ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

154.jpgブルゴーニュ2014に関する全ての記事とテイスティング・ノートへのリンクはこのガイドを参照のこと。

これはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のやや長いバージョンである。

先々週のロンドンはブルゴーニュ週間だった。非常に多くの優れた作り手の若い2014ブルゴーニュが約24のイギリスのワイン商によって出展され、フランスからも著名なテイスター達がわざわざロンドンまでやってきて、ヴィンテージを把握するために最適なこの例年行事を活用していた。

経験豊かな9名のブルゴーニュ専門インポーター提供のテイスティングでの私自身のブルゴーニュの印象(その他はウェブサイトで同僚がカバーしてくれている)を今回のテイスティングで補完してもなお、私は2014のブルゴーニュに関しては楽観的な印象を持っている。概して白は卓越しているが、赤もチャーミングなものが散見され、熟成ポテンシャルがやや短いとはいえ、ブルゴーニュ愛好家に愉しみをもたらしてくれるだろう。

今回私はブルゴーニュの価格高騰の流れを念頭に置き、比較的お買い得なものを見出すことに注力していたのだが、嬉しいことにテイスティングした100のワインのうち60に「GV」(お買い得)と、さらに10に「VGV」(非常にお買い得)あるいは「VVGV」(とてもとてもお買い得)とコメントしている。ただし、2014がその前の数年と比べて収穫量が多かった(夏の雹による深刻な被害を受けたヴォルネイとポマール、ムルソーの一部を除く)点と、昨年に比べてユーロ安である点も手伝っているのは否めない。

若手生産者の野心や決意、洗練度合いなどもこのお買い得ワインの増加傾向に影響している。彼らは実質的にほぼ全員技術力が高く、世界中を旅して経験を積み、前の世代とは違って同業者とよくコミュニケーションを取り、自分たち自身で継続的な自己評価を行っているのである。

また、常に新しい生産者の参入も一因だ。彼らの多くはまだその名声を確立してはいないため、ワインに高い価格をつけることができない。その非常に若い生産者の良い例がシャントレーヴ(Chanterêves;もともとはシャントリーヴ(Chanterives))だ。このサヴィニー・レ・ボーヌの「ネゴシアン醸造所」はドイツで腕の立つブルゴーニュ・ブドウの生産者、ポール・フュースト(Paul Fürst)とともに修業を積んだトモコ・クリヤマ(栗山朋子)が経営している。その相棒はギヨーム・ボット(Guillaume Bott)で、現在日中はその指導者を悲しいことに失ったドメーヌ・シモン・ビーズ(Domaine Simon Bize)でワインを作っている。シャントレーヴのワインの中で特に2014の白は心地よく、日本的と表現したくなるような繊細さを持ち合わせている。特に引き付けられたのはシャントレーヴ2014ブルゴーニュ・ブラン(108ポンド、Flint Wines)で、春に咲き乱れる花のような香りがする。また、はるかに高級なシャントレーヴ2014サン・ロマン・ブラン(180ポンド、Flint Wines)も大変気に入った。実に壮大で余韻の長いワインで、一時は忘れ去られていたこのアペラシオンのポテンシャルを明確に表現している。

(公正を期すため、全てのワインに(今では多くのワイン商が個人的には大歓迎の6本単位での販売を行っているが)12本単位での保税価格を併記するようにした。紹介したワインが既にイギリスで売り切れていた場合はご容赦願いたい。フィナンシャル・タイムズの締め切りをぎりぎりまで伸ばしたのだが、ブルゴーニュに関しては非常に在庫が希薄なのだ。その場合は同じ生産者の別のワインを試してみてはどうだろう?もちろんワイン商のお勧めも活用してほしいが、それらとの比較もぜひ行ってほしい)

ブルゴーニュ愛好家にとって気候変動の幸運な副産物と言えば、これまでブドウの成熟に苦慮していたアペラシオンで今はほとんどの年に完熟したブドウが得られるようになった点だろう。サンロマン(上述)は間違いなくそのいい例だが、かつてほとんどの有名なワイン産地、ムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェなどと比較して劣っていると考えられてきたサントーバンは今や実質的にそれらと同レベルであると考えるべきだ。しかも価格はまだ追いついていない。

「GV」を付けた白ワインのうち5つ以上がサントーバンのもので、うち2つはユベール・ラミー(Hubert Lamy)の才能あるワインメーカー、オリヴィエ・ラミーによるもので、ユベール・ラミー・デリエール・シェ・エドゥアール・プルミエ・クリュ(Derrière chez Édouard)2014サントーバン(220ポンド、Goedhuis)とさらに凝縮感の高いユベール・ラミー・クロ・デ・ラ・シャテニエール・プルミエ・クリュ2014サントーバン(250ポンド、Lea & Sandeman)だった。他に印象的だったのはサントーバンのもたらす価値あるワインで、フェルナン・エ・ローラン・ピヨ(Fernand & Laurent Pillot;(Lea & Sandeman)、マルク・コラン(Marc Colin ;Goedhuis)そしてバンジャマン・ルルー(Benjamin Leroux ;Howard Ripley))だ。また、11月にブルゴーニュで行ったテイスティングからはピエール・イヴ・コラン・モレ (Pierre-Yves Colin-Morey)とフランソワ・カリヨン(François Carillon)を挙げておきたい。

白の中でシャブリはブルゴーニュのコートドールと比較してまだ価格が低い方だ。中でもアデマール・エ・フランシス・ブーダン(Lea & Sandeman)は全体的に安すぎると感じた。

ブルゴーニュの反対側、マコンもまた2014の上質な白を多く産出している。これは長く涼しい夏のお蔭でキリリとした酸が保てたことと、最良の生産者の安定感が増したことによるのだろう。中でも特に洗練された例を下記に挙げた。

また、幸運なことにマコンとコートドールのはざまにあるコート・シャロネーズには今、非常に熟達した生産者がどんどん増えている。ジャン・バティスト・ポンソ(輸入はFlint Winesで、モレ・サン・ドニのローラン・ポンソとは無関係)はその一人で、赤と白両方の才能を有しているようだ。これは全てのブドウを大きなメーカーに販売していた一族の古い習慣から抜け出したドメーヌの偉大な例と言えよう。2014、彼のリュリー白は抜きん出ていて、赤もバランスがよく、果実味はこれまでになく熟して魅力的だ。

シャロネーズでその他のお買い得として見つけたものにはポール・エ・マリー・ジャクソン・ラ・ピュセル・プルミエ・クリュ2014(Paul et Marie Jacqueson, La Pucelle;140ポンド、Lea & Sandeman)と、肉付きがよくほんのわずかに優しい田舎臭さを感じさせる赤のドメーヌ・デ・モワロ2014ジヴリ(102ポンド、Howard Ripley)がある。

赤ワインの最安値層では、よくできたブルゴーニュ・ルージュが最もお買い得と言えよう。いつものごとくスタイルも品質もバラバラではあるのだが、このヴィンテージの早熟な魅力を表現するためにやさしく作られたワインたちは心から楽しむことができるものだった。例えばジャスティン・ジラルダン(Justin Girardin)2014ブルゴーニュ・ルージュ(69ポンド、H2Vin)、レブルイユ(Lebreuil)2014ブルゴーニュ・ルージュ(98ポンド、Flint Wines)、他のどのワインよりしっかりしたものとしてはニコラ・ロシニョール(Nicolas Rossignol)2014ブルゴーニュ・ルージュ(120ポンド、Lea & Sandeman)を、新星としてはジル・デュロシェ(Gilles Duroché)2014ブルゴーニュ・ルージュ(132ポンド、Flint Wines)とジョルジュ・ノエラ(Georges Noëllat)2014ブルゴーニュ・ルージュ(150ポンド、Flint Wines)などである。

ブルゴーニュ・ブランの中で際立った例はドメーヌ・ベルナール・モロー(Domaine Bernard Moreau)2014ブルゴーニュ・ブランで、シャサーニュの才能あふれるアレックス・モローが瓶詰した今のところ唯一の2014だ。12本で140ポンドというのは驚くべきことで、Flint Wines で入手可能だ。また、OW Loeb and Lay & Wheeler でも輸入されている。

また、高級なワイン商からはレミ・ロラン(Rémi Rollin)がその2014について特に言及する価値があるだろう。レミ・ロラン・スー・ル・ボワ・ド・ノエル・エ・ベル・フィル(Rémi Rollin, Sous le Bois de Noël et Belles Filles)2014ペルナン・ベルジュレス・ルージュ(150ポンド、Justerini & Brooks)は低価格の素晴らしいワインで、レミ・ロラン・スー・フレティユ・プルミエ・クリュ(Sous Frétille)2014ペルナン・ベルジュレス(285ポンド、Justerini & Brooks)も同様だ。

そこそこの値は張るがドメーヌ・カスタニエ(Domaine Castagnier)もベリー・ブラザーズ・ラッドによる2014ブルゴーニュのラインナップに歓迎すべき一品だ。

そのほかのお買い得については「Burgundy 2014 – some bargainsと、1500以上に上るブルゴーニュ2014のテイスティング・ノートについてはこのガイドを参照してほしい。イギリス以外での取扱業者はwine-searcher.comで見つけることができる。

お買い得なマコン2014

表示されている価格は私がテイスティングしたイギリスのインポーターによる12本あたりの保税価格である。今年後半まで配送されない予定のワインもある。

Christophe Cordier, Clos du Four 2014 Mâcon-Milly-Lamartine (£110 H2Vin)

Christophe Cordier, En Faux 2014 St-Véran (£110 H2Vin)

Dom Clos des Rocs, En Chantone 2014 Pouilly-Loché (£135 Flint Wines)

Dom Clos des Rocs, Clos des Rocs Monopole 2014 Pouilly-Loché (£135 Flint Wines)

Bret Bros, Domaine de la Soufrandière, Les Longeays 2014 Pouilly-Vinzelles (£165 Berry Bros & Rudd)

Dom Daniel Barraud Sur La Roche 2014 Pouilly-Fuissé (£180 Lea & Sandeman)

上の写真はポール・モールのフィリップ・モールド・ギャラリーにあるグッドハウス(Goedhuis)のテイスティングで撮影したもので、同時にポール・モール67で開催されていたリー&サンデマン(Lea & Sandeman)のテイスティングと非常に近く便利だった。

原文