ARTICLEワイン記事和訳 本記事は著者であるジャンシス・ロビンソンMWから承諾を得て、
Jancisrobinson.com 掲載の無料記事を翻訳したものです。

389.jpg実用的なアドバイスと、辛口あるいはほぼ辛口のドイツの白ワインのお勧め。この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

私が最も多く受ける質問の一つが開栓後のワインをどれほど長く保存できるかというものだ。これは私自身が消費先を見つけてあげなくてはならない多くのボトルの数と無関係ではない。私は現在自宅で毎日平均6本から10本ほどのワインをテイスティングしている。その数はロンドンのワイン業界のカレンダーを埋め尽くすはずの時期に壊滅的なロックダウンが行われたことで劇的に増えた。

私がここ18か月間にテイスティングしたワインは、そのほとんどがフルボトルのもので、プロ向けテイスティングで他のテイスター20人ほどとシェアしたものではない。そのため私の子供や隣人たちは残ったワインの恩恵を大いに受けているわけだが、当然彼らが知りたがるのはその残り物の質が落ちる前、いつごろまでに飲み切ってしまわねばならないかということだ。

少なくともそれらをシェアすることができるだけまだ良いのかもしれない。私はかつてアメリカの有名な批評家、ロバート・パーカーの自宅を訪問した時のことを思い出した。メリーランド州の深い森に囲まれた自宅で、彼はこう教えてくれた。開栓後のアルコール飲料は州の法律で、たとえ隣家であっても運ぶことを禁じられているのだと。そのため残ったワインは廃棄せざるを得ず、「シャトー・パーカー」の前にある丘はそのワインの恩恵を十分に受けていた。

さて、開栓後のワインが果実味やフレッシュさを失うまで、どのぐらいの期間おいておけるのかという質問に対する答えだが、その保管方法、ボトル内の空間、そしてワインが何かによって異なる。

最適な方法はワインを(たとえ赤ワインであっても)可能な限り冷蔵庫で低温に保つことだ。実際赤ワインの方が白ワインよりもフレッシュさを失いやすい。おそらくこれは白ワインの方が保存料である亜硫酸含有量が高いことも原因の一つだ。また、熟成に関わる反応の速度は低温の方が遅い。赤ワインは冷蔵庫から出せばあっというまに温度が上がる。いずれにしても、赤ワインはいわゆる室温よりも低い温度、最初はおよそ16-17℃ほどで提供した方が果実味とフレッシュさをしっかりと感じることができる。温度はすぐに上がってくれるから心配ない。

ワインの熟成が進むにしたがって敵となるのは過剰な酸素だ(亜硫酸はそれから保護するための抗酸化剤である)。そのため瓶内に空気が多ければ多いほど(残ったワインが少なければ少ないほど)、ワインは早く酸化し、退屈で凡庸な味わいとなり、褐変してしまう。そのため、人によっては残ったワインの瓶にビー玉などを入れて空気を追い出すこともある。もちろん、それをグラスに注ぐ際には注意が必要だ。

では、どんなワインが長く持つのだろうか?私は同僚や、幅広くワインを飲んでいる知人に聞いて回ったが、全員が樽を使っていない白ワインで、若々しい果実味を保つ最大限の努力をし、多くの場合は酸が高いものが開栓後に最も長くもつと答えた。私の経験上、リースリングがある意味最も不死身な品種だ。リースリングのpHは非常に低い。この数値が低ければ低いほど、活性な酸が多く含まれるという証だ。pHの低いワインはフレッシュであることで知られ、開栓しなければその若々しさを数十年間維持することが可能だ。開栓したとしても、十分に低温で保存すれば1か月とは言わないまでも、数週間はもつ。

私は何週間も家を空けて帰宅し、冷蔵庫にボトル半分ほど残しておいたドイツワインが開栓当時と全く変わらない味わいだったことを経験している。そんなこともあって、さらにドイツワインの現行2020ヴィンテージが素晴らしいということも踏まえ、今週のおすすめとしてドイツの、主にリースリングを取り上げることに決めた。特にドイツの辛口白ワインは現在ブドウが完璧に熟すようになり、最も心の躍るワインの一つだ。この点は気候変動の影響の中では珍しく、恩恵であると言える。

ラベルにトロッケンの表示があれば、そのワインは辛口であることの証だ。ハルプトロッケン、あるいはファインヘルプは中辛口を意味する。ただし、ドイツワインは酸が高い傾向にあるため、ある程度の量の残糖を相殺することも多く、それはアルコール度数が低く使い勝手のいいカビネットでも同様だ。リースリングは一般的にアルコール度数が高くならずとも、十分な風味をもたらす品種である長所も加わる。

一般的にドイツワインは品質に比べて価格は低くなりがちだが、今回はできるだけそのお得感が高いものに焦点を当てるようにした。ただ、残念なことにイギリスに拠点を置くワイン愛好家たちは上質なワインの多くを6本単位でしか入手できない。そういう意味で、美しく、有機認証を受けたモーゼルのシビレ・クンツを1本単位でオンライン販売しているアンチャーテッド・ワインズ(Uncharted Wines)には賛辞を贈りたい。ザ・ワイン・バーン(The Wine Barn)も使い勝手のいいドイツワイン専門のオンラインショップだし、メーダ・ヴェールにあるザ・ワイナリーはロンドンっ子が選りすぐりの現代的なドイツワインを1本単位で見つけることのできる店だ。

アメリカならニューヨークのクラッシュ・ワイン&スピリッツ(Crush Wine & Spirits)やチャンバーズ・ストリート(Chambers Street)、サンフランシスコのディー・ヴァイン・ワインズ(Dee Vine Wines)やK&Lなどが最高のドイツワインの品ぞろえを誇る。私はナーエにあるマーティン・テッシュ(Martin Tesch)の造る、単一畑ごとに色分けされた辛口リースリングのファンなのだが、ドイツ国外でそのワインを見つけるのは非常に困難だ。

ドイツのワイン生産者たちは近年コルクよりもスクリューキャップを使うことが増えてきている。これはまさに実用的だし(背の高いフルート型のボトルにコルクが刺さっているととにかく場所を取る)、酸素を効果的に遮断するのにも有効だ。

樽の効いた白ワイン、例えば白のブルゴーニュやほとんどのシャルドネは、ドイツのリースリングほど長くはもたない。数週間というより数日程度だ。シャンパーニュやその他のスパークリングワインは、スパークリングワイン用の効果的な栓を使うなら、かなり長持ちする。現時点で最高だと思っているスパークリングワイン用の栓はロンドンのザ・ファイン・バブルで1つ4ポンドで売られていたものだ。これは本当にその価値があるもので、私自身が各種出版物で書いているよりもはるかに長い間、残り物のスパークリングワインの泡を維持してくれる。

開栓後に果実味と魅力を最も早く失ってしまうのは一般的に赤ワインで、特にデリケートな品種、ピノ・ノワールで造られたものはその代表と言える。そのため赤のブルゴーニュは2,3日以上保管しておくべきワインとは言えない。若く、引き締まっているワインほど、長持ちする傾向にある。おそらくこれは手元にある、熟成したピノ・ノワールや赤のブルゴーニュをできるだけ早く飲むという言い訳になるかもしれない。

近年は長いことバキュヴァンが出回っていて、私自身は正直それほど効果的だとは思っていなかったのだが、最近は開栓後のボトル栓としてリポール(Repour)というものがある。

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

Repour リポール 1パック(4個入り)
価格:3645円(税込、送料別) (2021/10/2時点)

このプラスチック製の栓は文字通り開栓したボトルから酸素を吸収するように作られている。レビューの中にはワインを6週間フレッシュに保てたというものもある。開発者のトム・ルッツ(Tom Lutz)が試供品としていくつかを送ってきてくれたのだが、申し訳ないことにまだそれを適切に試すことができていない。正確に試験をするためには比較対象が必要であり、同じワインが2本なければ実験ができないためだ。この栓は使い捨てだが、10個でたったの17.99ドルだ(ただしイギリスへの送料でさらに24.7ドルが加算されてしまう)。

ああ、ワインに詳しい読者からの「コラヴァンは?」という声が聞こえるようだ。これはワイン保存の優れたツールであり、ワイン愛好家たちは細い針を通じ、まあまあ高価な不活性ガスであるアルゴンガスをつって飲みたい分だけのワインをボトルから注ぐことができる。

 

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

CORAVIN コラヴァン モデル3
価格:34980円(税込、送料別) (2021/10/2時点)

コラヴァンは世界中であまりに人気が高いため、当然競合製品も多く出てきており、ボトル内の空気を吸いだすバキュヴァンや小型の容器に入った不活性ガスで開栓後の瓶内の空気を追い出すようなものよりもはるかに洗練されている。消費者向け雑誌、Which?が最近行った試用ではその競合品として6つの製品を紹介している。2013年の発売以来、スクリューキャップ用や最近ではスパークリングワイン対応のものまで、さまざまなバージョンが発売されている。

私の経験上、コラヴァンはバーやレストランで上質なワインをグラスで提供する場合に素晴らしい仕事をする。また、ワイン生産者が消費者やメディア向けに提供する前に品質を確認することも可能にしたことで、ブショネに備えて予備のワインを用意する必要がなくなった。

ただ、私自身がテイスティングを行う場合にはコラヴァンはそれほど便利とは言えない。私は通常、セラーにあるボトルを丸ごとシェアするのが好きだからだ。それに抜栓をせずプロとしてわずかなワインをボトルから抜き出したとすると、我が家は大量のボトルに占拠されてしまうことになるし、人にあげることができなくなる。私の近隣の人は決して喜ばないだろう。

偉大なドイツの辛口白ワイン
ibは保税価格で、イギリスならそこに税金がかかる。

GGはグローセス・ゲヴェクスのことで、精鋭からなるVDP生産者組合員による最高品質のブドウ畑を示す用語だ。

Battenfeld-Spanier, Mölsheimer Riesling trocken 2020 Rheinhessen 12%
£90 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Fritz Haag, Juffer Riesling GG 2020 Mosel 12.5%
£96 per case of 6 ib Howard Ripley

Heymann-Löwenstein, Kirchberg Riesling GG 2020 Mosel 12.5%
(or Stoltzenberg for £126 or, even better, Röttgen for £150 for 6)
£120 per case of ib in Howard Ripley

Knewitz, Gau-Algesheimer Goldberg Riesling trocken 2020 Rheinhessen 12.5%
£114 per case of 6 ib Howard Ripley

Kühling-Gillot, Oppenheimer Riesling trocken 2020 Rheinhessen 12%
£78 per case of 6 ib Howard Ripley

Sybille Kuntz Riesling trocken 2019 Mosel 12%
£18.78 Uncharted Wines

Peter Lauer, Ayler Kupp Riesling Fass 18 GG 2020 Saar 12.5%
£126 per case of 6 ib Howard Ripley

May, Retzstadter Langenberg Alte Reben Silvaner trocken 2020 Franken 12.5%
£72 per case of 6 ib Howard Ripley

J J Prüm, Wehlener Sonnenuhr Riesling Kabinett 2020 Mosel 8%
£125 per case of 6 ib Justerini & Brooks, £126 per case of 6 ib Howard Ripley

Rebholz, Vom Muschelkalk Riesling trocken 2020 Pfalz 12.5%
£110 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Willi Schaefer, Graacher Domprobst Riesling Kabinett 2020 Mosel 7.5%
£90 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Schloss Lieser, Graacher Himmelreich Riesling Kabinett 2020 Mosel 8%
£65 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Emrich Schönleber, Lenz Riesling trocken 2020 Nahe 11.5%
£75 per case of 6 ib Justerini & Brooks

Josef Spreitzer, Oestricher Doosberg Alte Reben Riesling trocken 2020 Rheingau 12.5%
£85 per case of 6 ib, Justerini & Brooks

Tesch, Laubenheimer Karthäuser Riesling trocken 2019 Nahe 12.5%
$24.95 Bounty Hunter, Napa

国際市場での取扱業者はWine-Searcher.comを参照のこと。 Image © VDP by Peter Bender.

膨大な数のドイツワイン2020ヴィンテージについてはこちらを。

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