この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。
先日サウスウォールド・リタラリー・フェスティバルでサイモン・ロフタス(Simon Loftus)と共演した。彼はかつて地元のワイン商、アドナムス(Adnams;とその他多岐にわたる活動)を意図なんていた、ゆるぎない自信に満ちた人物だ。彼の引退はあまりに早い。
私がワインと恋に落ちたのはシャンボール・ミュジニー、レザムルーズ1959のグラスだったと話すと、彼は若干7歳にしてシャトー・ムートン・ロートシルト1945で同じく恋に落ちたと話した。彼は現在ではこのようなワインが新興実業家やアラブの石油王レベル以下の人間には手の届かないものになっていることを憂慮していた。今の若者は私たちのように人生を変えるようなワインにどうやって巡り合うのだろうかと彼は心配していた。
私は現状がそれほど嘆かわしいものではないと考えている。ワインの世界は我々のような二人のシニア世代がワインと恋に落ちた頃から計り知れないほど大きく変わったのだ。現代のワイン消費者にははるかに広い選択肢がある。偉大なワインは世界中で作られ、多くのワイン消費者にとって彼らの心に火をつけるのはクラシックなものよりも突飛なものだからだ。上質なボルドーは特に多くの人にとって時代遅れと映っている。
この点を念頭に置くと、心躍る季節に自分で飲んだり誰かに飲ませたりするのに私がお勧めする本当に素晴らしい赤ワインの選択の幅は大いに広がる。その筆頭には東欧のワイン生産が恩恵を被った西欧の投資旋風を紹介したい。非常にすばらしいワインの中にはSome very fine wines are to be found in unlikely corners. ストビ ヴラネック(Stobi Vranec)2011 ティクヴィシュ(Tikves, £9.99 Wine Rack, Adnams) がある。このワインは見事に熟成し、マケドニア共和国以外の主要国由来であれば2倍の価格が付くだろう。その明らかに熟練した腕によるブレンドは私の友人でもあるカロライン・ジルビーMWによるもので、彼女はワインと東欧事情の専門家だ。
より確立されたものとしてはイタリア・ワインが急成長中で、シチリア東部のエトナが間違いなく今最も流行のイタリア・ワイン産地だろう。地質学者が絶対にありえないと言うだろうが、多くの最高の赤ワインからは(ほぼ自動的に?)火山や溶岩、ある種の温かい土っぽさのようなものを想起させられる。中にはとても高価なワインもある。パッソピッシャーロ(Passopisciaro)とテッレ・ネレ(Terre Nere)はその先駆者だが、私はロメロ・デル・カステッロ アレグラコーレ・エトナ(Romeo del Castello, Allegracore Etna、£19.50 Tanners)2013を非常に良いと思った。 その2014はさらによくなっていて、シチリアは昨年一人勝ちだと言えよう。この素晴らしいワインはエトナの最も高貴な黒ブドウ、ネレッロ・マスカレーゼ(Nerello Mascalese)から作られている。
一方ネッビオーロはイタリアのブドウの中で本当にワイン・ラヴァーの心をくすぐるものだろう。純粋な形式としてはバローロやバルバレスコというアペラシオンを掲げているが、それらは比較的希薄でその需要が高まってきたため安価なことはめったになく、その上不便なことに何年かの熟成を必要とする。ジュゼッペ・マスカレッロ、サント・ステファノ・ディ・ペルノ2008 バローロ(Giuseppe Mascarello, Santo Stefano di Perno 2008 Barolo, £74.95 Berry Bros & Rudd) はすでに息をのむほど素晴らしく、さらなる熟成も期待できる。私は尊敬すべきブルゴーニュの赤のあとに同じヴィンテージのこれをテイスティングしたが、バローロに1票、ブルゴーニュには0票だった。果実は既に丸みを帯びてチャーミングだが、14.5%というアルコールにも関わらずこのワインからは繊細さがにじみ出ている。もしそのようなものが存在するとすれば、良い意味で命が震えるワインだ。
バローロやバルバレスコの北部に至るとネッビオーロもかなり落ち着いた価格となり、アペラシオンはガッティナーラ、ゲンメ、レッソーナなどとなる。トラヴァリーニ・トレ・ヴィーニュ 2009 ガッティーラ(Travaglini, Tre Vigne 2009 Gattinara、£29.99 AG Wines 販売は12本から)はおかしないびつな形をしたボトルだが余韻の長く残るネッビオーロのタールとバラの香りに、非常に魅力的な熟成した果実の香りをまとっている。
香り高く、たいていは色の淡いカラブリアのブドウ、ガリオッポは「南のネッビオーロ」として知られており、私も大好きだ。サンタ・ヴェーネレ・ガリオッポ2013チロ(Santa Venere Gaglioppo 2013 Cirò、£7.95 The Wine Society)はいつでもお買い得なのは間違いない。柔らかく丸みを帯びた軽やかな、魅惑的に土っぽい(贅沢な塵とでも言おうか)余韻のある赤ワインが好きならば、だ。
南半球もまた、価値ある素晴らしいワインを生み出している。チリのシラーは移り気な生き物で、南アフリカ同様やりすぎ感のあるものが多いが、フレッシュでバランスの取れたカーサス・デル・ボスケ、グラン・レゼルヴァ・シラー2012 カサブランカ(Casas del Bosque, Gran Reserva Syrah 2012 Casablanca、£14.50 The Good Wine Shop他多くの個人商店)には嬉しい驚きをもらった。まさに食欲をかきたてる一本だ。
より繊細で洗練されたシラー主体のワインはぜひローヌ北部の生産者に飲んで欲しいと思うのだが、南アフリカの新星、ラール・レッド2013 スワートランド(Rall Red 2013 Swartland 約£24 Swig, Roberson, Handford他)だ。ケープで流行の最先端の地のシストで育つシラーにはジューシーで究極なまでにフルーティな2014のグルナッシュが加わる。クラシカルで胡椒の香りのする2013のシラーをより引き立てるためだ。
もちろん、南半球で最も長くシラー(シラーズ)の名声を確立してきた国はオーストラリアである。この品種の新たな形(樽が効きすぎておらず、アルコールが高すぎず、磨き抜かれたタンニンで非常に興味深い)で最も尊敬を集める生産者の一人がキャンベラのティム・カーク(Tim Kirk)である。彼のクロナキラ・シラーズ2013 ヒルトップス(Clonakilla Shiraz 2013 Hilltops, 約£18 Waitrose, Noel Young小売店多数)は彼のトップキュヴェ(熟成が必要なもの)ではないが、既に驚くほど繊細な飲み口だ。
また、世界の輝かしい流行のスポットライトの中に躍り出た小さな産地としてはジュラがある。私はそこの最高の赤ワイン用品種、トルソーに夢中だ。ベストセラーからは程遠いがB&Sティソ、サンギュリエ・トルソー2013 アルボワ(B & S Tissot, Singulier Trousseau 2013 Arbois、£27.50 Berry Bros & Rudd, Hedonism)には軽やかな12%のアルコールに驚くほど多くの花と鉛筆の香りが詰め込まれている。
だがこれらのフレッシュな最新のスタイルにやきもきして、伝統的なクラシック・ワインを切望する向きには、ボデガス・リオハナス・モンテ・レアル2009 リオハ(Bodegas Riojanas, Monte Real 2009 Rioja £11.99 Adnams)をお勧めする。豊かなヴィンテージだったため、これは甘くて古典的なバニラの香りのするアメリカン・オークで熟成されており、1970年代にワインを飲んでいた頃の思い出を引き出してくれるに違いない。あるいはその子供たちの新しい熱意を呼び覚ますかもしれない。これは特にジビエと相性が良いだろう。
上質な赤のブルゴーニュも、この季節ありとあらゆるテーブルで見られるシチメンチョウや野生的な香りのする鳥に非常に魅力的なお供となるだろう。良いものに当たる確率は、正直なところあまりよくなかった以前と比べて向上している。今特に魅力的なのはフレデリック・マニャン、ヴィエイユ・ヴィーニュ2012 ジュヴレイ・シャンベルタン(Frédéric Magnien, Vieilles Vignes 2012 Gevrey-Chambertin、£36.70 The Wine Tasting Shop)で、さらなる熟成も期待できるが今でもその構成は素晴らしい。
よりコストパフォーマンスが進化しているものとしてはドメーヌ・セリニー、ラ・ドミノード・プルミエ・クリュ2012 サヴィニー・レ・ボーヌ(Domaine Serrigny, La Dominode Premier Cru 2012 Savigny-lès-Beaune (£26 The Wine Society)だろう。樹齢90年の古樹から作られるこのワインは嬉しくなるほどピュアな果実を楽しめる。
ワインの世界はあなたの冒険を待っている。さあ、いつ始めますか?
(原文)