この記事の短いバージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。テイスティング・ノートはwhites, right bank reds および left bank redsを、ボルドー2005全体についてはこのガイドを参照のこと。
熟成した、あるいは熟成しつつあるボルドーをテイスティングすることは注意深く調整されたバレル・サンプルをテイスティングするよりもはるかに有用だ(今年も4月の上旬にボルドーに行き2016のバレル・サンプルをテイスティングする予定ではあるのだが)。さらにそのテイスティングがブラインドの比較テイスティングであればさらに有益である。
だから先月の終わりにイギリスのワイン商のいつもの顔ぶれと共にテームズ川添いに佇むファー・ヴィントナーズの施設で非常に高く評価されている2005の進捗を確認する機会を得たのはとてもうれしいことだった。(我々はほとんどの年に10年前のヴィンテージをテイスティングするのだが、2005はそのタンニンの高さと熟成の遅さで有名だったため、熟成の速い2007と2005を2年前に交換し、後者には検証までに2年多い瓶内での熟成時間を与えた。)
ワイン商は気難しい一団だ。20点満点で16点以上を付けるのはそのワインが彼らにとって確実に素晴らしいものでなくてはならない。テイスティングのあと、いつものように今世紀最高の3つのヴィンテージを上げるよう言われたのだが、多くの参加者が2005を前回のトップの位置から2009と2010に次ぐ三位に下げていた。全体的な印象としては、最高のワインは確かに本当に素晴らしいものだった一方、果実味が失われた後までタンニンが強く残りすぎているものもあった。
この傾向は特に最初にテイスティングしたサンテミリオンに顕著で、その多くが前世紀最後の10年ほどでサンテミリオンが限界まで(そして時には飲むに堪えないほどまで)行っていた、当時人気の過大なまでに凝縮した現代的なスタイルで作られていた。このことはおそらく我々の2005についてのレビューに対するワイン商たちの熱狂的とは言えない反応にも影響を与えそうだ。仲間の記者と私はこのヴィンテージの劇的な変化に寛容な傾向にあり、スコアもそれほど厳しくつけていない。確かに2009ほど果実の容易な成熟もこの上ない調和もなく、2010ほどの流動的な古典主義やフレッシュさもないが、2005の多くは現在あるいはこの先、完全な成熟と印象的な骨格のコンビネーションを見せてくれるはずだ。価格も2009や2010ほどの高値ではなく、中にはお買い得と思われるものすらある(下記参照)。
だが2005のワイン、特に赤については現在ボルドーで作られているものとは異なるスタイルで異なる野心をもって作られていることは間違いない。当時は圧倒的な質量、そして場所によってはアルコールの高さが果実の成熟と同じぐらい美徳とされていた。その結果収穫日はこの上なく遅く設定されたが、現在行っているような個々の区画の性格に従って区画別に分析し収穫を行うような精密さを伴ってはいなかった。また、メルローは今よりも人気が高かった。新樽の人気も2005年にはまだまだ高く、金銭的に可能なら何の疑いもなく100%新樽を使っていたが、現在その比率は70~80%に近いところだ。
ここ数年ボルドーでは選果にこの上ない重きが置かれてきた。完ぺきではない、あるいは完熟していないブドウは、ブドウの成熟が早い年には多少の未熟果がワインにフレッシュさをもたらしてくれるとの議論があるにも関わらず除外されてきた。この点が一部の2005のワインに品質が伴わない理由の一つとも言えよう。また、最近では本当に最高品質の樽だけがトップワインに使われ、残りはセカンド、あるいはサードワインに振り分けられ、その数が増える傾向にある。現在多くのボルドーの生産者は20005当時よりもはるかにフレッシュで抽出の少ないスタイルのワインを作っているとも言える。
概してポムロールはサンテミリオンよりはるかに出来が良く、左岸ではペサック・レオニャンの多くが今飲みごろだ。値ごろ感はいつもの通りオーメドックに感じられる一方、マルゴーの多くのワインはまだまだ固く、2005年時点ではその天賦の芳香よりも凝縮感を与えることに注力していたように感じられる。サンジュリアン、ポヤック、サンテステフのワインは遥かに古典的で、辛口のカベルネ・ソーヴィニヨンの果実味をようやく楽しんで飲めるようになってきたところだ。
最重要と言える156本のボルドー2005の赤ワインに加えて白のボルドー9本と(オーブリオン系列のものはなかったが)、有名どころを含む21本のソーテルヌのテイスティングも行った。辛口白のほとんどはもうピークを過ぎてしまっていたが、酸がさほど高くなかったこのヴィンテージから考えると驚くことではない。ただしシャトー・ブスコー・ブラン(Ch Bouscaut Blanc)はこの水平テイスティングで連勝を続けている。
ソーテルヌの2フライト(1回に12本以下のワインをテイスティングし、「シングル・ブラインド」で行う。これはそれらのワインの産地は明かされるが個々のシャトーは明かされないと言うものだ)は遥かに楽しめるもので、スデュイロー(Suduiraut)はイケムを上回るお気に入りとなった。どちらのワインも2009年このテイスティング会とサウスウォールドのテイスティングで登場し、ヴィンテージの4年後にテイスティングしているものだ(お決まりとして4年目のワインをテイスティングし、その後同じワインを10年目にテイスティングすることになっている)。
このテイスティングを通してショックを受けたのは、あまりに多くのボトルの状態が悪かった点だ。TCAというカビの生えたコルクに由来するよく知られた欠陥も多かったが、時にはワインが酸化してしまっていたり、過剰な揮発酸などによる不快臭を持つものもあったりした。186本のうち14本ものワインにこれら何らかの欠陥があり、最も多かったのがTCAだ。7.5%という欠陥の比率は製品が何であれ高すぎるし、こんなかび臭くて点数がつけられないものが1本250ポンドで売られているのだ。
今回のようなボルドーの水平テイスティングでの詳細なコメントを公開するとしばしば聞かれるのが今回の点数と似たような他のテイスティング、例えばファーのライバルであるBIが2年前に開催したもう少し数の少ない2005の10年目のテイスティングでつけた点数との不整合だ。ここで私はマリエール・カゾー(Marielle Cazaux)の言葉を紹介したいと思う。彼女はポムロールにあるラ・コンセイヤント(La Conseillante)の博識なワインメーカーだが、彼女によると、個々のコルクを分析し同じケースに入るボトルの質に完全な一貫性を求められる新しいシステムがコルク業者によって提供され、それを取り入れるようになったのは2014ヴィンテージの瓶詰めからだそうだ。
お気に入りのボルドー2005
以下のワインすべてに20点満点で18点以上を付けている。成熟の遅いワインのいくつかは17.5+++としている。価格はこれらのワインの入手先を提案する世界的なサーチ・エンジンであるWinesearcher.comに従って1本あたりの価格を付記した。
Angélus, St-Émilion £390
Ausone, St-Émilion £1,415
Bon Pasteur, Pomerol £87
Cheval Blanc, St-Émilion £693
Evangile, Pomerol £241
Haut-Brion, Pessac-Léognan £704
Lafite, Pauillac £917
Lafleur, Pomerol £1,191
Montrose, St-Estèphe £126
Mouton-Rothschild, Pauillac £587
Petit Mouton, Pauillac £203
Petrus, Pomerol £3,276
La Tour Blanche, Sauternes £54
買うべきボルドー2005
以下のワインには20点満点中16.5点以上を付け、中には17点を付けたものもある。けしえ安い価格とは言えないが、今飲みごろでまさに10年の瓶内熟成の恩恵を受けたと言えるものだ。
Bernadotte, Haut-Médoc (£153.36 12本保税価格, Lay & Wheeler)
Cos Labory, St-Estèphe (£30 Jake’s Food & Wine)
Lynch Moussas, Pauillac (£34.79 Amathus)
Meyney, St-Estèphe (£34.17 Millésima UK)
Montviel, Pomerol (£36 平均価格だが現在UKの取扱業者はいない)
Ormes de Pez, St-Estèphe (£32.99 Sandhams, Lincs)
Phelan Ségur, St-Estèphe (£35 The Wine Society)
Ségla, Margaux (£300 12本保税価格, Farr Vintners)
全てのSauternes
(原文)