていつもの通り、有能なアンドリュー・ジェフォード(Andrew Jefford)が私の代理を務めてくれる。
ピアソンは明らかにフィナンシャル・タイムズの売却金8億4千400万ポンドに満足している。一方、彼らは当時1億1千万ポンドをシャトー・ラトゥールの主要株主として受け取った1989年にも喜んでいただろう。その年にニックはフィナンシャル・タイムズで記事を書き始め、私が書き始めたのは翌年だった。聡明なフランソワ・ピノー(François Pinault)はこのボルドーの至宝を1993年8千600万ポンドで手に入れている。だが、先週の短い訪問から判断するに、彼は今、プリムールに出さないワインのための貯蔵庫の建設に気が狂ったように投資していることも付け加えておきたい。